零夢さんよりゼロアイ小説2



第二百十九話「掘る男」

ここは、エネルゲン水晶採掘場。 マサイダーが働いている場所である。 「よ〜し、今日はこの辺で終わりだ!みんな、帰るぞ〜〜〜!!」 マサイダーが部下達に号令をかけると、全員が「お〜〜!!」と掛け声を出して帰ろうとした。 だが、奥にいた数人が慌てて走ってきた。 「た、助けてくれ〜〜〜〜〜〜!!!」 「どうした!?工事道具も持たずに逃げてくるなんて!!」 「イレギュラーです!それに見たこともないメカニロイドが暴走してるんです!!」 「イレギュラーだと!?よし、ハンターに連絡してお前らは逃げろ!          俺は敵をくい止める!武器を持ってる奴は俺について来い!!」 マサイダーが奥に進んでみると、大型・小型の無数の古びたメカニロイドが多数襲ってきた。 「な・・なんだ!?ものすごい旧式の奴らじゃねえか!!見たこともない、なんて言われる訳だぜ!!」 「攻撃しましょう!!」 マサイダーのトルネードファングや、部下達が持っていたライフルやバスター、          熱線銃で攻撃すると軽々とメカニロイドたちは爆発して行った。 「なんだ、大したことねーじゃねーか。」 「ま、超旧式のオンボロロボットじゃ仕方ねーやな。」 だが、さらに奥から、もう一体大型のメカニロイドが飛び出してきた! 「今度の奴はちょっと違うみたいだぜ・・          見ろ!!エネルゲン水晶でエネルギーを貯めてやがる!!」 「ギ・・ギゴオオオ・・!!!」 そのメカニロイドは、巨大な腕を振り回しながら目からビームを乱射する。 そのビームが手に当たると、反射して別の方向に飛んでいくのである。 「うわああっ!!」 「ぐは・・・っ!!」 「お、お前ら!!畜生・・!!!」 部下達が倒され、怒ったマサイダーは赤いフィールドを出し無敵状態になり、敵に突進した。 「ギゴオオオ!!!」 「どうだぁ!!!」 「ギアガッ!!」 メカニロイドは腕に電気エネルギーを蓄え、電流攻撃をマサイダーに直接食らわせた。 だが、マサイダーは平気な顔をしている。 「残念だったな・・電気相手なら俺の超得意分野だぜ!!おらぁ!!!」「ギガァアアアッ!!」 右腕のドリルで敵の腕を破壊し、さらに離れた位置からドリルを高速回転させる。 「喰らえ・・・スピンファイヤーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!」 高速回転してドリルに高熱を発させ、それを業火に変えて放つ新たな大技である。 「ギギャアアアアアアア・・・・・・!!!!!」 メカニロイドは完全に消滅した。 「ふう。」 「マサイダー!大丈夫か!?」 そこに、アルマージとゼレスがやってきた。 「お、やっとハンターが来たか。それに社長さんまでよ。」 「よっ、お疲れ。」 マサイダーたちは、ゼレスの会社に雇われているのである。 「マサイダー達だけで充分だったようだな。             まあいい、ライフセーバー!この者たちを運んでくれ!」 アルマージに言われ、ライフセーバーたちが傷ついた             マサイダーの部下を運んでいこうとしたのだが、その中の一人が探知機を見せながら言った。 「どうやらまだ奥に敵が一人いるようです。お気をつけください。」 「なにっ!?まだ一人いるのか?」 「はい、それもレプリロイドで、それまでのものより強力なようです。             しかも地中を掘り進み続けています。」 「よし、行こうぜ、アルマージ!」 「ああ、拙者に任せておけ。」 そう言ってマサイダー、アルマージ、ゼレスは奥へと向かった。 「う〜ん、かなり堅い岩盤を短時間で掘り続けてるみたいだな。             でも早くしないとマグマまで達するかもしれないな。危険だから早く行くぞ!!」 ゼレスが声を掛けると、アルマージはシールド状態、             マサイダーも足のタイヤを使って全速力で走っていった。 ゼレスはマサイダーに掴まっている。 「ぬうううううん!!!」 途中で地中から現れたメカニロイドは、アルマージの突進で粉々に吹き飛んだ。 「探知機が効かないほど古いメカニロイドか・・」 そうして進んでいくと、とうとう堅い岩盤を右腕だけで掘り進む男がいた。 「おい、待て!!それ以上行くとマグマが飛び出てくるぞ!!」 ゼレスの呼びかけに男は全く動じない。 「おい!よせって言ってんだろ!!」 バスターを撃った。 「ぐっ!!!・・・・邪魔するな!!」 「こいつ、マグマを噴出させるつもりか!?」 「そうはさせんぞ!とりゃあーーーーーーーーッ!!」 アルマージがシールド状態で飛び込んだ。 だが、男の右腕一本で吹き飛ばされてしまう。 「うおおおおっ!!」 「大丈夫か!?」 マサイダーが駆け寄ると、男の右腕が当たった場所に鋭い傷がついていた。 「これは・・・?」 ゼレスが男の右腕を見てみると、鋭い多数の刃が一つのアーマーを作っている。 自由に分解・合体が出来るようだ。 ついでに、左肩にも皮製のアーマーのようなものがついている。 「おい!てめえ!一体何のためにこんなことしやがるんだ!名乗りやがれ!!」 マサイダーが怒って聞くと、男もなぜか怒った顔で答えた。 「俺の名はブロ!俺はただ地面を掘りたいだけだ!!邪魔をするな!!!」 「ほ・・・掘りたいだけ!?」 「なんだそりゃ!?」 顔を見合わせるゼレス&マサイダー。 「何がおかしい!!」 ブロはいたって大真面目な顔をしている。 「でもよ、これ以上穴を掘ったらマグマが上がってきちまうんだよ、             取り敢えずここを掘るのはもうやめてくれよ!」 ゼレスは、ブロに悪気が無いと思い穏便に済まそうとした。 だが、ブロはその腕の凶刃をゼレスに向けてきた! 「掘らせやがれぇえええっ!!!!!」 「させるか!!スピンファイヤーーーー!!!」 マサイダーがゼレスの前に立ちはだかり、スピンファイヤーでブロを後ろに吹き飛ばした。 「どおおおおりゃああ!!!!」 さらにアルマージも復活し、シールドタックルとヘッドビームで攻撃。 最後は倒れたところにのしかかった。 「どうだ・・・ぐべっ!?」 ・・・・次の瞬間、アルマージの体を突き破ってブロの右腕が飛び出した。 「・・・最後の一枚(アーマーのこと)は堀り甲斐があったぜ・・・・」 「・・・・てんめぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」 マサイダーが怒り狂い、飛び込んだ!!! 「うるぁあああああ・・・・・・・・!!!!!」 互いの「掘る」ための超威力の右腕がぶつかり合った。 ・・・・・次の瞬間、マサイダーの右腕の半分はなくなっていた。 「が・・・・あぐぅ・・・・・そんな馬鹿な!!!」 「さぁ、続き続き・・・」 ブロはマサイダーを気にも留めず、再び岩盤を掘ろうとしている。             その時、ゼレスが呼び止める。 「おい!待ちな!掘るのは・・こいつを喰らってからだぜ!!!」 ブロが振り向いた瞬間、砂が目に入った。 そしてそのすぐ後、ゼレスはアッパーを食らわせるかのように             超強力なチャージバスター、エナジネイト・ギガブラスターーーを喰らわせた!!! 「がぼっ!!!!」 天井に大きな穴が開き、ブロは地上まで押し返されてしまった。 「ふう、何とかうまく行ったか・・」 そして、3人が地上に戻ったとき、会社は大騒ぎだった。 ブロが倒れている場所に集まっているのである。 「こいつ、まだ生きてるのか!?」 「とにかくもう一度ハンターに連絡して・・」 「あ、社長だ!!」 ゼレスが戻ってきたのを見て、安心する社員達。 そして、ゼレスの妻リオも走ってきた(初登場)。 「あなた!・・よかった、無事だったのね。」 「ああ、でもあっちの二人が重傷なんだ。救急車呼んでくれ。」 「ええ、わかったわ。・・誰か電話を持っている人!119番をお願いしますわ!!」 ・・・・・・その瞬間、ゼレスの側頭部にブロのドロップキックが入った。 「きゃああああっ!!あなたぁ!!!!!」 「じゃ・・・邪魔するんじゃねえええ!!!」 ブロが右手の凶刃を倒れているゼレスに振り下ろし た・・・・。 その時、ブロが、車に轢かれた。 轢いたのはリオだった。 彼女は元F1レーサーの世界チャンピオンだったのだ。 車から降りて、倒れているゼレスに駆け寄った。 「あなた!大丈夫!?」 「あ、うん・・・ごめん、大事な車を・・」 「イイのよ、あなたを助けるためなら・・」 その時、社員の一人が叫んだ。 「社長!後ろーーーーー!!」 「ごごがアアアア!!!!!」 ブロがその右腕で二人を串刺しにせんとばかりに襲い掛かった!! 「きゃああああ!!!!!!」 「くそっ!!!!」 ゼレスバスターを撃つが、その右腕には弾かれる。 しかも、先ほどのドロップキックのダメージのせいで足が動かず、             リオを連れて避けることもできない。 「掘らせろぉおオオオオオオオ!!!!」 その時、雲が一瞬光った。 その雲から光線が降り注ぎ、ブロの体を刺し貫いたのである。 「・・・・・うごっ・・・・!?」 「・・・・えっ!?」 ブロはそのまま死んだが、その瞬間、ブロの死体から             煙のような湯気のような光るものが天に吸い込まれるように昇っていった。 「なんだ・・・?」 ゼレスが空を見上げると、今度は雲の間から人のようなものが舞い降りてきた。 白い服、白い翼、そして頭の上の輪・・・ 「天使だ・・・・・・。」

第二百二十話「天使の宝珠」

  「一体ありゃ・・・なんだ!?」 ゼレスたちが驚いて空を見上げていると、天使はゆっくりと舞い降りてきて・・・突然、墜落した。 「わわっ!!誰か・・誰か受け止めろ!!」 ゼレスに言われ、社員の何人かが天使を受け止めた。 「なんだこいつは・・まず病院か?」 「いや、人間かレプリロイドかもわかんねーぞ・・・」 すると、天使が目を開けた。 「・・・申し訳ありません。ですが心配は要りません。時間が経てば体力は回復します。 それより、この星にいる・・強い正義の方とお会いしたいのですが・・」 「強い・・正義?それなら・・・」 ゼレスはブロの死体と天使をハンターベースに運ばせた。 天使はベースにつくころにはほぼ全快していた。 そして、Xはマーティと共に天使に話を聞く。 「まず・・あなたは何者なんですか?」 「私はドラクト。あなた達で言う『天使』と言う言葉に相当します。」 ・・天使。 ヴァジュや黒にその存在を聞いてはいた。 だが、生まれてはじめて見る『天使』となぜか彼のいう事を疑うことが出来ない自分に、 Xとマーティは驚いて顔を見合わせた。 「・・・あなたは何をしにここに来たんですか?」 気を取り直して、質問を続ける。 すると、ドラクトは怪訝そうな顔をして、懐から水晶玉を取り出した。 「・・・これは天使の宝珠。我々天使のエネルギー源です。 この宝珠から発せられる光が我々のエネルギーなのです。」 だが、机に置かれた宝珠からは、あまり光は出ない。 「・・・なによ、ずいぶん光が弱いじゃない。」 マーティが文句を言うと、ドラクトは話を続けた。 「実は、このエネルギーに目をつけ、脱走時に・・」 「脱走した・・?」 「ひょっとして、あの世から!?」 Xとマーティの脳内に、黒やヴァジュ達との戦い、「復活事件」のことが思い出された。 「そう、脱走です。そして、彼らは自分達の命を作り、 能力を増すべく天使の宝珠のエネルギーの大半が・・」 宝珠を懐にしまった。 「盗まれてしまったのです。」 ドラクトの説明は続く。 「本当の命の無い者が現世にいることは許されません。             ましてや、彼らの体内に奪われたエネルギーを取り戻すためには彼らの肉体を破壊しなければなりません。」 「つまり・・殺すってことですか!?」 「・・正確に言えば、魂を返還する、と言うことです。 あなた方で手伝ってはいただけないでしょうか?」 「でもさ、あんた一人で充分なんじゃない?一発で倒しちゃったんでしょ?」 マーティが口をとんがらせて言うと、ドラクトは再び天使の宝珠を取り出した。 「先ほども説明したようにこの宝珠は我々天使のエネルギー源。 それが奪われてしまい、私の力も激減しています。 実際、ブロを倒したときに私は一時的に瀕死状態となってしまいましたからね。」 「そっか・・・じゃ、X!やるしかないんじゃない!?」 「・・・あ、うん・・・。」 「殺すこととは違う」とわかってはいても、Xは簡単に割り切ることが出来なかった。 そこに、アクセルが入ってきた。 「ヘヘッ!そーいうことなら僕に任せてよ!」 「アクセル!取調室に勝手に入るな!!」 「いいじゃんいいじゃん、怒らない怒らない。 安心して天使さん、僕らイレギュラーハンターにかかればイチコロだよ!」 「手伝っていただけますか!!」 「ま、待てよ!一応シグナスに聞かないと・・」 すると、シグナスも現れた。 「相手は地獄からやってきたイレギュラーだ。私達が倒さん訳に行くまい。」 Xは一応納得し、椅子に座った。 マーティはノリノリで武器を振り回す。 「さ〜て!このあたいの超武装で地獄の奴らをぶっ飛ばしてやるわっ!!!」 「え・・・?」 ドラクトが、何かに気がついた。 「なによ?私じゃ無理だって言うの?」 「いえ、そうではなく・・地獄から脱走したわけではないのです。」 地獄ではない・・? X達はそれぞれ顔を見合わせる。 「え?それじゃあ・・ひょっとして・・・」 「はい。彼らは天国からの脱走者です。」 「天国から脱走?」 ゼロ、ヴァジュ、ホーも話に加わり、説明を受けた。 「なんでそんなことを?せっかく天国に行けたって言うのに。 ブラックゼロさんじゃあるまいし・・」 するとドラクトはヴァジュの顔を見て気がついたように言った。 「あ、もしやあなたは・・以前地獄から脱走したことがありますね? ブラックゼロという者も何度も地獄から脱走し、果ては天国から脱走したのでしたね。」 「よく知っておられますねえ。」 ヴァジュはクスクス笑いながら言った。 ベルカナはヴァジュをかばうように腕を組み、ドラクトを睨んだ。 だが、ドラクトは笑っている。 「ご安心ください。あなた達二人は脱走時に命をよみがえらせています。 彼らとは違う。あの世に連れ戻すことはしませんよ。 ・・・不本意ですがね。掟ですから。」 「すいませんねぇ。」 そこに、ホーが質問。 「えっと・・・でもどうして天国に行けるような奴らが脱走なんか?」 その質問に対し、ドラクトはより真面目な顔をして答えた。 「・・・彼らは現世に対する執着が強すぎたのです。未練が・・強すぎたのです!!」 脱走した者達は、天国に行った後数年は平和に暮らしていた。 だが、ある時、生前に成し得なかった事への未練が心に芽生えた。 それが膨張し続け、ついに爆発。 自分の欲にまみれたまま、1ヶ月前に天使の宝珠からエネルギーを抜き取り脱走してしまったのだ。 「なるほど・・ブロとか言うやつが『地中を掘りたがっていた』とゼレス君が言っていたけど・・」 「はい、彼は元々採掘場で働いていて、掘ることに生きがいを感じていました。 そこにとても大きな仕事が舞い込んで、それはそれは楽しみにしていたそうです。 ですが・・仕事の前日に交通事故で死んでしまったのです。」 「なるほど、その未練が爆発して掘ることしか考えなくなったわけだ。」とゼロ。 「はい。彼らは自分の目的のためには他人のことなど考えないでしょう。 あなた達の平和のためにも、彼らを倒すことは必要なのです。」 そしてドラクトは、一枚の紙を取り出した。 脱走者の名簿だと言う。 「これが現在わかっている脱走者です。あの世には現世より遥かに人数が多いため、 検索が大変で・・まだ人数も特定できていませんし詳しいデータどころか 名前と顔のどちらかしかわからないものもいます。それに何より困るのが 天使の宝珠を使って姿を変えている可能性もあると言うことです。」 「とりあえずこいつらを倒すしかねえのか・・」 「いま存在がわかっているのはブロを除いてこの8人、か。」 ホーが紙をコピー機に入れ、10枚にして全員に配った。 「よし、今日からこの8人を倒すことが至上命令だ!気をつけろよ!!」 シグナスに言われ、ゼロ、X、ホー、ヴァジュ、アクセルが立ち上がった。 「よし!新しい戦いの始まりだ!!!」

第二百二十一話「酔う男」

  ハンターベースが動き出したその晩。 とある酒場で、カーネルが、なんと女性と酒を飲んでいる。 どうやら恋人のようだ。 「カーネル・・私達が付き合い始めてから何年位だっけ?」 「・・そうだな、3年といったところか・・」 「・・そろそろいいんじゃないかしら?」 「そうだな・・フフ。」 笑いながらカーネルは鞄から、小箱を取り出した。 「それは・・・」 恋人が見ると、カーネルの手の中に小さな輝きがあった。 中から出てきたのは、結婚指輪だったのだ。 「・・・結婚してくれ、ジェン。」 「まあ・・・・!!」 この上ない喜びの顔で指輪を受け取り、電灯にすかして見る。 そこには、すばらしいきらめきがあった。 「素敵・・・」 ジェンは喜び、カーネルも幸福そうな表情で笑っていた。 そこに、一人の客が入る。 「・・・・ここで酒が呑めるのかな?」 「いらっしゃいませ。」 その客は無神経にもジェンの横に座った。 「え・・・?なによ、こんな時に・・・!」 マスターも少し驚いた顔だったが、すぐに気を取り直して言った。 「お客様、他にも椅子はございます。他のお席を広々とお使いになられてはいかがでしょうか?」 「ん・・あ、そうか・・わかりました。」 すると男は素直に端の席に座った。 カーネルとジェンはマスターに感謝しながら、自分達の用意したワインのボトルを開けた。 すると、今度はその男がボトルを一本指差した。 「んじゃ、そこのボトルのをください。」 「ホワイトマッカイ・・でよろしゅうございますか?」 「あ・・いや、うん、それをください。」 カーネルとジェンは互いの目を見つめあいながら乾杯をし、グラスに口をつけた。 「うわあ!!!美味しいですね!!!」 突然大声を出す男。 カーネルたちは驚いてむせてしまった。 「ぐぅ!げほっ、げほっ・・・!!!」 「こ、こんな場所で普通出す?あんな声・・」 「マナーを知らんやつめ・・・」 他の客が口々に文句を言う。 すると、ジェンがツカツカと楽しそうに酒を飲む男に近づき、言い放った。 「あなた!ここがどういう場所だかわかっているの!? わからないなら出て行きなさい!みんなの迷惑よ!!」 ・・すると、男はジェンを睨みつけて立ち上がった。 「なんだとぉ・・俺に酒を飲むなというのか・・?」 「そうよ!あなたのような人にお酒を楽しむ資格など無いわ!!」 それを聞いて男は、急に怒り出した。 「この・・許さねえっ!!!」 男の体を鎧が包み、掌の中心にクリスタルが輝く。 「消えろっ!!!」 クリスタルから、さらに光が。 バスターのエネルギーだ! 「危ないッ!!!!」 ・・・カーネルがとっさに男を蹴り飛ばし、店の外へ投げ飛ばした。 「うおおおっ!!!」 「ジェンに手を出そうというのなら、この私を倒してからにするんだな!!」 カーネルがサーベルを構え、アーマーを装着した。 「気をつけて!!」 ジェンが言う直前にカーネルは走り出していた。 店の外へ出て、立ち上がろうとする男にのしかかった。 それでも男はすぐ立ち上がり、カーネルはバランスを崩して倒れてしまう。 「酒を呑む資格が無いだと・・・」 男は、カーネルの顔を踏みつけた! 「少年の好奇心くらい叶えてくれても良いだろう!?」 ・・・彼の名前は、ザイネス。享年19歳。 正確には、19歳と364日と23時間。 彼の父親は、大酒飲みだった。 酔っ払って暴力を振るうことも無く、毎晩酒を楽しんでいた。 彼の母親は元々酒嫌いだったが、父親に勧められて少しずつ飲むうちに酒好きになっていた。 そして5歳のある日、ザイネスは酒に興味を持った。 「・・・酔うってどういうことなんだろう?お父さんもお母さんも楽しそう・・ いいなあ、僕も飲んでみたいなあ、お酒・・。」 だが、少年は真面目であった。 法律から友達同士のルールまで、どんな決まりも絶対に守っていた。 「お酒は20になってから」という決まりも当然、破るはずも無く15年後を楽しみにしていた。 そんな16歳の修学旅行の夜。 「わっ!!お前何やってるんだよ!!」 同室の友達が、ビールを持ち込んで飲んでいたのだ。 「ほ、法律違反だよ!?やめなよ!!」 「へへ、堅いこと言うなって。お前も飲めよ。気持ちいいぜ!」 友達は笑って、ザイネスの言う法律のことなど聞く耳を持たなかった。 だが、ザイネスも友達の薦めを固辞し、最後まで飲まなかった。 しかし本当は、好奇心を満たしたくてしょうがなかったのである。 ・・・その数日後。 「わああっ!!!!」 バシャっとザイネスの頭の上に水が降りかかった。 いや、水ではない。ビールだった。 「おらおら、飲め!飲めってんだよ!」 「酔っ払っちまえこん畜生!!」 修学旅行で酒をのんでいた友達が、担任の先生にばれてしまったのだ。 それをザイネスが言いつけたせいだと思い込んでいる。 「おら、てめえも飲め!飲んだらやめてやるよ!!」 「イ・・・いやだーーーーっ!!!!!」 「なんだとこの野郎・・!!!」 ザイネスはその後卒業まで苛められ続けることになる そして、それから1年と数ヵ月。 「やった・・もうすぐ20歳の誕生日だ!!お酒を飲める!!!」 ザイネスは飛び跳ねて喜んでいた。 どんな味がするんだろう? どんな香りがするんだろう? どんな色なんだろう? そして・・酔うってどんなことなんだろう!? どんなに楽しいんだろう!? そして、ザイネスは自分の誕生日のために、 酒屋から良さそうなワインを一本買って机の下に隠しておいた。 「楽しみだなあ・・・」 そして、ついに誕生日の前夜。 夕食後ザイネスはワインボトルとグラスを机の上に用意して、ずっと眺め続けていた。 「あと・・1時間10分!!早く来ないかな!!僕の誕生日!!!」 1分たった・・ 2分経った・・ 3分経った・・ 「あと1時間7分だ・・!!」 4分、5分、6分、7分、8分、9分・・・ 「早く、早く・・・・!!」 その頃、近くの工場でイレギュラーが発生した。 作業用の大型レプリロイドは、そこら中を暴走して破壊しまわっていた。 そして・・・・ 「あと1時間だ!!!!」 時計を見て喜び続けるザイネス。 あと1時間。あと1時間・・。 その1時間で、彼の時間は止まった。 イレギュラーは彼の家に向かって倒れ、彼と両親、そして家を下敷きにしてしまったのだ。 両親は何とか助かった。 だが、ザイネスは死んでしまった。 「あと1時間、あと1時間だったのに・・・!!」 そして今、カーネルの顔を何度も踏みつけるザイネス。 「だから俺はあのエネルギーで1時間後の自分に・・・ 20歳の自分に変えてもらってここまで来たのに!!俺に飲む資格が無いなんて・・・」 「く・・ううう・・・・・」 「酷すぎるよ!!!」 思い切り飛び上がり、全体重をかけてカーネルの顔を踏みつけた。 「ぐあ・・・っ!!!」 「少年の好奇心くらい叶えてくれても良いだろう!?」 「ぐ・・・おおおおおっ!!!!」 サーベルを振るってザイネスの胸を切り裂こうとした。 だが、右手で受け止められてしまった。 クリスタルから発せられるエネルギーでとめられてしまったのだ。 「何を言っているのかは知らん。だが!これ以上は許さん!!」 サーベルからビームを出し、攻撃。 「ううっ!!!」後ろの壁に吹き飛ぶザイネス。 「とおあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」 両手でサーベルを構え、全力で飛び込んだ! 「たああっ!!!!!!」 カーネルの一撃がザイネスを捕らえ、胸から血が吹き出した。 「う・・うわああ!!!」 「どうだ!!これでもう懲りたろう!?」 「う・・るさい・・・・」 「何!?」 「うるさいッ!!!僕は・・・酔ってみたいんだよおおっ!!!!!!!!!」 ザイネスの掌から、今度こそバスターが放たれた。 「う・・ぐおおおおおお・・・・・!!!!!」 サーベルを構えてどうにか止めるが、だんだん後ろへ下がっていってしまう。 「ク・・こんな・・馬鹿な・・この強さ・・たああっ!!!!」 苦しみながらも、うまくサーベルの上で球体状になったバスターエネルギーを 上空へ捨てることに成功した。 「これで貴様の技は破った!とどめだーーーーーッ!!!」 サーベルを地に突き立て、巨大なエネルギー壁を作り出す。 「グランドブレイク!!!!」 すると、ザイネスは掌からエネルギーの壁を作った。 「・・・たあああっ!!!!」 ・・・グランドブレイクが消えた。 「な・・っ!?」 「イッけーーーーーーッ!!!!!!!」 「(行け・・?なにがだ!?こいつは攻撃などしてはいないはず・・・)」 疑惑するカーネルに、ジェンが叫んだ。 「カーネル!上!上を!!!!」 「なんだ・・・なにっ!?」 カーネルが見上げると、先ほど弾き飛ばしたエネルギー弾がカーネルの頭の上から落ちてきた。 「ぐあああああああああああああああああアアアアアアああああああああああああああああアアア          アああああああああああああああああアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 そのまま大爆発が起き、カーネルは重傷、周りの客やジェンも怪我をした。 そして、店や建物もいくつか壊れてしまっている。 「・・・・残念、最初の一杯は美味しかったのになぁ・・・・・」 ザイネスは鎧を解き、火の海となった店を後にした。

第二百二十二話「勝つ男」

  カーネルが倒された事件は、翌日にはハンターベース中に広まっていた。 さらに、ジェンの証言によってそれが天国の脱走犯だということも判明し、ゼロ達の間でさらに緊張が高まった。 また、脱走犯達のことは「ヘヴンズロイド」と呼ぶことに決まった。 「ザイネス・・か。」 アクセルが名簿を見ながら町を歩いていると、突然爆発音が聞こえた。 「・・・な・・何!?ヘヴンズロイド!?」 慌てて爆発のあったほうに行ってみると、ビルがひとつなくなっている。 「わ〜、惨事だな〜。」 ビルの周りの野次馬を追い払おうとしている警察達。 アクセルは野次馬の中に、ニヤニヤ笑いながら振り向いて歩いていく男を見た。 「ひょっとしてあいつ・・・!」 アクセルが気付いた瞬間、男は走り出した。 アクセルは持ちろんそれを追うが、男はとても速い。 アクセルが引き離されそうだと思った途端、男は袋小路で止まった。 「おいお前!ヘヴンズロイドだな!!」 銃を構えて猛るアクセル。 「・・・ヘヴンズロイド?なんだそりゃ・・・?」 「あ〜そっか。アンタ達は自分たちが何て呼ばれてるのか知らないんだ。          あんたら、天国脱走したんでしょ?こっちではヘヴンズロイドって呼ぶことにしたのさ!!」 「へ〜、なるほど。カッコいいねぇ・・・」 と、笑いながら男は自分の指を弾いた。 その瞬間、アクセルの目前で爆発が起きた!! 「わあっ!!!!!!!!!」 とっさに腕で防御したが、次に目を開いた時には男の姿は無かった。 「ハハハハハ!!!またなボーヤ!!!次会えたら楽しくやろうやー!」 「に・・逃げられた・・・僕が?」 名簿で見てみると、男は「イルア」と言う名前だとわかった。 アクセルはハンターベースとの通信を切り、血眼になってイルアを探した。 「逃げられたのなんて初めてだ・・・絶対に見つけて捕まえてやるッ!!!!!!」 しかし、なかなかイルアは見つからない。 人気の無い廃工場まで来てしまったアクセル。 「ちくしょぉ・・・イルアめ!絶対に捕まえてボコボコにしてやるからな!!!!」 「・・・そんなに自信があるのか?」 「・・・え?」 後ろからまた別の男が現れた。 「あんた誰・・・ひょっとして!!」 慌てて名簿を見ると、確かにその男はいた。 鉢巻を逆に巻いている(結び目が額にある)おかしな男だ。名前はガンマ。 「ヘヴンズロイドか・・よ〜し、まずはあんたからやってやるよ!!」 「その前に、一つ聞きたいことがある。」 「・・え?何?」 「・・・・・・・・お前は有名か?」 「へ?」 ガンマの質問に、唖然となるアクセル。 「有名って・・・それがなんになるわけ?」 「いいから答えろ!!!」 「はいはい・・・ま、結構有名だよ♪世界を救ったこともあるわけだし。             ハンターベースの若頭って言ったらこのアクセル様のことさ!」 銃を構え、ポーズを取りながら気取るアクセル。 するとガンマはニーっと笑い、嬉しそうに拳を固める。 「そうか、そいつはいい・・・」 「ていやっ!!!」アクセルの銃が火を吹いた。 「はっ!!!!」 だが、ガンマの背中から一瞬、光るものが飛び出してきて銃弾を弾いた。 「・・・えっ!?」 「だああっ!!!!」 驚いているアクセルにガンマの飛び蹴りが炸裂した。 「うおっらぁ!!!!」 さらに頭突き、フロントネックロック、DDT、腕拉ぎと格闘技的な技を連発する。 「い・・・いだだだだっ!!!!」 「どうだ!」 「ひょっとして・・ギブアップするとでも思ったの!?スポーツじゃないんだよ!!!」 アクセルはエンシェンタスに変身し、阿修羅ナックルを顔面に食らわせて技から脱出した。 「ぐ・・・うおおお・・・・!!!!」 「さらに!ローリングアサルト!!!」 今度はジャンゴーに変身し、強烈な一撃を食らわせる。 「・・・・てめえ!!!!」 ガンマの爪からビーム・クローが飛び出て、アクセルを引っかいた。 「イテッ!!!」 たじろぐアクセルに、さらに連打が。 「おらぁああああ!!!!!!!」 「くっ・・・こりゃ強敵だな・・・でも!!」 右ストレートをうまく受け止め、さらに手刀で右手を攻撃。 さらに腹にキックを食らわせ、後ろにあったドラム缶に吹き飛ばす。 するとガンマにドラム缶の山が崩れ、埋まってしまった。 「へへっ、どうだい?僕にだって格闘技の真似事くらいできるのさ!!」 ドラム缶の中からガンマが這い上がってきた時、アクセルの銃口が彼の右目に迫っていた。 「・・・・く・・・・・。」 「ヘヘッ。」 そのとき、再び背中から光るものが飛び出た。 「甘いよっ!!」 アクセルはそれを左手で掴みとった。 「・・・・痛ぁあああ!!!!!」 思わず後ろに下がり、左手を押さえるアクセル。 その左手からポタポタと血が流れ落ちる。 「痛いか?だろうな、何せビームを手袋越しとは言え素手で掴んだんだからな。」 「それは・・一体・・?」 ガンマの背中からビームの綱のようなものが生えてきて、ウネウネとうごめく。 「これはビームスネーク。・・食らいやがれッ!!!」 ビームスネークが一気に伸び、アクセルの胸に衝突した。 「グヘッ!!!」 「一気に行くぜ・・デスネイル!!」 今度はビームクローで攻撃する。 「うわあああああ・・・・・!!!!!」 後ろに倒れそうになったアクセルの足を掴み、ガンマは四の字固めをかけた。 「イ・・・ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 今までに味わったことの無い痛み。 腕拉ぎ十字固めは以前、黒に極められた事があったがこれは初めて。 元々この技はかけるまでの隙が多く、さけられやすい技で、使う者は殆どいないのだ。 「く・・でも・・かけてからも・・・隙だらけ・・」 銃をガンマに向け、撃った! しかしその瞬間、ビームスネークがアクセルの顔面に叩きつけられた。 「ギャッ・・・・・・・・!!!!」 銃弾もしっかり避けているガンマは技を解き、             マウントパンチでアクセルが気絶するまで殴り続けた。 「俺は絶対に勝つ・・誰にも負けるわけにはいかねえ・・             全ての存在が認める世界最強になってやる!!!!!!!!!!!」 ガンマの目標は「勝ち続けること」。 アクセル敗北の知らせはすぐハンターベースに入り、波紋を呼んだ。 同時に、ガンマの存在と脅威についても問題となった。 「くそ・・・次々と仲間を!!」 ゼロも怒り心頭。 だが、敵は何処にいるのかもわからない。 一体今何をしているのだろうか・・・?

第二百二十三話「氷の男」

  アクセルが倒された後、凶悪事件が相次いだ。 ビル街がまるで楽器のようにリズムをつけて爆発したり、数々の格闘技世界チャンピオン達が倒されたり。 後者の事件の犯人は勿論ガンマ。 チャンピオンの試合直前に乱入し、テレビカメラの前で チャンピオンを倒してのけるというやり方なので正体が簡単にわかったのだ。 よって、程なくガンマは「最強の道場破り」の名を冠せられた。 だが、事件はこれだけではない。 巨大な塔が徐々に、徐々に凍っていくと言う事件が起きた。 名簿を見ながら、シグナスが言った。 「これは恐らく、このフローズンと言う男が関与していると思われる。」 フローズン。 愛想の無い仏頂面で、目は落ち着いている。 すると今度はドラクトが。 「この男のデータは少しならあります。冷凍波を使い、 氷を武器に戦う、身長340cm体重290キロの大男です。」 「それは大きな!」 ヴァジュが思わず零した。 次にゼロが聞く。 「で、誰が行く?俺が行こうか?」 「いや、俺が行く!!」 Xが急に立ち上がった。 「今すぐに行って来る!!あいつらをこれ以上のさばらせるわけには行かない!!!」 そしてそのままドアに走っていく。 「ちょ・・危ないわよ、一人じゃ!!」 マーティが止めようとしたが、ゼロに抑えられた。 「ど、どうして止めるのよ!?」 「やる気出してんだ。あいつの好きにさせてやりな。・・・ Xは俺たちと違って答えを出すのが難しい道を歩いてるからな。 俺たちより遥かに経験した方が良い。」 「Xの・・・答え・・か。」 そのときアイリスが、ドアが開く音を聞いた。 「あれ?ちゃんと閉まってなかったのかな・・?」 「・・待てッ!!!ドアから離れろ!!!! ゼロが止めようとした時、勢いよくドアが開いた!!! 「こん中で一番強え奴はどいつだ!?」 「ど〜も〜、遊びに来ました〜♪」 「あ・・あれは・・・ガンマ!!!」 「アイリス!そいつらから離れろ!!!」 ゼロがアイリスを抱きかかえて、一度離れた位置に遠ざけてから、再びガンマともう一人の男の前に立った。 「よっ!久しぶり!!」 「何!?」 ズガアン!!!!!!! ゼロの顔面に男の張り手が命中し、その瞬間爆発した。 「・・・この野郎!!!」 ゼロのキックが男の腹に命中し、男は天井に突き刺さった。 「へえ・・強えな。この中で一番強いのもお前・・みたいだな?」 「・・・・・。」ガンマを睨むゼロ。 「も、もう一人の男は・・顔が名簿に載っていない!名前も断片的にしかわからない ・・『ホ・・イ・・ト』・・・・??」 ドラクトは名簿を見るが、顔もわからず、 名前もデータファイルに支障がありよくわからない。 「てめえ!名前はなんだ!!」 ホーネックが聞くと、男は天井から降りて着地し、ケラケラと笑いながら言った。 「俺の名前!?どうでもいいや、遊ぼうぜ!!」 「よくねえよ!!」ホーネックが怒ると、男はすこしたじろいで、また笑った。 「んじゃ・・さっきその天使様が言った『ホイト』と呼んでくれよ。 本名は教えてあ〜げない♪」 「ざけやがって・・・!!」 ホーネックが掌をホイトに向けると、ヴァジュが頭の上に手をのせた。 「まあまあホーネック君。一度深呼吸して冷静になってください。 ・・・でないと殺されますよ。」 「!!」ホーネックは急に驚いた。 冷や汗すらかいている自分に気がつかなかったのだ。 ホイトがかなりの強敵だと感じていた自分に気がつかなかったのだ。 ホーネックは一気に冷静になった。 「おいおい、冷静になるなよ。楽しんでいきたいんだからさ〜。」 すると、ガンマが叫んだ。 「いいからおっぱじめようぜ!!! さっきから何、待たせてやがんだよ!!!!・・・来やがれ!!」 ゼロも構えた。 「俺の名前はゼロだ。・・・行くぜッ!!!!」 ゼロ対ガンマとホーネック対ホイトは熾烈を極めた。 ゼロの猛攻にもガンマは耐え切り、格闘技の大技を繰り返す。 ホーネックも自慢のスピードと爆撃攻撃を使うものの、 ホイトは楽しみながらひらりひらりとかわし続ける。 だが、ゼロ達が不利と言うわけでもない。 ゼロはガンマの攻撃を充分に耐えているし、 ホーネックもホイトの攻撃をすばやくかわしているのだ。 また、ホイトは拳から丸いエネルギー弾を放つ攻撃や 肩・膝・肘に隠されていたビーム砲を使っている。 ・・・・その頃、Xは氷の塔にX7に登場したライドアーマー 「ゴウデン」を使ってたどり着いていた。 「・・・ん?ええっ!?」 凍った外壁に少しゴウデンが触れ、そこから凍り始めてきているのだ!! 「そ・・そんな馬鹿な!!!」 やむなくXはバスターで凍った右腕部分を破壊し、 凍った部分に触れないようにしながら塔を進んだ。 その後、冷凍弾や氷弾を撃ってくるメカニロイドが攻撃してきて、 ゴウデンはボロボロになってしまった。 「まずいな・・このままじゃゴウデンが壊れてしまう・・」 それでもそのまま次の部屋に進むと、多くの氷付けのメカニロイドが体当たりをしてきた! 「この氷・・・触れただけで凍るアレだ!と、いう事は ・・一気に倒さなきゃならないって事か!!」 そうしてXは、アルティメットアーマを開放した。 「一気に決めさせてもらう・・・ノヴァ・ストラーーーーーイク!!!!!!!!!」 Xの超熱的な攻撃で、部屋の中のメカニロイドは消し飛び、塔の半分ほどの氷が溶けた。 元の姿に戻り、着地するX。 「ふう・・・危ないところだった。でもここのボスは何処だろう?・・あっ!!」 よく見ると、Xの前にある壁は巨大な扉だった。 「・・・ここにいる・・のか?」 「・・お前は誰だ!?」 部屋に飾ってある巨大な氷が反射して、太陽の光がとてもまぶしい。 Xは逆光の中でフローズンと思わしき男を見つけたのだが、 よく見るとフローズンとは思えないほど小さい。 「・・誰だ!?」 すると、その相手がXに向かって飛んできた!! 「うわっ!!!」 不意を突かれ、胸にぶつかってしまった。 「く・・・っ!!」 すぐに立ち上がってよく見ると、その相手はなんとガンガルンだった。 「おまえは・・レッドアラートの!!」 ガンガルンは重傷を負っていて、ピクピクと動いている状態。 さらに、叫び声と共にもう一人吹き飛ばされてきた。 「・・・こんどはイノブスキー!!」 すると、ズシン、ズシンと足音が響き、大男が姿を現した。 「・・・・また客人か・・・」 「お前はヘヴンズロイドの一人、フローズンだな・・・。」 Xが聞くと、フローズンらしき大男はすぐに答えた。 「ああ、俺はお前らの言うヘヴンズロイドの一人、フローズン・バッファリオだ。」 「ば・・・バッファ・・・リ・・オ・・・・バッファリオ!!!???」 Xは心底驚いた。 X4のキバトドスとの戦いで勇敢に散っていったあの友の名前が敵の名前として登場している。 バッファリオは持っていたスイッチを押した。 すると、巨大な氷が床の下にしまわれて、反射せず普通に見えるようになった。 「・・・・X!」 バッファリオも今、気がついたようだった。 「やっぱり・・あのバッファリオと同一人物なのか!?」 バッファリオは少し考えてから答える。 「・・・そうだ。俺はお前の知っているフローズン・バッファリオと同一人物。」 「でも・・一体どうして人間に近い姿なんだ!?」 その時Xはホーネックが人間に近い姿になったときの事を思い出した。 「あ・・・・!!」 「恐らくお前の想像と一致しているはずだ。 俺は天国で人間のような姿に改造されたんだ。 あるレプリロイド科学者がその技術の実験をさせて欲しいと言ってきたのでな。 安心しろ、当然だがその男は悪人ではない。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・。 静寂が流れた。 Xはまたも悩んでいる。 まさか再びバッファリオと敵同士になるなど想像もしていなかったからだ。 すると、バッファリオの側頭部から氷が生えてきた。 そう、まるで氷の・・・・ 「角・・・?」

第二百二十四話「ガンマの生前」

ゼロ対ガンマ、ホーネック対ホイトの激闘はハンターベースに多大な損傷をもたらした。 壁・床が壊れるのは勿論、武装パーツやデータまで吹き飛ぶ始末。 あまりの戦いにヴァジュもアイリスたちを守るのが精一杯といったところだ。 他のハンターも救護活動や復旧作業の準備で忙しい。 「くそっ・・・爆炎陣!!!」 「うおお・・・・っ!!くらえっ!!!」 ゼロの攻撃で宙に浮いたガンマは、そのまま回転してドロップキックでゼロの後頭部を強打した。 「この・・・っ!!」 それでもゼロはすぐ立ち直り、龍炎刃を食らわせる。 ホーネックとホイトの戦いでは、ホーネックがパラスティックボムを使用。 誘導弾なので、ホイトは逃げ回る。 「や、やべえなこりゃ〜。おおっとっ!!」 肘のビーム砲で撃墜したが、ホーネックのエルボードロップをモロに食らってしまう。 「うらああああっ!!!!」 さらにホーネックの連撃。 いよいよホイトを捕らえた。 「やったあ!このままやっちゃえーーーー!!!」 喜び勇むゼーラ。 だが、ホイトもこのまま終わりはしない。 体表面からエネルギーを噴出し、ホーネックを吹き飛ばした。 「うわああっ!!!」 「まだまだぁ!!」 拳から放つエネルギー弾「ハンジャックブラスト」を喰らわせた。 「く・・・ああっ!!!」 「ホーネック!」思わずゼロも叫ぶ。 「隙ありだっ!!!」その瞬間に、ガンマの強烈な一撃を喰らってしまった。 「さらに・・たああっ!!!」 必殺のビームスネークの乱打。 ゼロはゼットセイバーで攻撃の一部は弾いているものの、ダメージは大きい。 「あなた・・・!」 アイリスは真剣な瞳でゼロを見つめた。 「どららららーーーーーーーーっ!!!!」 ガンマの強烈な乱打が続いた。 だが、ゼロの目は死んでいない。 アースクラッシュのエネルギーを両拳に込め、ビームスネークを全て弾き飛ばしてしまった。 「なにっ!?」 「だアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!」 ゼロの強烈なジャンプキックがガンマの顔面を捉える。 そして、ゼロは着地と同時に技を放つ。 「・・・・ファイナルナックル!!!!!!!!」 いつものように、超強力なエネルギーの柱が立ち上る。 「ぐオガアああああああああああああああああアアアアアアあああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああ あ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!」 ガンマは何百メートルも上空に吹き飛んでいった。 「・・・・・・・。」 ゼロは空を見上げ、腕に凝縮されたエネルギーを解いた。 その頃ホーネックとホイトの戦いも佳境を迎えている。 「だあらららっ!!!」 ホーネックの連続蹴りが炸裂。 「く・・・全砲門発射!!!」 ホイトの膝・肘・肩のビーム砲全てがホーネックに向き、放たれた。 「うおあっ!!」強力な爆発に、後ろに下がってしまうホーネック。 そこで出来た隙をつかれ、ホイトはホーネックの後ろに回ってハンジャックブラストを再び叩き込んだ。 「ぐはっ・・・・!!!」 「ハハ、ずいぶん楽しめた。礼は言っとくぜ!!」 ハンジャックブラストが今度はホーネックの顔面に命中した。 「がっ・・・・」 「ホーネック!!!!!!」 先ほどとうって変わってゼーラは慌てだす。 「はーーーっはっは!!!けっこう面白かったぜ!!!!」 大笑いするホイト。 だが、その時一筋のビームが側頭部に命中した。 「・・・・え?」 「この・・・オオバカ!!!」 ゼーラだ。 ゼーラが偶然落ちていた従を拾い、ホイトに向けて撃ったのだ。 「え・・・やったのはそこのお姉さんか・・な?」 ホイトは状況が把握できなかった。 まさか戦闘能力の無いゼーラが撃ってくるなど思っても見なかったのだ。 しかも、さらにホイトにとって意外な現象が起きた。 ホーネックが立ち上がり、後ろから蹴り飛ばしてきたのだ。 ホイトの後頭部から一気に血が噴出した。 「う・・・ぎゃああっ!!!!」 「喰らいやがれぇ!!!!」 ホーネックのビームソードがホイトの腹部を貫いた。 「ぐ・・・が・・・骨・・まで・・」 ドラクトが歓喜の声を上げる。 「やった!勝てる!!!」 「これで・・・終わりだっ!!!」 ホーネックが刺さったままの剣を上に向けて振るおうとしたその時、上のほうから何かが降ってきた。 勿論、それに気付いた者は誰もいない。 だが、その落ちてきた物体は確実にホーネックの脳天を殴り飛ばしたのだ。 「相手・・間違えたな・・・」 「ガンマ!!!」 落ちてきたのは、ファイナルナックルを決められて消滅したかと思われていたガンマだった。 ホーネックは気絶し、頭から血を吹き出したまま倒れ伏していた。 ゼーラはホーネックに駆け寄り、泣いた。 「ホーネック!!ウソ!起きてよぉ!!戦って!」 だが、そんなゼーラにガンマは冷たく言い放った。 「邪魔だ。どけ。」「!!」 ゼーラの涙が途切れた。 それほど冷たい一言だったのだ。 それを見て、ゼロの怒りが最高潮に達しようとしていた・・・・が、その時。 「ガンマちゃん!もうやめて!!!!」 一人の女がガンマに向かって叫んできたのだ。 それを見たガンマは、苦しみ始める。 「う・・ぐ・・があああああああっ!!!・・・・なんで・・なんでお前がここにいるんだ!!??来るな!!!!ぶっ殺すぞ!!」 拳を固め、血を吐きながら女を睨みつけた。 「う・・・っ」 女はそれきり何も言えなくなってしまう。 ただ、悲しげにうつむくだけ。 そこにホイトが割って入る。 「これじゃ〜もうやってられないな。よし、今日は帰ろう!」 ガンマは不服そうに怒鳴った。 「やめろ!!俺はまだ戦える!!ゼロをぶっ潰して叩き潰してぶっ壊してガタガタに・・・ぐ、おええっ!!!」 「ホラ見ろ、精神状態も不安定なんだし、今日はもうやめとけ。」 「う・・くそ・・・!!!」 そのままホイトの持っていたテレポート装置を使って二人は消えていってしまった。 「逃げられたか・・クソッ!!」 ゼロは怒りのまま、基地の残骸を蹴り飛ばした。 その風圧で近くの瓦礫が一気に吹き飛ぶ。 「あなた、そんなに八つ当たりしないで。ホーネック君とゼーラちゃん、それにみんながちゃんと生きていただけでもよかったと思わなくちゃ。」 「ああ・・・でもよ、今までの戦いでこんなことは初めてだ・・・・・」 その時、先ほどの女がゼロ達に話しかけてきた。 「あの・・さっき皆さんと戦ったガンマという人のことなんですが・・・」 彼女の名前はリャン。なんとガンマの幼馴染だ。 ガンマは生れたときから一度も負けたことが無い。 そんなガンマの夢は、世界一有名な最強の男になることで、 ボクシング、レスリング、柔道、空手など数多くのジャンルを地元の大会で優勝し続けた。 リャンはそんなガンマを応援し続け、ある日ガンマに魅かれる自分を見つけてしまった。 だが、それを許さなかったのが公爵だったリャンの父。 ガンマの夢を断ち切ってやろうと、自分の気に入った対戦相手をガンマに次々とぶつけては失敗し続けた。 だが、そんなある日ガンマの父は恐ろしい計画を実行した。 それは液体時限爆弾。 ガンマの飲み物に混入させ、試合中に体を爆破しようというのだ。 しかもその試合は、ガンマが世界に羽ばたくための最終ステップだった・・。 そして試合が始まる。 ガンマはいつもの調子で敵の格闘家を圧倒的に攻撃し、たまに来る攻撃も全て無効化してしまう。 リャンは、ガンマが世界チャンピオンになった時に結婚を許すと聞いていたので、 この試合を見て歓喜し続けた。 だが、いつまでもいい調子ではいられなかった。 ガンマの肩が、爆発したのである。 「う・・な・・なんだぁ!?」 それに続き、膝が、背中が、指先が爆発してきたのである。 「へ・・へへ・・死ねやぁ!!」 対戦相手はこの計画のことを知らなかったが、このチャンスを逃さずにガンマの顔面を叩きのめした。 さらに連打、連打、連打・・・・・ 「(まける・・俺が・・負ける?・・・ふざけんな・・・こんな・・・爆発なんかに・・・ まけ・・まけ・・・負けてたまるかぁアアアアアア ア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!)」 ・・・・相手選手のアッパーが決まった。 その瞬間、胸も爆発した。 「・・・・・・・・」 上空に飛び、完全にガンマは意識を失ってしまった。 「ガンマちゃん・・・負けないでッ!!!!!!」 リャンが悲痛に叫んだ。 それでもガンマの意識は戻らなかった。 いや、正確に言うとガンマの意識はガンマ自身が呼び覚ましたのだ。 「負けるのだけはいやなんだよぉ!!!!!!!」 勝利への恐ろしいまでの執念がガンマの最後のかかと落としを決めさせた。 対戦相手はその一撃で完全にKOされ、ガンマの勝利となった。 だが、ガンマは世界の大会に参加することは出来なかった。 勝利の言葉が頭に輝いた瞬間、その17年の生涯が終わってしまったからである。 恐ろしいまでの執念に生き、その執念が膨張し続けた男・ガンマ。 彼を止められるのは一体・・・? 

第二百二十五話「氷の拳」

「うおおおおおおおっ!!!!」 Xのバスター弾がバッファリオの顔面に命中。 「どおあああっ!!!!」 バッファリオの氷の角から、光線が発射される。 「うぐ・・・・!!!!」 かなりの威力で、後ろに吹き飛ばされ壁に激突するX。 「どうしたX、お前はこの程度のものだったのか?そうではないだろう、来い!!」 バッファリオの鋭い叫びがXの耳に響き渡る。 Xはすぐに体勢を立て直し、バッファリオを睨みつけた。 「バッファリオ!何故お前がヘヴンズロイドなんかにいるんだ!!せっかく天国にいけたのに!!お前の未練とは一体何なんだ!!」 するとバッファリオは、黙ったまま上を向き、拳を固める。 Xは、その拳にエネルギーが集中するのを感じた。 「な・・なんだ・・・?」 バッファリオの拳に氷が張り始め、それと同時にバッファリオは語り始める。 「俺が蘇った理由・・・それはある方に見出された『希望』のため。」 「希望・・・?」 バッファリオの拳が、完全に凍る。 「俺の生きる意味は・・・」 さらに、拳から無数の「氷のトゲ」が生えてきた。 「今をあの方に捧げる。」 氷のトゲが生えそろい、恐るべきグローブとなった。 「それが俺の・・今の存在理由。未練だけがヘヴンズロイドを生む理由ではない!!!」 叫びながら、バッファリオはXに向かって殴りかかる。 Xはそれをジャンプでかわし、頭上からチャージショットを放つ。 「バッファリオ・・・それが誰なのかは知らないが今、俺はお前を倒さなくちゃならない!!」 辛く、悲しい決意がXの中で目覚めた。 しかし、その時。 その巨大な拳がXの体に直撃した。 「ぐふ・・・・・あ!!!!!!」 体に大きな穴が何箇所も開き、口からもダラダラと血が流れる。 「う・・・うあ・・・あああ・・・・・」 たったの一発でここまでの怪我を負ったことがない。 Xは一瞬、死さえ覚悟した。 「もう終わりか…?X、かつて世話になった礼だ。せめてこれ以上苦しませずに終わらせてやる。」 バッファリオが腕を十字に組む。 すると、そこから水色の光線が放たれる。 「う・・うぅ・・・・・」 Xはダメージによって動くことが出来ず、周囲に流れた血と共に氷付けとなってしまった。 (動け・・・ない!!) 「このまま苦しまず・・・一瞬で砕いてやる。」 バッファリオは腰を深く落とし、タックルの体制に入った。 このままXを氷ごと砕くつもりだ。 「ウオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」 「ッ!!」 ・・・・バッファリオが止まった。 正確には、「止められた」のだが。 「お前らは・・・!?」 バッファリオを止めたのは、フクロウル・スティングレン・ぺガシオンの3人だった。 「ヘヴンズロイドめ!カーネル殿の敵の場所を教えてもらおうか!!」 ぺガシオンが叫ぶ。 (やめろ・・・・) 「貴様、誇りを失ったか!」 フクロウルが猛る。 (逃げるんだ・・・) 「我らの手で、貴様を倒して見せる!!」 スティングレンが唸る。 (殺される・・・・・!!!) Xの心の叫びは、3人には届かなかった。 スティングレンの竜巻攻撃がバッファリオを引き寄せる。 「ネオ・グランドハンター!!」 エイ型ミサイルが脛から扇状に連射され、爆発する。 「う・・・・おお!!!」 「次は私だ!!烈空砲!!!」 今度はフクロウル。 巨大な竜巻のエネルギーを玉にして飛ばし、ぶつける。 「ぐああっ!!!」肩の鎧が削れ、倒れるバッファリオ。 「次は私だ!!サイクロンブラスト!!!!」 最後はぺガシオンの巨大竜巻型光波がバッファリオの胸に直撃した。 「ごおぁ・・・・・!!!!!!!」 (す・・・すごい!!3人とも以前より遥かに強くなっている・・・!!) バッファリオは、床にめり込んで動かなくなった。 「終わったか・・?意外とあっけないものだな。」 ぺガシオンが余裕の表情で着地すると、フクロウルが口を挟む。 「馬鹿者、そのような油断が敗北を招くのだ。戦いとは容赦なく行うべき!!例え何と言われようと、それが平和のためならば!!!」 フクロウルのダブルサイクロンがバッファリオの体に連続で命中する。 「そうだ!敵の体を完全に消滅させてこそ確実な勝利!!ザイネスと言う男は改めて探し出すのだ!!」 スティングレンも上空からグランドハンターを連射する。 「なんだ・・・何かおかしい。二人とも、どうしたんだ!?」 ぺガシオンは二人の異変に気がついた。 目に狂気を感じたのだ。 「私一人では止められないかもしれない・・よし、まずはXを!」 ぺガシオンは氷付けになったXを助け出そうと、急いで氷を削り始めた。 (早くしてくれ・・頼む!) それから数分ほどしてから、ようやく右腕が出始めたところで轟音が部屋に鳴り響いた。 「な・・なんだ!?」 ぺガシオンが後ろを振り向くと、バッファリオが氷の拳でフクロウルの体を貫いているのが見えた。 「ふ・・フクロウル殿!!!」 「・・・無理だ。」 「お・・・己ッ!!」 スティングレンがジェットで体当たりを図るが、氷の拳から氷の手裏剣のような物が飛んできて、右肩を深く刺し貫いた。 そう、これこそフロストシールドである。 「う・・・ぎゃああーーーーーーーーっ!!!!」 「不可能だ・・・」 バッファリオは倒れ伏したスティングレンを踏み潰し、フクロウルを振り放した。 血が一気に流れ、床にビチャッと降りかかった。 「お前らはどうやらレプリフォースの誇りとやらを守るために戦っていたようだな。」 バッファリオは二人を見下ろして言った。 「その思いが膨張しすぎたせいで結果はこうなった。恐らくはカーネルが倒されたことから来たのだろうがな。」 バッファリオの言うとおり、二人はカーネルが倒されたことによって元レプリフォースの名誉が落ち、 その誇りを取り戻すためにヘヴンズロイドを一人でも倒そうとしていたのだ。 その想いは膨張し、いつの間にか欲望へと変わっていた。 その結果がこれである。とはいえ、実力的に考えれば必然でもあった。 「さあ、後はお前だ。まともな奴が最後に残ったか。」 その瞬間、バッファリオの顔面にぺガシオンの分身体「疾風」が命中した。 「うおっ!?」 「サイクロンブラストーーーーーーー!!!!!」 さらに、胸にサイクロンブラストが命中。 「ぐ・・・さすがにやるな!!精神が集中している者の攻撃は・・強い!!」 バッファリオも攻撃を仕掛けるが、疾風の一撃によって視力が一時的に失われているため、全く当たらない。 「スーパーダイビング!!!」 ぺガシオンの連続体当たりがヒット。ヒット。ヒット・・・・!! 「うぐ・・・くぅっ!!!!」 フロストシールドを飛ばす。 床に刺さってトラップ状になるが、ぺガシオンには全く当たらない。 さらに、ウイングスパイラルで逆にバッファリオをフロストシールドの密集地帯まで吹き飛ばした。 (い・・・いける!?) Xもぺガシオンの勝利を確信した。 同時に、力が入って氷にヒビが入っていく。 「とどめだ・・・サイクロンブラスト!!!!」 「ハッ!!!!!!!!」 ・・・その瞬間、ぺガシオンは氷付けになって床に落ちた。 「残念だったな。あんな大きな声を出さなければこれが当たることもなかったのだが・・・」 ぺガシオンの技の掛け声によって、バッファリオはその位置を把握していた。 そして、バッファリオはXの方を向き、頭を下げた。 「・・すまん。お前にとって一番辛いことになってしまった。だが安心してくれ、こいつらをこれ以上傷つけはしない。そして・・・お前をここで完全に倒す。」 再びタックルの体制に入り、走り出す。 (やめろ!バッファリオ!!!) 「安らかに消えてくれ・・・!!!」 (やめるんだ・・・・) 「があああああああああああ!!!!!!!」 (やめろーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!) Xはその一瞬でハイパーモード「Xファイア」を発動した。 そしてXコレダーの力で氷を溶かしながら砕き、バッファリオの角を掴んだ。 「う・・・うぐううう・・・・・」 「と・・とめられた!?」 「うアーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 驚いて力が抜けたバッファリオを、Xはのけぞって思い切り投げ飛ばした。 そして・・・バッファリオが飛ぶ先には窓があった。 「う・・・・うわあああーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」 バッファリオの体は窓を破り、そのまま飛んで落ちていってしまった。 「はあ・・・はあ・・・・・」 だが、Xにそれを追う余裕はなかった。 血が流れすぎ、体は凍てつき、そのまま倒れてしまったのだった。 その後ライフセーバーが6人を助け出したが、バッファリオの姿は見当たらなかったという。

第二百二十六話「喰う男」

「Xさんが大怪我したって本当ですか!?」 バッファリオ戦から3日、話を聞きつけてシナモンがハンターベースに駆け込んできた。 X達6人はハンターベースの技術力をもってしても全治2ヶ月〜半年かかる重傷を負っていたが、シナモンのエンジェリックエイドですぐに治ったのだった。 「ありがとうシナモン、すっかり良くなったよ」 Xが笑って礼を言うと、マーティは不機嫌顔になる。 「フン、なにさ、ちょっと回復力があるからって!」 「マーティ、よせよ!小さな子に向かってそんな大人気ない……」 Xに怒られ、マーティは「あ〜〜〜!」とかんしゃくを起こしてベースを飛び出していってしまう。 そして、一歩外に踏み出した途端に急に寂しくなり、トボトボと歩き出す。 「ハア……なによ、あのバカ!」 それから暫く歩いていると、後ろからシナモンが話しかけてきた。 「マーティさん!」 「えっ!? シナ……モン?」 マーティは振り返って驚き、目を丸くした。 シナモンはマーティに慰めの言葉をかける。 「マーティさん、元気出してくださいね。私は全然平気ですから!」 マーティの中で、どうするべきか感情が駆け巡る。その結果、笑い出してしまった。 「あ……アハハハッ!ったく、こんな子どもに慰められるなんてあたいもまだまだだね、ありがと、シノモン♪」 「し、シナモンですよぅ!」 「そーだっけ?ま、気にしない気にしない!」 「もう!……クスっ」 「「アハハハハハハッ!」」 急におかしくなってきて笑い出す2人。そうしていると、後ろからマントを羽織った男が尋ねてきた。 「……食わせてくれ」 「えっ?なんですか?」 シナモンが聞くと、その男は不気味に口をあけて叫んだ。 「『食わせろ』、お前らを!!!!」 「何よこのスケベッ!!」 別のことを想像したのか、怒ったマーティが腹に蹴りを叩き込むと、マントが脱げて男の姿が現れる。 その姿に、2人は驚いた。 巨大な牙が、なんと全身から生えている。口に生えている牙も強力そうだ。手には爪の変わりといった感じの牙が生えている。 「喰いてぇんだよぉおおおお!!!」 男はマーティに向かって飛び掛り、口を思い切りあけて頭に噛み付こうとした。 「そうは行かないよっ!」 粒子カプセルに隠し持っていたバズーカ砲を取り出し、男の顔面を撃つ。 男は顔から煙を出しながら倒れて、その間にマーティはヘヴンズロイドの名簿を見てみた。 「やっぱり!こいつはギドロっていう元料理評論家だよ!」 彼の名は、ギドロ。20年前に死んだ料理評論家のレプリロイドである。 彼は地球上のありとあらゆる『味』をその口に入れ、人生を楽しんでいた。 だが、あくまでそれは死ぬまでの話。彼の死後も、新たな『味』は生れ続ける。 新しい料理、同じ料理でも新しい調理法、未知の食材。 彼は天国で「食べたい、食べたい」といつも言っていた。 そんな時、ヘヴンズロイドの脱走計画に誘われた。彼はすぐに参加を決意し、 捕まらぬようその力を高めるため天使の宝珠でパワーアップする。 その結果、体中に牙が生えた上、欲望が増幅したことにより全く食べたことのない『人間』『レプリロイド』を食べることを考えるようになってしまったのだった。 「食わせろ、食わせろ!」 歯をガチガチと鳴らせながら、ギドロはマーティに再び噛みかかった。 「うるさいよっ!」マーティの腕アーマーから二連砲が飛び出し、ギドロの胸にヒット。だが攻撃は止まらず、肘に生えている牙によって右腕を少しえぐられた。 「い……いだぁッ!」 「きゃあっ!マーティさん!」 「う、ウメエエ……!!」 この男の牙には味覚芽(みかくが。味を感じる組織)が着いているため、 どの牙に当たっても物質の味を知ることが出来るのだ。 「なんだなんだ?」「何かあったんですか!?」 周りにギャラリーが集まりだす。 マーティはそれらを怒鳴りつけ、逃げるように言う。 「馬鹿っっ!こんなところにいたら食い殺されるよ!?早くS級ハンターに連絡して逃げな!」 そして大型の刀を振るうが、ギドロの牙によって真っ二つに刀は切られてしまった。 「げ・ゲエエッ!」 「マーティさん!私も戦います!」 そう言って、シナモンもサブウェポンのミサイル攻撃を開始。だが、あまり効果はない様子。 「お前からぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」 さらに爆炎にまぎれ、ギドロはシナモンめがけて飛び掛ってきた。 「きゃああっ!」 その時、マーティのバズーカでギドロは横に吹っ飛んだ。 「そんな子供に噛み付こうなんて、大人気ないよっ!」 「ぎ・・・デメえええエエエエえっ!」 ギドロは火山が噴火するかのごとく怒り出した。 そして、口から本当に火を吹く。 「わっ!」 マーティはとっさにビームシールドでかわしたが、ギドロが飛び上がって頭上に現れた。 「危ないッ!」 「X……!」 「マーティーーーーーーーーーーーーーーーッ!」 そこに飛び込んできたのは、X。 ギドロの首を掴み、投げ飛ばしさらにバスターを連射。 「ていやーーーーーーーっ!!」 「ぐっ!がああっ!なんだぁ!?」 ギドロは驚いた表情のままXを見て、殺意のこもった目でバスターの切れ目から飛び掛る。 「ハイパーモード・Xファイア!」 Xはすぐさまハイパーモードとなり、エネルギーを一瞬だけチャージしてXコレダーを放つ。 「ぐふぁああああああっ!!!」 後ろにおいてあった車に叩きつけられるギドロ。だが、車にも無数の切り傷がついてしまった。 「マーティ、怪我はない?」 Xが心配してマーティに振り向くと、マーティは右腕の怪我を隠して気丈に振舞う。 「だいじょーぶだいじょーぶ!なにもやられてないよ!」 そこにシナモンがエンジェリックエイドをかけ、治療し始める。 「大丈夫ですか?血が酷く出てますよ?」 「だ、大丈夫だって!」 Xはギドロとにらみ合い、動くのを待つ。 だが、ハイパーモード時間が切れてしまうのでいつまでもそうしているわけにも行かない。静かにコレダーをチャージし、必殺の一撃を喰らわせようとしたのだ。 「ギググ……これはどうだ!?」 突然、ギドロの掌が口に変身した。 ギドロの3つの口での噛み付き攻撃がXを翻弄し、チャージコレダーを使う暇を与えない。 「ギゴッ!ゴギッ!ガゴゴッ!」 3つの口が不気味に音を鳴らし、場合によっては周囲の物体も噛み砕く。 「まずい!この威力ではアルティメットアーマの装甲でさえ破壊されるかもしれないぞ!」 Xはシェルミサイルでギドロの口を撃った。 だが、ギドロはミサイルも食ってしまい、Xの顔面に炎を発した。 「うわーーーーーっ!」 「今だっ!」 ギドロはXの左腕に右手の口を噛み付かせた。 「う……うわああああああああっ!」 「こ、こいつ!Xを離しな!」 マーティがバズーカを撃ったが、左手の口に弾を食われた挙句、その口から出た光線によって一撃で倒されてしまった。 「クッ……!」 「マーティさん!」 シナモンが駆け寄ると、マーティは気絶してしまっている。 そして……シナモンが切れた! 「……許さない!」 その瞬間、シナモンはハイパーモード・アイアンメイデンに変身していた……

第二百二十七話「E・フィールド」

「え〜〜〜〜〜〜い!」 シナモンの気合の入った一撃がギドロに直撃する。 「グギャッ!?」 「わっ!シナモン!?」 Xも驚いて攻撃の手が止まってしまい、チャージコレダーが撃てないままハイパーモードの制限時間がすぎてしまう。 「ガががっ!」 そこにすかさず、右手口からの火炎放射がXの体を一気に焼く。 「Xさん!」 「うわああああああっ!」 Xが倒れている間に、ギドロは歯をガチガチ鳴らせながらエネルギーを集中する。 「な、何!?」 シナモンがエネルギーを感知してギドロのほうを向くと、ギドロは口を大きく開けて叫んだ。 「フィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」 その時、地面が割れてその場の全員を飲み込む巨大なくぼみが出来、くぼみの四方には巨大なトゲが内側に向かって無数に生えている。 そう、まるで仰向けの口のような形をしているのだ。 「これが俺の最終奥義・E(イーティング)・フィールドだ!逃げ出そうとすると一気に閉じて喰われるぞ!」 Xはそれを聞き、すぐにギドロに向けて走り出す。 「だったらお前を倒すだけだ!」 「Xさん!危険です!」 シナモンが止めるのも聞かず、Xはバスターで無謀にも接近戦の間合いに入った。 ギドロは笑いながら手の口を振り下ろして噛み付こうとする。 「うるぁあっ!」 しかし、Xはその攻撃を軽くかわした。 「なぁああっ!?」 そこからのギドロの更なる攻撃もかわす、かわす、かわす。 Xの作戦は、接近してからギドロの攻撃をかわしながらバスターを撃ちまくり早期決着をすること。 Xのスピードに翻弄され、さしものギドロも慌て始める。 「ぎ、ぎぎぎぃ……」 「くらえーーーーーーっ!」 そして、ついにXバスターによるアッパーカットが炸裂。ギドロを上向きに吹き飛ばした。 「ぐげおぉ……!」 その時上向きに吹き飛ばされるギドロに反応し、E・フィールドが一気に閉じる。 自分で作った巨大牙によって、ギドロの体が噛み潰される。 「ギョファ〜〜!」 「きゃっ!」 シナモンは慌ててその目を覆う。ギドロの鮮血がパーーッと降ってきたのだ。 「残酷な技だな、自分にも容赦しないなんて……」 Xはギドロを見上げ、つぶやく。そして、とどめのバスターをチャージし始める。 「ぐっ!がっ!ごげ!」 悶え苦しむギドロ。腹が完全に噛み潰され、そこに生えた牙がいくつか下に落ちる。 そして、未だに大量の血が流れている。 しかし、その時ギドロを噛んでいた部分の牙が折れる。 ギドロの体についていた牙によるものだろう、ギドロは血を撒き散らしながら落ち、着地する。 それと同時にフィールドも再び開いた。 「いったいどうして!?」 Xが驚くと、ギドロは何も言わずただ叫びながら飛び掛ってくる。 その顔は白目を剥く。殆ど狂気しているようだ。 「ギャオーーーーーーーーーッ!」 「うわっ!」 ギドロの右手口火炎放射がXの右腕を焼き、さらに強烈なドロップキック(牙つき)が胸部アーマーを打ち抜く。 「くはっ!」 「Xさん!」 シナモンもミサイルを撃って援護しようとするが、ギドロの牙がミサイルを食べてしまった。 「ああっ!……え?」 その時、ハイパーモードの効力が消えてしまう。 それを見たギドロはXを押しのけ、シナモンに向けて走る。 「グガーーーーーーーーーッ!」 「い、いやぁあっ!」 シナモンは逃げようとするが、すぐ後ろに壁があることに気付く。 Xが止めようとギドロの背中に向けてバスターを放つと、ギドロはそれに気付いて左手口のビームを出しXを吹き飛ばす。 しかも、フィールドの牙に向かってXは飛ばされてしまったのである。 このままでは背中に牙が刺さった挙句、噛み潰されてしまう。 「Xさん!」 シナモンはXにエンジェリックエイドを使おうとするが、エネルギー不足によって使えない。 その上、ギドロがXに向けて左手口ビームを放つ。 「ギャがははーーーーーー!」 「やめてぇ!」 爆発が起きた。 ビームは確実にXを捉え、胸部アーマーを破壊した。 そして、E・フィールドの牙がXに刺さっている…… と思いきや、Xは後ろに現れた影に抱きかかえられフィールドの反応域ギリギリで止まっている。 「あ、あれは!?」 シナモンは上を見上げ、晴れていく砂煙を凝視する。そこにマーティが起き上がり、目を丸くして驚いた。 「あ、ああ……あいつは……ヴァ……」 ギドロも見上げながら、砂煙が晴れる瞬間を確認する。 「ヴァっ!?」 そしてXは、自分を抱きかかえる男に振り向き名を呼ぶ。 「ヴァジュリーラ!どうしてここに!?」 「どうしても何もないでしょう。戦いのエネルギーを感知して来ただけですよ」 ヴァジュリーラはいつもの調子で笑って答える。 そして薄目を開けてギドロを睨み、Xをおろしながらサーベルを構える。 「さあ、一気に終わらせましょうか? 2人でかかれば確実でしょう」 「あ、ああ……」 戸惑いながらも、Xはバスターをチャージしながらギドロを見る。すると、ギドロは足が崩れて体制が悪くなっている。 「どうしたんだ? まさか出血のせい?」 「そうでしょうねえ。アレだけの出血ですから。しかし油断は出来ませんよ?  血を使う技があるかもしれませんからね。」 一歩後退するヴァジュリーラに、黙ってうなずくX。 「ギギャーーーーーーーーーーーッ!」 その時、ギドロの右手が大地を掬うかのように削りとる。 その瞬間、強力な斬撃エネルギーが大地を切り裂きながら二人に向かって飛んでくる。 「まるでアースクラッシュだ!」 Xが驚くと、ヴァジュリーラは笑ってサーベルを斬撃エネルギーにぶつける。そのまま止めてしまおうと言うのだ。 「さあ!残りは任せますよ!」 「……そうか、わかった!」 ヴァジュリーラが止めている隙にXは飛び上がり、ギドロの顔面に向けてフルチャージバスターを撃つ。 「あたいも行くよッ!」 マーティもバズーカの最後の一発を放つ。 「げ、ぎおおおおおおお!??!?!??!?!」 そして、2人の強力な一撃がギドロに直撃。 「とどめだ!アルティメットアーマ!」 Xは現在最強の姿となり、胸のエネルギー砲「ギガクラッシュ」のエネルギーを集中する。 「ギャアオオおおおおおおおおおおおおおおっ!」 「X、飛ぶよ!」 マーティが叫ぶと同時に、ギドロはXに向かい文字通り飛び掛ってきた。 そして両手の口がXの肩に食い込むかと思いきや、両手のすべての牙が一気に折れる。 アーマーの強度はギドロの牙を遥かに凌駕しているのだ。 「がっ!?」 「うおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」 「あ、が、があああ!ああアアアアああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああ あ!」 ギガクラッシュが直撃し、ギドロは粉々に吹き飛んだ。 体から抜け落ちる天子の宝珠のエネルギーと「食べたい、食べたい」というかすかな言葉を残しながら。 同時にE・フィールドも消え、ヴァジュリーラ以外の三人は安心して腰を下ろした。 「お、終わりましたね……」 シナモンがほーっと息を吹く。 「ったく、あたいはもうヤダよ、ヘヴンズロイドはそっちに任せるからね!」 マーティは頭を掻きながらXとヴァジュリーラに向かって言い放つ。 「勿論そうさせていただきますよ。私は満足に戦えなかったわけですしね」 丁寧にお辞儀するヴァジュリーラ。マーティは呆れ顔でその場に寝転ぶ。 「ったく!バトル好きはヤダね〜、皮肉も通じないんだから!」 するとXは元の姿に戻って起き上がり、腕を押さえながらマーティに歩み寄る。 「マーティ、そんなところで寝るなよ」 「い〜じゃん、どこで寝ようが」 「いや、それだと……」 「「ひかれちゃいますよ〜?」」 ヴァジュリーラとシナモンが言うと同時に、マーティの真横に車がキッと止まる。マーティは車道に寝転んでいたのだ。 「ねえちゃん、そこに寝てられると困るよ!」 「え!? え、ええ、ここ車道!? ちょ、そういうことは早く言いなさいよぉ!」

第二百二十八話「ザイネス強襲」

ここはヘヴンズロイドのアジト。かつてドップラーが使っていた秘密の研究所を拠点としており、 あまり大きな部屋は無いがギドロを除く7人のヘヴンズロイドが集まっている。 「さ〜て、まずはそれぞれの現状報告と行こうか?」 ホイトが楽しそうに笑いながら他の6人に言う。すると、まずはガンマが歯をギラつかせて笑いだす。 「俺は連戦連勝だぜ♪この1週間で……10、20……36勝だ!」 今度はイルアが口を開く。 「そりゃ〜スゲえな、俺も楽しくやってるぜ、いろいろと!ケケケ〜〜〜〜!」 「フローズンさん、あんたは?」 ホイトがバッファリオに聞くと、バッファリオはしかめっ面をしたまま「フン」としか言わない。 「ハハ、上手く言ってないみたいね」 今度はガンマがある2人に聞く。 「そっちはどうだよ? トランプにジュリだっけ?」 トランプと呼ばれた男がゆっくりと答える。 「いや、僕は……僕は……」 「んだよ、はっきりしねぇ!」 ガンマが乱暴に言い放って缶ジュースを飲みだすと、曲線の目立つ丸いアーマーを着込んでいるジュリが睨みつける。 「調子に乗るな」 「んだと?」 ガンマも睨み返し、黙ったまま険悪な雰囲気が漂う。しかしそこにトランプが仲裁する。 「や、やめて。2人とも、喧嘩は……」 当然、2人のにらみ合いがこれで止まるはずもない。その後のザイネスの一言でそれは終わることに。 「ところで」 「なんだい、ザイネス君」 「会議の定員数は8人のはずなのにもう一人は……どこだい? たしかギドロとか言う名前じゃなかったっけ?」 「ギドロ? ああ、あの大食い野郎かい。そういやイねーな。」 イルアが部屋を見回す。ガンマは興味なさそうにあくびをする。 「どっかでなんか喰ってんじゃねーのか?」 すると、今度はバッファリオが口を開く。 「……奴ならば死んだと言う情報を得ている」 会議室内が一瞬沈黙した。 静寂を破って最初に口を開いたのはジュリ。 「バカな。ブロならばいざ知らず私達天使の宝珠の力を得た者が倒されたと言うのか?」 「へ〜、俺たちヘヴンズロイドを倒すなんてやるじゃねーか!」 イルアが楽しそうな顔をすると、ガンマが口を挟む。 「やったのはゼロとかホーネックとか言うやつじゃねーのか?」 するとバッファリオは重く口を開く。 「ロックマンXとヴァジュリーラFFという2人だ。 ギドロはE・フィールドを使っていたため決して不利な戦いではなかったはずだ。 ちなみにこのときマーティやシナモンと言う者も居たと言うがこの2人は戦力外。考えに入れないでも良い」 「なるほどな〜、つまり強敵は少なくとも4人ってことか。よし、全員俺がぶっ倒してやる!」 ガンマはいきり立って立ち上がり、そのまま会議室から出て行ってしまう。 残った6人は呆れ顔でドアを見ていた。 「まったく、せっかちなんだから」とホイト。 「……」ザイネスもガタッと席を立つ。 「おや、君もいくのかい?」 ホイトが聞くと、ザイネスは一度ホイトを見てからドアに向かって歩いていく。 「ああ、もう話すことは無いみたいだから。……僕もちょっと出てくるよ」 イルアがジュースを飲みながら言う。 「また酒かい? ま〜だ酔っ払えねえのかよ、ったく酒に強え奴だぜ!」 「うん、僕もこんなに酔いにくい体質だったとは思わなかったよ。乗り物には弱かったのにな……」 ザイネスは笑いながら部屋を出る。そして、資金室から自分用の金を引き出し、再び地上に出て行った。 「酔えない……」 とあるバーに、ザイネスは一人で飲み続けていた。 すでに店の大半の酒が無くなり、マスターも困り顔をする。 「なんで酔えないんだろう……お父さんもお母さんも瓶二本ものんだらすぐ真っ赤になって笑い出していたのに」 ザイネスの目から、ポタリと涙が一滴、落ちる。 「幸せな日々が送れると思っていたのに……っ!」 途端にザイネスの表情が一変し、目の前に積んである空瓶を激しく睨みつける。 しかしその激しい怒りの目もすぐに緩まり、再び悲しみに耐える目に戻っていった。 「残ってるやつ、全部お願い……」 「も、申し訳ありません。残っているボトルはすべて他のお客様のキープでして……」 「うるさいよ!いいじゃないか!金ならあるんだからさぁ!」 ザイネスの目から、多量の涙があふれ出る。 あまりの表情の変化のめまぐるしさに、マスターも思わず哀れむような目をする。 「お客様、なにかお辛い事でもあったのですか? 私でよければ相談に……」 しかし、ザイネスはマスターを怒鳴りつける。 「あんたじゃ無理だよ!僕は酔いたいだけなんだから!」 その時、ドアを開けてある男が一人、店に入ってくる。 「おいお〜い、穏やかが売りのこの店で随分騒々しい奴が来たもんだな〜?」

第二百二十九話「聖夜の死闘」

「メェ〜〜〜〜リ〜〜〜〜〜〜〜クゥ〜リ〜ス〜マ〜スぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ヒャーッハッハッハッハァあ!!!」 「どしたの? ヴァジュ様」 「いや、なんだか絶対に言わなきゃいけないような気がしまして……」 その日はクリスマス・イブ。 街中は明るい装飾に彩られ、人々は自分の大切な相手と過ごす時間を楽しみにしている。 そんな中、とある小さな酒場の外で激しく火花が散っている。それは、ザイネスとダイナモ。 「あんたは?」 「俺はダイナモ。なんでも屋さ。金さえ払えばどんなことでもしてやるぜ? 以後、お見知りおきを」 ザイネスは他人のキープしてある酒を勝手に持ち出しており、ぐびぐびとラッパ飲みをする。 「へえ、じゃあ僕を酔わせてくれるってのは?」 そう言われてダイナモは、ピクッと反応し薄笑みを浮かべ、構える。 「そいつは難しい……」 「何で構えるんだい?」 ザイネスは一歩後ずさり、アーマーを装備する。 「ハンターベースからのご依頼でね、あんたを倒させてもらう」 それを聞き、ザイネスは右掌のクリスタルのエネルギーをチャージし始める。 ダイナモもサーベルを回し、敵の攻撃に備えるように見せかけてから無数のサーベルをブーメランのように回し飛ばす。 「っ!!」 ザイネスは焦り顔でそれらをかわし、一瞬で近づいてバスターエネルギーをダイナモの顔面に叩き込んだ。 「うあぁっ!?」 サーベルを回転させていたにもかかわらず顔面に光線が命中していたことを驚く間も無く、ザイネスはさらに一撃を放つ。 「くは……!」 血を吐くダイナモ。地面に背中から落ち、ザイネスに踏みつけられる。 さらに起き上がるべくうつ伏せになったところを背中の上で何度も飛び上がられ、その度に吐血とダメージが重なる。 「う、ぐっ、がはああっ!!(普通のダメージじゃねえ!!)」 ダイナモは自分の足に向けてバスターを撃つ。 ダイナモのバスターは二つに分かれて垂直方向に飛ぶので、 この状態で撃てば下の地面と上にいるザイネスに向かって飛ぶ。 「なっ!?」 ザイネスのちょうど顔面にバスター弾が直撃した。 「っしゃ!」 ダイナモはその隙に、転がって脱出して立ち上がる。 そして、倒れたザイネスの足の裏にトゲが収納されていくのを見た。 「あんなもんで何度も踏んでやがったのかよ、冗談じゃねえゼ!」 ダイナモは地面を叩いてエネルギー波を発生させるアースゲイザーでザイネスを吹き飛ばす。 そして宙に舞ったザイネスを捕らえ、頭から落とすパワーボムを決めた。 「げあああああああああああああああああああああっ!!」 ザイネスの兜は真っ二つに割れ、頭からは血が吹き出す。ダイナモを睨みつけ、バスターエネルギーを撃ち出す。 「おぅらっ!」 ダイナモは回転サーベルでそれを無効化し、足に装備したミサイルポッドを射出。 ザイネスはそれをバスターエネルギーで作ったバリヤーで防御し、 バリヤーそのものをダイナモめがけて飛ばす。 「いっ!?」 バリヤーなので攻撃しても弾かれる。かと言ってジャンプや横ステップで跳び越せるような面積でもない。 何も出来ず、結局前面にバリヤーアタックを喰らったダイナモだった。 「チッ、かっこ悪いぜ……」 「そろそろ倒れて欲しいんだけどな!」 ザイネスはとても迷惑そうに叫ぶ。その手には、またも酒瓶が握られている。 「くっそ……この俺がこんな扱いされるなんて思わなかったぜ……」 すると、またもバリヤーアタックが飛んでくる。 「ま、またかよ!」 「死ねーーーーーーーーッ!」 ザイネスの目は、完全に好奇心から邪魔者への殺意へと変わっていた。 バリヤーがすばやく、確実に、ダイナモへ飛んでいく。 「アースゲイザー!」 しかし、ダイナモはアースゲイザーを撃ち、遠隔操作でザイネスの足元にのみ発生させた。 「わっ!?」 ザイネスは驚き、そのまま前方、つまりバリヤーに向かって吹き飛んで顔をぶつけた。 同時にバリヤーが消え、ダイナモの逆襲を受ける。 「カカト落としと顎蹴りの同時攻撃、シザーブレイクだぜッ!」 頭に痛烈な一撃を受けふらつくザイネスに、さらにミサイルポッドとバスターの追撃。 そして、最後にサーベルをブーメランにして投げる「スピンスライサー」を乱射する。 「ギャあああああああっ!!!!!!!!」 ザイネスは体中を斬られ、倒れた。 それぞれの、決して浅くない傷口から血が流れ、完全に白目を剥いている。酒瓶が割れ、血と混じり奇妙な色を作り上げている。 ダイナモはザイネスに近寄り、サーベルを構える。 「終わりだぜ、ザイネス。酔っ払いたかったらしいけどよ、あんまし良いもんじゃねえゼ?  特に二日酔いになった日にゃ」 ボンッ!っと、言い終わらぬうちに爆発音がした。 ザイネスはアーマーと地面のコンクリートを高速で擦り、 それによる摩擦で火をおこして酒のアルコールに点火して爆発させたのだ。 酒を浴びていたザイネスは勿論、すぐ近くにいたダイナモも爆炎にまかれ後ろに吹き飛んだ。 店の主人がどうしたのかと外に出てみると、ダイナモは倒れ気絶し、ザイネスの姿は何処にも無かった。 ダイナモとザイネスが戦う数分前(4時)、ゼロの家ではクリスマスパーティの準備をしていた。 「よしと、」 「じゃあ、鳥さんはお願いね?」 「は〜〜〜い!」 アイリスに言われ、リル&ライクは5000円札を握り締めて鶏肉を買いに行く。 そして商店街に来て、肉屋を探し始めた。 「え〜と、お肉屋さんってどこだっけ?」 ライクがとぼけた顔であたりを見回すと、リルはライクの手を引っ張って走り出す。 「何言ってるのよ、あっちでしょ!ほら!」 だが、リルの行った先にも肉屋は無い。 「ど、どうしよう? お肉屋さん無かったよって、ケーキ買って行っちゃおうか?」 リルがそういうと、今度はライクが怒る。 「駄目だよ、ケーキはパパが作ってるじゃない!」 「そんなこと言ったって、お肉屋さん無いよ!?」 「だからさ、もう少し探そうよぉ!」 二人で喧嘩しながらあたりを歩いていると、ボンッ!っという爆発音がした。 「な、何!?」「どうしたんだろう!?」 リル&ライクが爆発音のしたところに走っていってみると、酒場の前で炎が赤々と燃え、 一つの影が屋根を跳んでいくのが見えた。 「おいかけよう!」 「うん!」 二人はその影を全速力で追いかけた。 「はぁ、はぁ、早いよぉ!」 ライクが弱音を吐くと、リルが何かに気付く。 「あ、あれ!あの人落っこちたよ!」 影が落ちた。それまでのダメージで既に足元がふらついていたことから、 かなりの重傷だったと普通なら考えるだろうが、そこは子供。 二人は恐る恐る飛んでいた影に駆け寄った。 「う、ぐぅ……」 倒れている男は、勿論ザイネス。リルはその傷を見て、心配そうに言う。 「大丈夫かなあ、このお兄ちゃん」 ライクも目を覆いながら、絆創膏を取り出す。 「これをはっても……駄目だよね」 「だめだよ、救急車呼ばなくちゃ!」 リルは慌てて携帯電話を取り出すが、またもあることに気付く。 「ここ……どこ?」 さらに、携帯の充電は切れており、ザイネスを二人がかりでどうにか運びながら二人は2時間も迷い続けた。 人通りも無く、真っ暗になった道で泣きそうになっていた。 「どうしよう……もう歩けないよぅ」 リルはへたり込み、ザイネスを手放してしまう。 ライクもそれを見てザイネスをおろす。 「どうすればいいんだろう……」 「私達……もう帰れないのかな……」 リルの目に涙が浮かぶが早いか、一気に泣き出す。その長い泣き声に呼ばれるかのようにして、 リルが泣き止んだ頃にザイネスはゆっくりと目を開けた。 「なんだ……」 その時、ザイネスの目に最初に入ったのはリルでもライクでもなく、道に転がる酒瓶だった。 「飲みたい……」 瓶に手を伸ばすザイネス。しかし、それを見たリルはその手を止める。 「ダメッ!」 「!?」 ザイネスがリルを見上げると、ライクもザイネスを止める。 「ダメだよ!お兄ちゃん凄い怪我してるんだから、無理しちゃダメ!」 それがいけなかった。ザイネスの欲望は再び狂気へと姿を変え二人に襲い掛かったのだ。 「うわアアアアああああああああああああああああアアアアあああああああ あああああああああアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 ザイネスの深い怒りと無念さのこもった手がリルの首を締め上げる。 「きゃ……く」 「や、やめろお!」 ライクはバスターでザイネスを撃つが、効かない。 リルの口からゴボゴボと泡がでて、危険な状態になる。 「に、逃げ……」 「邪魔するなアアアッ!」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー! 「俺を目覚めさせてどうしようって言うんだ……」 妹の危機に、ライクの力が目覚める。 怒りの拳を握り、ザイネスを殴り飛ばした。 それと同時にリルを助け、道の隅に横たえた。 「おおおおおおおおおおおっ!」 さらにライクは両拳にエネルギーを溜め、それをザイネスに振り下ろした。 「がハッ!!!」 ザイネスはまたも血を吐き、一瞬にして顔面を地に叩きいれられる。 「ハアッ!」 さらに強烈な蹴り上げでザイネスはさらに後ろに吹き飛び、地面にこすれるようにしてから止まった。 「はあ、はあ、はあ……」 ライクは元の姿に戻り、疲れた体で立ち尽くしている。 それから少し経ってからリルも目を覚まし、ライクに駆け寄る。 「あれ、お兄ちゃんがやったの?」 「わ、わからない。全然……」 二人が不思議がっていると、そこにゼロが飛んできた。 「お前ら!なんでこんなところにいるんだ!」 「わっ!パパ!」 「なんで!?」 驚く二人を、ゼロは怒った顔で持ち上げる。 「探しまくったんだよ!!ったく、アイリスが死ぬほど心配してたぞ!」 二人は反省した顔で「ごめんなさい……」と謝った。 そしてゼロが飛んで帰ろうとジャンプしようとした時、ライクがそれを止める。 「あ、待って!」 「どうした?」 ライクが指差した先。それは最初暗くて良く見えなかったがザイネスが倒れている。 ゼロはヘアビュートでザイネスを捕らえ、ハンターベースに連れて行く。 「ヘヴンズロイド、ザイネスか」 ベッドに横たわるザイネスを、ライフセーバーが調べながら治療する。 「別段、普通のレプリロイドと変わったところは無いようだな」 「当然です、天使の宝珠の力で完全に生き返っているんですから」 ドラクトが説明し、シグナスはそれにうなずいてゼロに言う。 「お前は子供たちを連れて帰ってくれ。この後のことは子供に見せるべきではない」 「……そうだな。行くぞ、お前ら。クリスマスの続きだ」 「は〜い!」 ゼロはリル&ライクを連れて帰っていった。 それからビームソードを用意し、ザイネスの処刑とも言うべき所業が始まる。 「確認しておきます。これは魂を持たずして蘇った生命の返還であり、決して命を奪う行為ではない、と言うことを」 ソードを構え、ドラクトが言う。 シグナスとライフセーバー3人も固唾を飲み込んでそれを納得する。 「さらば……はあっ!」 ドラクトのソードがザイネスの左胸に突き刺さる。 ザイネスの顔がこわばり、目、口は開き頬が細まる。 血が流れるベッドの上で、ザイネスは再び断末魔を送ることになった。 しかし。 「はああっ!」 「っ!?」 ザイネスの右手がドラクトを殴り飛ばし、左胸に刺さったソードを抜き、そのままザイネスはソードでライフセーバーを斬りつけて逃走する。 「はあ、はあ、はああっ!」 シグナスやハンター達を振り切り、ザイネスは町へ降りる。 「わああっ!」 「きゃああーーーーーーっ!」 傷だらけで、胸から血を流す武装した男がコンビニを襲い、客や店員は悲鳴を上げて逃げ出す。 ザイネスはそれに目もくれず、陳列してある酒を片っ端から飲み始める。 (死んでもいいから……酔わせてくれエエえええ!) 結局、酔えなかった。再び街中にふらりと歩き出すザイネスの前に、ある男が現れる。 「よっ、さっきはお世話様!」 「だ・い・な・も……」 ダイナモが再び剣を構える。 ザイネスも同じく剣を構え、走る。 「わあああああああああっ!」 剣を振り下ろしたザイネスに対し、ダイナモは横薙ぎの一閃を払う。 だが、ザイネスのほうが少し速い。 ダイナモの頭にサーベルが当たろうとした。 その時、ザイネスの目がかすんだ。 (うッ……?) 一瞬、たった一瞬。 ザイネスの目がかすみ、腕が止まった。 胸の中にとてつもない嫌悪感、苦しい熱さが走る。 吐き気がする。口から胃の中のものが全て出てきそうな吐き気が。 しかし、それはザイネスが30年待ち望んだこと。そう、「酔い」である。 本当に嫌な気分の中、ザイネスの中で最高の恍惚感と達成感が全てを満たしていく。 (これが……酔うってことなんだ……やっと、やっと……) ダイナモの横一閃の斬撃がザイネスを二つに分けた。 安堵の表情を浮かべるザイネスの体から、天使の宝珠のエネルギーが湧き上がってハンターベースに向かって飛んでいく。 ダイナモはそれを見送り、カバンからビールを取り出して飲む。 「終わった、な。今度のお仕事♪」

第二百三十話「歌」

「今度はザイネスか……わかった」 会議室にて、ホイトが連絡を聞いてため息をつく。 「ふう、まさかあの4人以外にも強い奴がいたなんてね……さて」 ホイトは立ち上がり、ドアを開けて会議室を出る。 飾り下のない無機質な廊下を抜け、氷のようにすべすべした平面のエレベーターに乗って地上に上がる。 「さ、いこか」 すると、そこにイルアが現れて笑う。 「へへ、余裕じゃねえか、二人もやられたって言うのに」 ホイトはイルアを一瞥して言う。 「僕はリーダーじゃないんだ、全体のことをいちいち考えてらんないよ。みんなそれぞれやりたいことがあるんだろう? 僕も同じさ」 「へへ、悪かったなぁ!」 イルアは申し訳なさそうに笑い、飛んでいった。 「ったくもう、花火魔め……」 イルアの欲望とは、「美しい爆発」と「快楽の人生」である。 生前、花火職人であった彼は花火の大会社の社長の娘と結婚するよう言われた。 そして、彼は迷わず結婚を受け入れ、美しい花火と美しい妻、豊かな生活を手に入れ最高に満足しきっていた。 その2年後、彼はシグマの反乱に巻き込まれ、フレイム・スタッガーの攻撃を受け 花火工場もろとも死んでしまい、天国に行ったのである。享年23歳。 それでも花火のような「美しい爆発」とかつてのような「快楽の人生」を送ることを望み、ヘヴンズロイドとなったのだった。 「二つって、贅沢だよねえ。僕なんか本当にささやかなのに。ハハ……」 肩をすくめ、ホイトは再び歩き出した。 ハンターベースの支部に来たホイト。 そこにはハンターの女性たちが訓練している。 「男だけに任せて置けないわ!私たちも戦えるって所を見せてやらなくちゃ!」 「はい!部隊長!!」 どうやら、彼女達もヘヴンズロイド討伐を考えているらしい。 すると、窓から歌声が聞こえる。 「咲〜いた〜、咲〜いた〜、チューリップ〜の花が〜♪」 「何者ッ!?」 窓にはホイトがいる。歌っているのは彼だ。 「な〜らんだ〜、な〜らんだ〜、赤、白、黄色〜」 「お前はヘヴンズロイド……」 「ど〜の〜は〜な〜み〜て〜も〜♪き・れ・いだね〜♪」 楽しそうに笑っていると、女性ハンターの一人が窓ガラスを叩き割り、チェーンを使って部屋に引き入れる。 「者共行くぞ!」 「ハッ!」 「ここに来たが運の尽き!」 副長らしき者に命令され、武器を取り一斉にかかってくる女性ハンター達12人。 「はは……」 ホイトは呆れ顔で笑い、まず槍をジャンプでかわしてから飛び蹴りを食らわせる。 次に後ろから刀剣で斬りつけてきた女に向けて、半回転してチョップを叩き込む。 さらにジャンプし、ラッシュをかけて三人を一気に倒して、一人が持っていた棒を手に取りまた一人突き倒す。 一気に半分が倒れ、驚くハンターたち。 「う、ううっ」 副長も青ざめ、おもわずあとずさる。 「な、何をしているの!早く行きなさい!」 部隊長も命令するだけで、何も出来ない様子。 ホイトは哀れむように笑う。 「ハハハ、まあ無理も無いけどね……」 動けないハンター達にむけて、ホイトは見回しながら言う。 「しっかしさあ、尋ね人に来ただけなのに攻撃されなきゃいけないなんて、あなた達はよっぽどせっかちなんだね」 「た、たずね、び、と……?」 部隊長は思わず面食らい、ガクッと腰を落としてしまう。 その隙を突かれ、かかと落としを受けることになったがそこは部隊長、何とか持ちこたえる。 「はっ!」 そして部隊長は、気合を込めてエネルギーを生じさせてホイトを吹き飛ばす。 「わっ!」 「喰らえぇい!!」 副長がバスターを撃ち、浮いたホイトに命中させる。ホイトは天井にぶつかった。 そしてホイトが落ちる前に、部下達が自分の武器をホイトに向けてとにかく突き刺す。突き刺す。突き刺す。 「……!」 「とどめよ!スワローショック!」 部隊長の必殺技、スワローショック。 この技はヴァジュリーラの「ブラックバードレヴォリューション」のように、 エネルギーを具現化しツバメの形にして飛ばす技である。 ホイトはそれをまともに喰らい、床に落ちた。 「やったわ!流石部隊長!」 「こいつも思ったほどじゃなかったわね!」 黒焦げになって倒れたホイトは、完全に目を閉じている。しかし…… 「春よ来い♪早く来い♪」 「まだ歌うか!?」 副長は驚き、バスターを構える。 「歩きはじめたみ〜いちゃんが〜」 バッと立ち上がり、ホイトの膝蹴りが副長を一瞬で沈黙させた。 「赤いはなおのじょじょはいて〜」 ビュン、と腕を水平に振り、衝撃波を飛ばして周りのハンターを全員倒す。 「こんの〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」 再びスワローショックを放つ部隊長。しかし、ホイトのハンジャックブラストで玉砕された。 さらに走り、一気に間合いを詰めてラッシュをかけるホイト。 「おんもへ出たいと待っている〜♪」 歌が終わる頃、部隊長は体中から血を流して倒れてしまっていた。 「あ、ちょっとやりすぎちゃった……」 その時、別のハンター達も騒ぎを聞きつけやってきた。 「何をしている!そこの貴様〜!」 「攻撃開始!」 ハンター達の火力兵器が飛んできて、ホイトは慌てるどころかニッと笑って体内に隠されたビーム砲で全弾相殺する。 そして一発ハンジャックブラストを放ってから、逃げ出した。 「ったく、人探しも出来ないよ……」 それから1時間、サラーが公園にいたホイトの前に現れる。 「貴様、ハンターベースを襲ったそうだな」 「そうだけど……いや、襲ったわけじゃないよ」 ホイトは一歩後ずさってそう言い、サラーは逆に一歩前進して言う。 「貴様に倒された中に私の後輩のリーと言う者がいた」 鎌を構え、臨戦態勢のサラー。ホイトもその力に気付き、体内砲を全て展開する。 「襲われたの、僕なんだけどね……」 しかし、弁解の暇もなくサラーのゴールデンブレードが放たれた。 ホイトはかわしきれず、右肩にダメージを負う。 「うわっ!」 「はああっ!」 さらに鎌による斬撃で、ホイトを追い詰める。 「くっ!よけるか……!」 「そりゃ避けるさ!」 体内砲からビームを撃つホイト。何発かサラーに当たる。 そして、横一線の鎌をジャンプでかわされたサラーは、ベガバスターでホイトを撃ち落とした。 「わっ!」 ホイトは地面に倒れ、踏みつけられる。 「とどめだっ!」 サラーの鎌が振り下ろされ、ホイトの顔を狙う。 「ひゃっ!」 ホイトは首を反らせてかわし、上手く逃げて拳をサラーに向ける。 「ハンジャックブラスト!!」 しかしサラーも回転して防御する。 「無尽壁!!!」 秘奥無尽剣と同様、回転することにより敵の攻撃を弾く技である。 そしてそのままホイトに向かって跳び、秘奥無尽剣を放つ。 「くらえーーーーーーーーっ!」 ホイトは何発も斬撃を喰らい、後ろに吹き飛んだ。 サラーは勝利を確信し、力強く地面を踏む。 「終わった!」 ガラガラガラ……ジャングルジムに突っ込んで崩すホイト。 しかし、その瞬間サラーの目前にジャングルジムの破片である鉄パイプが何本も一斉に飛んできた。 「なッ!?」 無尽壁で防御する暇もなく、全て喰らってしまう。 しかも、2本はサラーの腕と足に刺さり、それがそのまま血管を通してパイプから一気に血が吹き出してしまう。 「う……わあああああああああああっ!」 今までこれほどの出血を見たことは無い。しかも、それが自分の体からと言う事実がサラーをおびえさせる。 血はとどまることを知らず、どぼどぼと流れ出している。 すると、ホイトが駆け寄ってきてパイプを抜き始める。 「わわわっ、ゴメン!こうなるなんて思わなかったから!」 「な……?」 「これ抜いてからもう一回はじめよう!」 パイプを抜き終わり、後ろに下がって間合いを取るホイト。 サラーは醜態をさらしてしまったことで戦意を失いかけた。 鎌を持ってはいるが、攻撃の態勢に移れない。 ホイトはそれを察知し、さらに少し後ろに下がってタックルの体勢に入る。 「っ!」 サラーはビクつき、それをまともに受けてしまう。 「お〜きなのっぽの古時計、おじいさんの時計〜♪」 またも歌い出すホイト。 サラーの首を極め、投げ飛ばす。 滑り台まで吹き飛んだサラーは、立ち上がってバスターを構える。が、その瞬間ホイトはすぐそこまで来ていた。 「百年いつも〜動いていた〜ご自慢のと〜けいさ〜」 強烈な蹴り上げで宙に浮くサラー。目を大きく見開いている。 「くあ……」 そこに、さらに後頭部に対しエルボードロップが決まる。 「おじい〜さんが〜生れた朝に、買って〜来たと〜けいさ〜」 「はあああああああああああっ!」 宙に浮いたままで、鎌による一撃がホイトを襲うが、ホイトの右脇腹を少し斬り、それは止まってしまう。 「今は」 ホイトがサラーの背を抱え込む。 「もう」 一気に反り返り、サラーの頭が下を向く。 「動かない……」 「うわあーーーーーーーーーーーーーっ!」 ジャーマンスープレックスが、決まった。 「そのと〜け〜い〜〜〜〜〜〜〜♪」 サラーの目は完全に虚ろとなり、その場にうち捨てられたままホイトは基地に帰ってしまった。 「はあ、結局今日もあの子に会えずじまいか……ま、いいや、すっごくたのしく遊べたからね♪」 それから数時間、夕日の中。 「お前は……」 「こないだはどうも、リベンジしにき〜たよっ!」 ガンマの前に、フル装備のアクセルが現れた。

第二百三十一話「恐るべきはガンマ」

「ウソだ……」 アクセルの銃砲火器の大半が破壊され、叩き折られている。あれから20分の戦いの末、こうなったのだ。 アクセル自身と言えば大きなダメージは無いもののアーマーの損傷が激しく、右肩や背中の肌が露出している。 そして、対するガンマは多少のダメージに、右頬に打撲の後があるのみ。 「前より弱くなったんじゃねーのか?」 アクセルは顔を真っ赤にして、叫ぶ。そして、跳ぶ。 「う、うるっさい!」 その跳び蹴りが当たる直前にガンマはかがんでそれを避け、強烈なアッパーを腹部に直撃させる。 「ゲボオオおっ!」 血を吐き、宙に舞い打ち伏せるアクセル。 それをガンマは、容赦なく跳び蹴りのように踏みつける。 「武器に頼ったからだ。たくさん武器を持っていれば勝てると思ったからだ。 そんな奴に――――俺が戦ってやる価値は無え!」 さらにアクセルを蹴り飛ばす。 「ちくしょう……!だったらこれだ!」 アクセルは飛び上がってそう叫び、ナインテイルズに変身する。 「そういえばあったな、変身……」 ガンマは白けたようにアクセルを見て、ビームスネークを飛ばす。 「ハッ!」 アクセルはスネークを手刀で弾き、一気に間合いを詰めてから強烈な正拳を叩き込む。 「おっ!?」 驚きながら吹っ飛ぶガンマに対し、アクセルは攻撃の手を休めない。 「反撃、させてもらうよぉーッ!」 変身したまま、アクセルの猛ラッシュが決まる。 「てりゃりゃりゃっ!」 しかし、ガンマも次第に防御一辺から攻撃の手が増え、乱打戦となっていく。 「そんな……ナインテイルズの攻撃についてくるなんて!」 「へッ、アホが!」 ガンマの攻撃がナインテイルズを上回った。 最後はアクセルが防戦一方となり、何も出来ずに体を丸める。 「はっはーーーーーーーっ!」 ガンマは有頂天になり、攻撃の手を休めない。 「……っ」 しかし、それはアクセルの作戦だった。 一瞬の隙を突いて前転し、9本の尻尾をガンマに向けたのだ。 「九砕!!!」 そう、ナインテイルズの最強技である九砕をするために体を丸めていたのである。 「うおおおおおおおおっ!?」 その壮絶な威力に驚き、背後に10メートル吹っ飛ぶガンマ。仰向けに倒れ、それによって更なる隙が出来る。 「今だーーーっ!」 アクセルは元の姿に戻り、ありったけの武器を連射する。 倒れているガンマは何も出来ず、ただ喰らうしかなかった。 多少はビームスネークで撃ち返したようにも見えたのだが、アクセルはそんなことは全く構わず撃ち続けた。 「はぁ、はぁ……どうだ!」 全ての銃弾を撃ちつくし、残った銃は無限に使えるアクセルバレットのみ。 煙の中でガンマはどんな悲惨な死体になっているか想像すると、アクセルは少し気分が悪かった。 「ど、どうせとっくに死んでるんだし……ハハっ」 そう自分に言い聞かせ、煙に向かって歩を進める。 「ーーーーーーーーーっ!」 声なき声が、アクセルの顔面を強打する音とともに響いた。 「……俺はお前なんかには絶対負けられないんだ」 「……うそだ」 ガンマは立っていた。 アクセルが撃っている間に立ち上がったのか、撃ち終わってから立ち上がり、 それが煙に隠れて見えなかったからなのかはわからない。 アクセルは頭から血を流し、今の状況を信じようとしなかった。 「そんな訳……無いだろ? ウソだ!嘘だ!うそだ! こんなの夢だ!演技だ!フェイクだ!虚像だぁああアアアアアアアッ!」 薄れゆく意識の中、アクセルは自分の思いつく限りの「非現実」を表す言葉を言い放つ。 認めたくない。 S級ハンターとなった自分が、肩を並べる最強の男達と並んでいた自分が、 やがてはその中でも最強となることを多少なりと信じていた自分が、無くなっていく。 しかし、ガンマが最後に一撃放つと同時に言った言葉は、アクセルの自信を砕ききった。 「……本当だ」 2日後、ガンマはザイネスを倒したと言うダイナモを探し出して挑戦していた。 「今度はお前だ。何でも屋、らしいな?」 ニヤーーっと笑い、ダイナモの右手のバスターを見るガンマ。 「おう、いろいろ暴れまわってくれてるらしいじゃねえか……楽しませてもらうぜっ」 まずはダイナモのスピンスライサーが空を切る。 ガンマはビームクローで対抗するが、上手く弾き飛ばせず2発喰らった。 「そーらっ!」 さらにダイナモのバスターが命中。 アクセル戦のダメージが殆ど治っていない状態なので、かなり効いている。 「くっ、てめえ……」 悔しい顔をするガンマに、余裕で笑うダイナモ。 「お〜いおい、そんな顔してふらついちゃって。 コンディション悪いならまたにしてやってもいいんだぜ? 20万でどうだい?」 その瞬間、ガンマはダイナモをキッと睨みつけて走る。 「そうはいかねえんだっ!」 強烈なジャンプパンチがダイナモを直撃する。なぜかダイナモはそれを避けなかったのだ。 「痛ッ……」 「一度戦いが始まったら中断は許されねえんだ!」 ガンマの更なる攻撃が決まる。 まずはミドルキック、さらに後ろから首を絞めるスリーパーホールド、 その状態からのけぞって敵の頭を叩きつけるスリーパースープレックス、と連続技をきめたのだ。 「チッ!」 ダイナモはうつ伏せになり、足をつかまれそうになったところから逃げ、バスターを撃つ。 「ぐッ!」 その弾はガンマの足に当たり、よろけさせた。 「っしゃぁ!!!シザーブレイクッ!!!」 強烈な一撃(二度蹴っているが)で頭蓋骨に多大なダメージを与える。 ガンマの頭から血が吹き出し、まともに立てなくなってしまった。 「さ〜て、とどめはどうして欲しい? Dサーベルか? バスターか? それとも……」 手にエネルギーを溜め、渾身の力で地面を叩く。 「アースゲイザーがいいかなっ!?」 強力な光線の柱がガンマを舞い上がらせる。 「うああああああああああああああああああっ!」 ガンマが地面に落ちるころ、ダイナモもよろめき倒れていた。 「へっ、これで二人目か……ザイネスとの勝負の次にこんな奴と戦って……体は大事にしなくっちゃあな」 「な〜るほど、ザイネス戦でダメージを受けてたってわけか」 「っ!?」 ガンマは立ち上がっていた。 ビームクローでダイナモの腕アーマーを切り裂き、顕になった腕を見て言う。 「火傷、か。なるほど動きが悪かったわけだ。さっきのパンチもかわせなかったしな」 ダイナモはバッと立ち上がり、サーベルを構えてガンマを睨みつける。 「へッ……楽しませてくれるじゃねえか」 ガンマもビームクローとスネークを構え、笑う。 「コンディションは五分五分ッてところか。あとは実力差が明暗を分ける」 二人の間に静寂が、そして一筋の強風が流れる。 その直後、二人はギンと互いを睨み、壮絶な高速戦闘が始まった。 「ああああああああああああああっ!」 「らあああああああああああああっ!」 サーベルとクロー、スネークの打ち合い斬り合いが周囲の物体をも切り刻む。 ダイナモの火傷痕から血が吹き出し、ガンマもアクセルの九砕を喰らった胸から血が吹き出してくる。 「だっっ!」 ダイナモのアースゲイザー(弱)により、再びガンマに隙が出来る。 「インフィニティー・スライサー!」 無限ともいえるスピンスライサーの連射。 連続で斬り、斬り、斬りの攻撃を受け、再び倒れそうになるガンマ。 「うぐ……」 しかし、彼の異常な執念はとどまらなかった。 「はアアアアあああああああっ!!!!!!!」 ダイナモの手が止まった。 ガンマが叫んだ途端、スピンスライサーが全て地面に落ちた。 (気合……? 嘘だろ!? 信じられねえ!) ダイナモは動けなかった。 ガンマの勝利にかける執念が自分の動きも、周囲の武器の動きまでもめてしまったことに驚いた。 最後はあえなくアッパーの一撃で倒されたダイナモは、ガンマが去った5分後に 偶然通りかかったサラリーマンに発見されアクセルと同じ病院に運ばれた。 「なるほど……とてつもない方ですね」 ハンターベース司令部で、アクセルとダイナモのカルテを見ながらヴァジュリーラがため息をつく。 「で、どうするの? 話によればかなりのダメージを負っているらしいけど」 「そうですねえ……」 ベルカナににこっと微笑み、席を立つヴァジュリーラ。名簿を机の上に丁寧に置いて、部屋を出て行った。 「ヴァジュ様……」 「ふうむ……ゼロさんと互角に戦えるほどの強さとはいえあの二人と戦えばただでは済まない筈。 そんな状態の相手を狙うのはどうにも性に合いませんね」 独り言をブツブツといいながら道を歩くヴァジュリーラ。その物憂げな姿は町行く女性たちの視線を釘付けにしてしまう。 「ステキね〜、ヴァジュ様!」 「キャッ、今こっち向いたわよ!!」 「私を見たのよ、私を!」 その声に気付き、ヴァジュリーラは愛想笑いをしてその場を後にした。 「B……」 ヴァジュリーラが来た場所は、墓地。マンダレーラの墓があるあの墓地である。 「……」 ヴァジュリーラは墓前に手を合わせ、祈る。 「……さて」 数分間祈った後、ヴァジュリーラは立ち上がった。 そして右を向くと、そこにはガンマが立っていた。 「よお、有名人ってのはすぐにわかって良いな」 「あなたはガンマさんですね」 細く目を開け、ガンマを睨む。 「へッ」 ガンマはニヤっと笑い、自分の右横にある墓石を蹴飛ばした。 「何と言うことを!」 ヴァジュリーラは目を開き、一転して怒り出す。 「こんな墓、必要ねえよ……俺のだ」 そう、ガンマが蹴り飛ばしたのは彼自身の墓。奇しくも、マンダレーラの隣にあったのである。 彼はこの墓を壊すためにやってきていて、ヴァジュリーラを見つけたのは偶然だった。 「良い偶然か……悪い偶然か……」 「良い偶然だよ!」 ヴァジュリーラは、ダイナモと戦って3時間ほどしかたっていないガンマのコンディションを心配して言ったのだが、 ガンマは強敵と出会い、勝つことしか考えていなかったため「良い偶然」と軽く言い放ったのであった。

第二百三十二話「ガンマ対ヴァジュリーラ」

「ハアアアッ!」 初っ端からヴァジュリーラの大技、ニードルトルネードが撃ちだされる。 ガンマはそれをひょいとかわし、ビームスネークで攻撃。 「速い!」 ヴァジューラは驚きながらも、スネークによる連続攻撃をかわし近づいていく。 「ノロノロ近づいてくるんじゃねえ!」 ガンマの指からビームクローが飛び出し、×字型にヴァジュリーラに斬りつける。 「おおっ!」 ヴァジュリーラは盾を出してそれを防御し、盾の宝玉から光線を出し命中させた。 「初ヒット、ですね」 「るせえ!」 ガンマは盾を蹴り飛ばし、その隙に強烈なタックルを見舞う。 「っ!?」 そしてそのまま飛び上がって、ヴァジュリーラとともに墓地から飛び出しコンクリートに叩きつけた。 コンクリートは割れ、あたりにその細かい粉のような破片が舞い上がる。 「くっ!」 ヴァジュリーラは跳び起きながら後退し、距離を置く。 ガンマはそれに対し、ビームクローとスネークの両方を発動して構えを取ったまま動かなくなる。 「……正直、ここまでの相手とは思いませんでした」 目を開けるヴァジュリーラ。そう、早くも鴉形態となったのである。 「本気で行かせてもらうぜ……」 ぐっと拳を握り、エネルギーを集中する。 その姿に、ガンマは今までおぼえたことの無い感情を見つける。 「……」 「はあああああああああああっ!」 両手からさらに強力なニードルトルネードを発射したヴァジュリーラ。 ガンマは避けきれずに、右肩に負傷し体制が崩れる。 それでも無理をしてヴァジュリーラの方向に跳ぶと、ヴァジュリーラはその顔面を足場代わりにして飛び上がり、 サーベルを構えて下向きにタックルを始める。 「くうっ!」 顔面を踏みつけられたことでさらに体制が悪くなったガンマは、 無理矢理ビームスネークを上方向に向けて防御しようとした。 が、上手く行くはずもなく背中に痛烈な斬撃を喰らう結果に。 「強ェ……今までの誰より!」 その表情は、苦しみとともに嬉しさがあった。 ガンマはビームクローでヴァジュリーラを後ろへ飛びのかせ、そこにビームスネークを最大限に伸ばして乱打する。 「少しは当たるな……」 実際何発かは命中しており、ヴァジュリーラのアーマーは所々損傷が見られ、ある箇所からは血も出ているのがわかる。 「よし!こっちには隙が無ぇ!勝てるぜ!」 ガンマは有頂天になり、さらに攻撃のスピードを高めていく……しかし。 「っ!? あたらねえ!?」 突如として、ビームスネークの攻撃が当たらなくなった。 「どういうことだ……!?」 するとヴァジュリーラが右手にエネルギーを込めながら、説明する。 「お前のその技は13メートル以上伸ばせない。 俺はそのギリギリの地点で適当に動いた素振りを見せて、攻撃を避けているように見させているだけだ。 ビーム武器や技は使い手に感触や手ごたえが届かない分、余計にわかりにくかったってわけだ。さらに……」 さらにヴァジュリーラは、超高速で飛び回るビームスネークをかいくぐりながらガンマに近づいていく。 「そ、そんなバカな!」 「一度に出せるスネークは5本が限度。それを知っておけば後はそれを越える速さで動けばいいだけだ!」 ヴァジュリーラの手に込められたエネルギーが、ガンマの顔面に直撃した。 「うぐあああああっ!」 ガンマが後ろに向けて吹っ飛び、背中から落ちる前にヴァジュリーラは滑り込んで背中に強烈なアッパーを食らわせて、 体内のビームスネーク発生源を破壊した。 「うあああああああああああああああああああアアアアあああああああああ あああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 ビームスネークのエネルギーが、消滅の直前に暴走。 ガンマはそれによって多大な激痛を味わうことになってしまう。 「あああああああああああっ!」 「終わりかな……」 ヴァジュリーラはそんなガンマに向けて、黙ってホーミングレーザーを3発撃ち込む。 「ぐあああっ!」 倒れたガンマの姿がそこにあった。 体中から煙と血を発し、口がビクビクと動いているだけの凄惨な姿。 ヴァジュリーラはサーベルを構え、とどめを刺そうと近づいた。 「やめてえええええっ!」 その声がする直前。 ヴァジュリーラは顔面を思い切り両の足で蹴り飛ばされていた。 「が、ガンマちゃん!!」 泣きそうな顔で闘いの前に現れたのは、ガンマの幼馴染リャンだった。 胸騒ぎがして近くを探しに来たところ、爆発音がしたのでここに現れたのだ。 そして、ガンマに止めが刺されようとしたのを見てそれを阻止しようと叫んだのだが、ガンマはその直前に復活しヴァジュリーラを蹴り飛ばしていた。 「負けるかよ、誰にだって!!!」 倒れたヴァジュリーラの顔面を何度も踏みつけるガンマ。 「お願い!お願いだから止めて!ガンマちゃん!」 リャンは悲痛な叫び声を上げるが、ガンマは聞く耳を持たないかのように踏み続ける。 やがて、ヴァジュリーラの顔と、ガンマの足の両方から血が流れ出はじめる。 「はっ!」 ガンマの足を捕らえ、投げ飛ばすヴァジュリーラ。 額が割れ、血がさらに流れ出す。 「ターゲット・ストライク!」 拳から発射される連射弾。 正確にガンマの体に命中していく。 「今だ!」 さらに動きを封じるリングを発射し、ガンマの動きを止めてしまう。 「しまった!」 動けなくなったガンマ。だが、同時にヴァジュリーラも腕を下ろして攻撃を止めた。 「?」 驚いて不思議がるガンマ。 ヴァジュリーラはリャンを見て、ガンマに言う。 「少し話したらどうだ?」 「うるせえ!」 ガンマはヴァジュリーラを睨みつけた。そしてリングを無理矢理破壊しようとする。 「ク……があああっ!」 「やめて、危ないよガンマちゃん!」 思わずガンマに駆け寄るリャン。 その目からは、本当に涙が溢れ出す。 「リャン……邪魔するな!俺は勝ちたいんだ!自分だけで!邪魔するなあ!」 ガンマは冷たく言い放つ。しかしリャンは、ガンマの腕を掴んで叫ぶ。 「お願い!せっかくまた会えたのに……ガンマちゃんがまた苦しむところなんて見たくないの!」 「!」 ガンマの顔色が変わる。青ざめ、口は揺れ、目は泳ぐ。 そう、迷っているのだ。 「ガンマちゃん、覚えてる?」 「?」 「私がいじめられてたところを助けてくれたときのこと。 それからなんだよ……ガンマちゃんが強くなりたいって言い出したのは!」 「!!!」 ガンマが強くなりたいと思ったのは、元を正せばリャンのため。 リャンを守るために強くなり、それから世界を目指そうと考え出していたのだった。 それが、いつからかリャンのことを考えるのを忘れた。 自分だけのために強くなっていった。 闘争心を煽り続け、戦闘、いや勝利マシンへと変貌していったことを今になって知った。 「お願い、優しいガンマちゃんに戻って……」 一滴の涙が砕けたコンクリートの砂に落ちる。 その瞬間、ガンマの心の中で何かが弾け飛んだ。 「ごめん……ごめんな、リャン」 「ガンマちゃん……!」 「俺……まだ……勝ちたいんだ!」 その一瞬で、リャンの心は虚空となった。 同時に、ガンマはリングを吹き飛ばしてヴァジュリーラの眼前に現れ、強烈な頭突きを食らわせる。 「うっ!」 「うらああああああああああああああっ!」 驚いたヴァジュリーラの前で拳を固め、ボクシングの超一流スタイルでラッシュをかけるガンマ。 「!!!!」 さらに首を取り、柔道のテクニックで頭から落とす。 「しゃああっ!」 「っ!?!??!」 そしてそのまま、ヴァジュリーラの体を持ち上げて肩関節を極める。 「うぐう……!!」 「だああああああっ!」 最後には、顔面から地面に叩きつけることによってヴァジュリーラを気絶させてしまった。 「―――――!」 「勝った……!!!!!!!!!」 目を見開き、かつて無い形相で倒れこむヴァジュリーラ。恐るべき速攻によって、手痛い敗北を喫してしまった。 しかし、何より恐るべきは自分を想うかつての幼馴染さえも冷たく突き放すことの出来る 勝利への執念、欲望、そして『夢』。 それからガンマは、あまりの衝撃に目を見開いて涙さえ出ないリャンに最後の言葉をかけて去っていった。 「あきらめろ」 永遠に逢うことを許されなくなった、世界で一番大事な人の別れの言葉だった。 リャンの耳には、その絶望的な言葉が響き続けた。

第二百三十三話「楽しい闘い」

病院のベッドにて、ベルカナが目を覚ましたヴァジュリーラを抱きしめる。 「良かった……ヴァジュ様が死んじゃうんじゃないかって心配してたのよ!?」 「負けました」 目覚めて第一声、ヴァジュリーラの一言に一同は騒然となる。 「やったのはガンマだな?」 ゼロは動揺した目で聞く。 それに対し、ヴァジュリーラは何も言わずにうなづく。 「またガンマか……アクセル、ダイナモに続いてお前までやられるなんてな」 暗い表情でホーネックも言う。 しかし、ヴァジュリーラは笑い、ベッドからバッと飛び降りる。 「なあに、このまま終わったりはしませんよ♪」 手を開け閉めしながら、ベルカナを連れて部屋を出て行ってしまった。 その気丈さに、一同呆然。しばらくしてようやくアイリスとゼーラが口を開けた。 「怪我……いいの?」 「さあ……」 そして、スーツに着替えたヴァジュリーラとベルカナは家へ帰ろうと町を歩いていく。 ベルカナはとても嬉しそうに腕を組んでいる。 「ところでベルカナさん、私はどれほどの時間眠っていたのでしょうか」 木々立ち並ぶ公園に入った所で、ヴァジュリーラは質問する。一瞬戸惑いながらも応えるベルカナ。 「え? ……そうね、1日半って所かしら?」 ベルカナの返答に、驚いた表情になるヴァジュリーラだが、それでも余裕の笑みが顔に残っていた。 「ところで……お腹すきませんか?」 「え?」 ぴたりと立ち止まったヴァジュリーラの目の先には(100メートルほど離れているが)、人気のアイスクリーム屋が。 「そうね、ヴァジュ様怪我してるから私が買ってくるわ!」 そう言って走っていくベルカナ。大人数が並んでいるので、買って来るまで時間が掛かりそうだ。 「まちます、か……」 その時、ヴァジュリーラは後ろから強力な気配を感じた。 「お……?」 ゆっくりと後ろを向くと、そこに居たのはイルア。 「よ、ヴァジュ様♪」 なれなれしく声を掛けてくるイルア。パチンパチンと陽気に指を鳴らし、その度に火花が散る。 「あんたと闘うのが一番、楽しめそうなんだ♪」 「ヘヴンズロイドのイルアさん、でしたね。私が一番、ですか。光栄ですが残念ですね。このようなコンディションでして」 少し腕や足をまくって自分の怪我を見せるヴァジュリーラだが、イルアは構えを取って再び笑う。 「コンディション? 何時何処で闘うも当然の俺達にコンディションなんて言葉はねーだろ!」 それに対し、ヴァジュリーラは剣を構えて言う。 「楽しみたいようでしたので……できるならば最高の状態の私で闘ってあげたい、と言うことですよ」 「おお、そりゃ悪いこといったな……その侘びに教えてやるぜ。俺の指、鳴らすとよ……」 イルアはパチンと指を鳴らす。すると、小さな火花が指から飛んでいく。 そして、それはヴァジュリーラの目の前で爆発した。 「おお!」 感心するヴァジュリーラに向け、イルアは得意げに説明を続ける。 「そこから火花が飛んで、威力・時間・規模、このどれもが俺の自由で爆発する」 「なるほど!」 ヴァジュリーラは感心した表情のまま、剣をイルアに向け、高速で突く。 「おおっとっ!!」 イルアは笑い顔でそれをかわした。 「うらあああっ!」 イルアの爆発攻撃「シブキ」が大きな音を立てて何度も何度も爆発する。 「たああっ!!」 ヴァジュリーラも負けず、ホーミング弾を連射して反撃。しかし、弾は爆発に巻き込まれて無くなってしまう。 「ふむふむ、ならばこれはどうでしょうか!?」 そう言ってはなったのはニードルトルネード。爆風に邪魔されず、イルアに直撃する。 「うごおおお……っ!」 「続きですッ♪」 さらに強烈なハイキック、エルボードロップが決まった。イルアの頭が割れ、ピューーっと血が吹き出る。 だが、それでもイルアは指を弾いていた。 「ッ!!!」 両手の中指で同時に発動し、ヴァジュリーラの体を一気に吹き飛ばす。 ヴァジュリーラは空中で数回転した後、どうにか着地した。 「ふうむ……あなたの技はそれ一つですが指を弾くと言う単純な行為に加え 止めようのない火花と空気に突如として起こる爆発。 これは攻略が難しい」 イルアは得意げに笑い、さらに指を鳴らす。 「だろぉ!? でもよう、俺の技はこれだけじゃねえんだぜ!」 そういって、イルアは全ての指を一斉に鳴らした。   ーーーエクスプレッド・インパクトーーー 周囲には突風と噴煙が舞い、中心部には轟炎が燃え盛り、色とりどりの火の粉を飛ばす。 半径50メートル、高さ30メートルの低範囲高密度の大爆発が起きたのだ。 さらに、音も突風によって空気振動が遮断されたために誰にも聞こえることはなかった。 ベルカナもアイスを買う列に並びながら本を読んでいたため気がつかなかった。 だが、爆発と高エネルギーの反応を見たハンターベースの数人が、戦いの場に向かっていく。 「人生ってのはたのしいなぁ……」 飛んで来る空挺部隊を見て、イルアはニヤリと笑う。 「途中で……」 そして再び、エクスプレッドインパクトのため指を弾く。 「死んじまう奴の気が知れねぇぜ〜〜ッ!!」 ……出動した空挺部隊14名、全滅。 ハンターベースにて、出動準備をしていたイーグリードとオストリーグらは目を丸くして部下の反応をレーダーで見ていた。 「そ、そんなはずが……」 そして公園。 イルアは恍惚とした快感に酔いしれていた。 「嗚呼……最高だぜぇ。綺麗な花火……それに巻かれて敵が吹っ飛ぶ!あああああ!最高だぁ!」 イルアの快楽は、いつしか「綺麗な花火」と同化し危険な物へと変わっていた。 思えば、彼の人生は全てが花火会社の社長である親に決められたものだった。 厳しい家庭教師、無理矢理入らされた高校と大学、余儀なく取らされた資格、免許。 そして花火師としての修行に、大会社の娘との政略結婚。 ーーー彼は、そんな自分の人生が大好きだった。 親に決められたとおりに事を運び、余った時間で自分の自由を最大限にまで楽しむ。 それで自分も周囲も満足できる。そんな人生が大好きだった。 しかし、それを狂わせたのがシグマの反乱。 「この世」を満喫していた彼は「あの世」へと送られた。 天国での生活は誰もが満足いくところのはずが、突然の変化に彼は不満を募らせたのだ。 そして彼はヘヴンズロイドとなった。これが彼の真相である。 「やっぱ人生はこの世で楽しまなきゃな……」 「そうですねえ」 ヴァジュリーラが立ち上がった。服は焼け焦げ、包帯も消滅。 血がダラダラと各所から流れ出ている痛々しい状況で、なおも笑っていた。 「はああああああっ!!!!」 ニードル・トルネードが再びイルアに向かって飛んでいく。 イルアはそれをかわしながらシブキの連続攻撃を放つ。 「おおっとっ!!」 ヴァジュリーラは爆発を全てかわし、一気に間合いを詰めていく。 そして、そのままイルアの目前にまで現れた。 「おわああっ!」 イルアは驚きながら、エクスプレッド・インパクトを放つ。 さらに高密度、 さらに高純度、さらに高威力な最高のエクスプレッド・インパクトである。 ヴァジュリーラはその爆炎の中に包み込まれた。 「……っ!」 爆炎が消える頃、イルアは落ち着きを取り戻せず腰を抜かしていた。 「はあ、はあ、はあ……流石に強敵だったぜ!」 そして、焼け焦げた地面を見てまた笑う。 「人生、最高……ん?」 ……痛い。 「なんだ……?」 左腕が、痛い。 「あ……!」 左手首が、落ちていた。 「なんじゃこりゃーーーーーッ!?」 「カああああああああっ!!!!!!!!」 その瞬間、上空からヴァジュリーラが落ちるように飛んできてイルアの胸を貫いた。 「……ゲふ!」 イルアは白目を剥き、口から血を吐いて勢いよく地面に倒れる。 「危なかったでしたよ、かなり」 大火傷を負いながらも笑うヴァジュリーラに、イルアも笑い、聞く。 「ゲホッ、なんで鴉だとかの強化モードにならなかったんだ?」 「それは勿論、この性格のほうが楽しくできると思ったんですよ、あなたとの場合」 それを聞き、イルアは自分のために闘ってくれたヴァジュリーラに対して今までと全く違う感情を覚えた。 これが他人の優しさ、というものなのか? 「へへ……最後に……いい気分だぜ。お礼に……人生を最高に楽しむ方法、教えてやる」 「最高に楽しむ方法?」 そこに、ベルカナがアイスを持って走ってきた。 「ヴァジュ様ゴメンね〜!15分も待たせちゃって!って、どうしたのその怪我は!?」 ヴァジュリーラはベルカナの顔を見て、すぐにまたイルアに視線を戻した。 「その方法とは?」 「自分を、好きで、いることさ……」 イルアの体から宝珠のエネルギーが飛び去った。イルアは再びあの世へ行ったのである。 ヴァジュリーラはイルアに向けて、言う。 「生涯、切り離すことのできない存在……自分を好きでいることは確かに幸せなものですね」 空を見上げて、言う。 「確かに、それこそが最高の……」 最後に、ベルカナを見て言う。 「ですが……自分以外の方をもっと好きでいられる人生はさらに輝けるものですよ」 「ヴァジュ様……?」 状況がわからず呆然とするベルカナを、ヴァジュリーラはギュッと強く抱きしめる。 ベルカナはそれに応えるようにそっと手をヴァジュリーラの背中に寄せ、 アイスが溶けても二人は抱きしめあっていたのだった。

第二百三十四話「神の力対負けず嫌い」

ヴァジュリーラがイルアを倒してから1ヵ月半の長い時が過ぎた。 その間ヘヴンズロイドによる被害はあまりなく、 ハンターベースや街中は張り詰めた空気のまま正月を迎えるなどしてこの時期は「緊迫の年末年始」と呼ばれるようになる。 ヘヴンズロイドによる被害があまりない、と言う事は少しはあった、ということである。 そのことを会議にて、ドラクトがホワイトボードに箇条書きした。 フローズンによる小惑星数個の壊滅 ジュリによる「カーラ市」のビル破壊 ホイトによる支部ハンター15名入院 ガンマによるギガンティス島の攻撃基地隊員全滅 「……以上です」 ドラクトは真剣な表情でマジックペンの蓋を閉めた。 ゼロ達S級ハンターは、真剣にその一文字一文字を見て一斉に口を開く。 「お前、字下手だな」 「ほっといてください!」 次に、Xがホワイトボードを指差す。 「このギガンティス島を襲撃したガンマっていうヘヴンズロイドは……」 ホーネックが麦茶のコップを握りつぶしながら、Xに続ける。 「アクセル、ダイナモ、ヴァジュリーラを倒した超強敵、だよな」 ドラクトは全員に天使の宝珠を見せる。 「見てください。宝珠にエネルギーが約30%ほど戻っています」 ゼロは宝珠に溜まった、気体のような液体のような青いような紫色のような物体を見て言う。 「少しずつ……増えてるな。本当に微量ずつ」 「流石ゼロさん、気付きましたか。宝珠に少しずつエネルギーが流れてきているのです。 つまり、ヘヴンズロイドの中の一人の肉体が滅びかかっている、と言うことです」 「なるほど。水を溜めておくための器にひびが入った、と言うことですね」 爪でコップに傷をつけながら、ヴァジュリーラ。コップの側面から麦茶が少し、こぼれだす。 「つまり、倒すなら今だ!ッてことね。で、誰をやるわけ? 何となく想像はつくけど」 宝珠に銃を向けて笑うアクセル。ドラクトはそれを見るなり慌てて宝珠を懐に隠した。 「そのヘヴンズロイドとは、ガンマです。 ギガンティス島から彼が脱出したと言う情報はないので恐らくまだあっちに居ます」 「やっぱりね!よ〜し、じゃあ僕がやってやるぜ!」 そう言って一人、会議室から走っていこうとするアクセル。 しかし、アクセルが開ける前に急に扉が開いた。それによってアクセルは驚いてドハデに転んでしまう。 「いってーーっ!誰だよいきなりぃ!」 そこに立っていたのは、エイリア。後ろに二人ほど連れているようである。 まずは一人が、呆れた顔でアクセルを見下ろす。 「落ち着きがない人ですね。それでもS級ですか?」 「な、なんだって!?」 するともう一人が、ビクビクしたような顔つきで言う。 「あ、あの……あまり大声は出さない方が」 「で、その二人は誰なんだ?」 ゼロが聞くと、アクセルと喧嘩する一人を見ていたエイリアは思い出したように慌てる。 「あ、そ、そうね!紹介するわ。新しくオペレーターに配属されたパレットとレイヤーよ。 どちらも優秀な成績で訓練学校を卒業して、今日からS級ハンターのオペレートをすることになったの」 「よろしくお願いしますね、みなさん!」 パレットは元気良くゼロたちにむけて手を振って飛び上がる。 「よ、よろしくお願いします……」 レイヤーは赤くなりながらすぼむようにゼロたちを見て、すぐにエイリアの後ろに隠れてしまった。 「よろしくお願いしますね、パレットさんにレイヤーさん」 いつものようにお辞儀するヴァジュリーラに、パレットは目をキラキラさせているようだった。 だが、次のエイリアの言葉で急に目を鋭くさせる。 「で、今からアクセルにはR−10ポイントに行ってもらうんだけど、パレットにそのオペレートをしてもらいたいの」 「え!?」 「なんで!?」 同時に驚くアクセルとパレット。しかし、エイリアに睨まれて渋々連れて行かれてしまったのだった。 ーーーーー所変わって、ギガンティス島の森。 「見つけたぜ」 森の木の上で寝ているガンマを、ある男が狙っていた。その男とは、スパイダー。 「なんだお前は、強いのか?」 ガンマはゆっくりと起き、木から降りてスパイダーの眼を見る。 「……」 数秒、スパイダーの眼を見たガンマはニッと笑ってビームクローを解放した。 「OK、いいぜ」 スパイダーも笑い、戦闘の構えを取る。 それから一瞬にして木が何本も吹き飛んでいく。 スパイダーのカード連射と、ガンマのクローと腕を振るう風圧によって、である。 「だあああああっ!!!!」 「おらあああああっ!!!!!!」 スパイダーは高速移動しながら、驚いていた。 (なんだこの気迫っ!こんなに傷を負ってるくせして無茶苦茶な奴だぜ!) それでも上手く近づいて顔面を殴ったが、ガンマは待ってましたと言わんばかりに スパイダーの腹にタックルを食らわせて転ばせる。 そして、その状態から一気に強力な関節技を何本もつなげていく。 「うぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」 みしみしと軋む腕、足の痛みにスパイダーもあろう事か悲鳴を上げる。 どうにか脱出しようと攻撃するのだが、殴っても蹴っても撃ってもガンマは攻撃の手を緩めない。 「首ッ!!!」 そしてガンマはスパイダーの首を鷲づかみにして締め上げる。 「死ね……ぇ!?」 しかしその直後、スパイダーは消えてしまった。 「ど……どこだ!?」 立ち上がってビームクローを薙ぐガンマだが、全く手応えがない。 「逃げた……わけがない!」 「あたり!」 ガンマがキョロキョロと辺りを見回した途端、スパイダーの「ロイヤルストレートフラッシュ」が成功し、頭上から超強烈な威力が降り注いだ。 「ああああああああああああああああアアアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「トリックスター☆だぜっ!」 さらにその状態でカードを連射するスパイダー。トリックスターの効果が消えるまで攻撃は続いた。 「くそ……」 ガードをとくガンマ。右手の中指から下のビームクローが消えている。 スパイダーの姿は一向に見えない。攻撃をやめてすぐに隠れたからだ。 「また隠れ身か……」 ガンマは木を一本切り倒した。だが、スパイダーの姿は見えない。 「どこだ……」 その瞬間、スパイダーは後ろからフォーチュンカードを見舞う。スリーカードだ。 「そりゃっ!!!」 炎、氷、雷の三連撃をまともに喰らったガンマは、倒れ伏してしまう。 が、腕立て伏せのような形でバッと起き上がり、後ろに居たスパイダーに向かって強烈なキックを見舞う。 「く……!」 「うらあああああああああああああああっ!!!!」 さらにビームクローの連続攻撃によって、スパイダーの体中に一気に傷が増える。 「だっ!!」 そして強烈なハイキック。スパイダーの脳天から鮮やかな赤が飛び散った。 「らあああっ!!」 そして、最後は手刀で突く「貫手(ぬきて)」を胸に突き刺した。 と思ったのだが、スパイダーの姿が再び、消えた。 「また消えた!?」 驚くガンマの背後から、大きな石が飛んできた。 「ぐっ!」 さらに、よろめいたガンマの顔面に痛烈な膝蹴り。ガンマの顔面の骨にヒビが入り、目や耳から血が吹き出す。 「づ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!!」 今までに聞いたこともないような悲鳴を上げ、ガンマはのた打ち回る。 その瞬間、スパイダーのカード連射がガンマを襲う。 「ギ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「どうだ……死体野郎め!」 スパイダーが再び姿を消せた理由は、ハイパーモードの時間を回復できる「ゲインハイパー」を使ったためだった。 最後に、フォーチュンカード「フルハウス」を決め、その時間は終わりが来た。 「……いい加減、終わっただろ」 スパイダーが血まみれになって倒れたガンマを見て、歩み寄る。 「いい加減……」 「終わった……」 ガンマは再び、動き出した。スパイダーの右脚を思い切り蹴り飛ばしたのである。 「負けるのだけは・・我慢がならねぇっ!!!!」 スパイダーは目を丸くして驚いた。ガンマの驚異的な精神力に、ただただ殴られ続けた。 「ああアアアアあああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 悲痛なまでのガンマの叫び。スパイダーの顔は瞬間的にだが、面影がないほどにまで殴りつけられる。 (こいつ……何考えてんだよ) (俺みたいに……) (物事、軽〜く考えられないのかねえ) (不幸な奴……) 「そんな不幸な君に!」 ガンマを跳ね除けるスパイダー。 「神の力・・見せてやるッ!!!」 スパイダーの体を光が包む。 「行くぜ……ゴッドスパイダー!つっても『蜘蛛の神様』じゃねえからな? おらあっ!」 スパイダーの手から、巨大なエネルギーが放出された。 ガンマは吹き飛び、森林観察基地にまで飛ばされてしまった。 スパイダーは超高速移動でガンマより早く基地に現れ、飛ばされてきたガンマの顔面を下向きに踏みつけた。 「っ!U!g!>」 奇声を発し、ガンマの後頭部が地面にめり込む。 さらにスパイダーのゴッド・エナジーが光の粒となってガンマの体に降り注ぐ。 「これでしまいだぜ!!!ゴッドブレイク・ストレート!!!!!!!!!!!!」 ガンマの胸中心に、真っ直ぐ、真っ直ぐなエネルギー波が直撃した。 ガンマの指がピクピクと動き、左手の指先、つまりビームクロー発生源が爆発。それと同時に、ガンマの手が完全に止まった。 「ア〜メン、と……」 「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ オ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 異常。もうその程度の言葉で収まりがつかないほどにガンマは狂っていた。 この叫び声が終わるまでの間、ガンマはスパイダーに攻撃をし続けた。 肩を掴み、頭突き、頭突き、頭突き、頭突き、頭突き、頭突き、頭突き、頭突き、頭突き、頭突き………… スパイダーも神の力で多少の攻撃はしていたが、全て無視されるかのようにガンマに効かなかったのである。 「バッ、は、っ、ああ、ああ!!」 滅茶苦茶な呼吸をし、ガンマはまたも勝利してしまったのである。 そこに、そんなガンマを基地の壁際から悲しく見つめる一人の姿があった。 「ガンマちゃん……」 そう、ギガンティス島にきたガンマを追って、リャンも来ていたのである。 そして、ギガンティス島で最も強いというスパイダーにガンマを倒して欲しいと頼んだのだが、 今回もその願いはかなわなかった。 「ガンマちゃん……」 ポタリと涙を流すリャン。 その横から、3つの黒い影が飛び出した。 「この負けず嫌い野郎がーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!」 マリノである。マリノがクイックシルバーの状態で「ミラージュタイプ」を発動したのである。 「っ!?」 ガンマは夢中で3人に分かれたマリノに石を投げつけた。 が、これまでの戦いによるダメージで全く見当がつかない。 そして、ついに一つになったマリノの一撃が決まった。 「……一丁上がりィ!」 「……っ」 悲痛な表情で、ガンマの体が、爆発を起こす。 それは驚異的な大爆発。 リャンは壁に身を寄せてその爆発から逃れようとしたが、爆風に吹き飛ばされてしまった。 「きゃっ!ガンマ……ちゃん……!」 それから数十分後、気絶から目を覚ましたリャンは病院から戦いの跡地に走った。 すると、爆発によって気絶したマリノとスパイダーが地面に埋まり、手や足が見えている。 「マリノさん!スパイダーさん!大丈夫ですか!?」 すると、スパイダーの手がピクっと動き、マリノを持ち上げるようにして力強く立ち上がった。 「はあ、はあ、ハハ、なんとかな……」 「二人とも無事、だよ」 疲れた声で、二人は笑ってリャンに言う。 それから少しして、リャンは辺りを見回した。 爆発によって見る影もなくなった基地の外壁、折れに折れた森の木々、めくれ上がった地面。 そこに、ガンマのいた痕跡は何一つなかった。 リャンは涙をこらえ、一言だけつぶやいた。 「これで……さよなら……」

第二百三十五話「アクセルとパレット」

イレギュラー発生地点にやってきたアクセル。 ギガンティス島に行けなかった上オペレーターにはパレットがついているので、不満げな顔をしている。 「こちらアクセル、現場に到着しました〜、と」 「なんですかそのやる気のない言い方は!もっとピシッとしてくださいよ!」 「うるさいな!で、敵は何人居るわけ!?」 通信機をはさんで喧嘩する二人に、呆れ顔のエイリアとレイヤー。 ゼロもその場に居たが、彼の神経は何か別のものに集中しているようだった。 「……」 それから、アクセルは瞬く間にビル街を攻撃していた敵のメカニロイドを倒していった。 「へへ、大したことないね♪」 「アクセル、右30メートルの瓦礫に小型メカニロイドが!」 「わかってるってば!うるさいな!」 隠れていた敵を打ち抜こうとしたアクセルだが、昂ぶった感情によって的を外してしまう。 結果、強力な破壊光線をまともに喰らってしまう。 「うわーーーーーーーーーーーっ!!」 「アクセル!? 大丈夫!?」 よろめき、ゆっくりと立ち上がりながらアクセルは何もいわずに小型メカニロイドと周辺の瓦礫を撃ちまくって破壊した。 「はあ、はあ、はあ……くそっ」 その後アクセルの口から出た言葉は、パレットの自尊心を激しく傷つけることになる。 「バカッ!お前がうるさく言うから外しちゃったじゃないか!!!」 「えっ!?」 「わかってたんだよ!あそこに敵がいたことくらい!お前がいわなきゃ当たってたんだ!僕の邪魔しないでよ!」 「そんな……!」 パレットの目に涙が溜まり、何も言い出せなくなった。うつむき、唇を噛み、体を震わせる。 そんなパレットを見て、エイリアが通信機の前に立つ。 「アクセル!いくらなんでも言いすぎよ!大体、さっきからあなたの言動は乱暴よ!? 一体どうしたの!」 「いいじゃないか!本当のことなんだから!」 怒ったエイリアに少し驚きつつも、すぐに返答するアクセル。 その言葉には、普段の彼からは感じられない激しい怒りと憎しみがこもっていた。 「これ以上そんな言動を取るようだったら……ちょっと、聞いてるの!?」 「……回線が切れています」 エイリアが喋っている間に、通信が切れていたことをレイヤーが報告。エイリアは怒って通信機をバンと叩いた。 「ゼロ、アクセルには厳罰を覚悟してもらわなければならないようね!……ゼロ?」 後ろの席に振り向いた時、ゼロの姿も消えていた。 「ゼロまで……なんなのよ!」 「はは、手ェ落ちてら……」 アクセルの足元に、アクセルの右腕が落ちている。 肘から下が、切り落とされたのである。 「貴様の右腕の鎧に通信機があるのがわかった。これで助けは呼べまい」 アクセルに不意打ちを食らわせ右腕を切りおとしたのはヘヴンズロイド・ジュリ。その後ろにはトランプもいる。 「止めておこうよ……」 なぜかジュリを止めようとするトランプをジュリは完全無視し、背中に装着していた巨大刀をアクセルに向ける。 「死ね!弱者よ!」 そして向かってくるジュリに、アクセルは飛び上がって銃を構える。 「だれが弱者だ!!」 「感情に流される者よ!」 ジュリの素顔を隠すアーマーのメットから、光線が放たれる。飛び上がったアクセルに直撃した。 「ウッ……!」 「ハアアッ!」 そして、巨大刀がアクセルに向かって振り下ろされる。見ていたトランプは眼をつぶる。 「ヒャッ!……あれ?」 音がしない。アクセルの断末魔も聞こえない。 トランプが恐る恐る目を開けてみると、そこにはゼロがいた。 「おらあっ!」 強烈な一撃がジュリを後方に吹き飛ばす。そして、アースクラッシュを撃ち飛ばした。 無防備なジュリの体に、アースクラッシュが直撃しようとした……が。 「奇イッ!」 トランプが奇声とともに、右腕を振り上げた。 するとそこからエネルギーが発し、巨大な壁となってアースクラッシュを弾き飛ばしたのだった。 「な……っ!おいおい」 不気味に、ゆっくりとゼロを向くトランプ。 「ジュリには手出しさせない……」 ゆっくりと、光る手をゼロに向ける。 「魏アッ!」 光が無数に分裂しゼロに襲い掛かる。 「はあああああああっ!」 天空覇を使ってそれら全てを叩き落すゼロ。だが、トランプはそれを見ているだけで何もしない。 「トランプ!邪魔をするな!」 「ジュリ……!」 後ろの方で起き上がってきたジュリを見て、トランプは微笑んでゼロに背を向ける。 「この男は私の相手だ。貴様にやらせはせん」 毅然と言い放つジュリに、トランプは怯んで一歩下がる。 「ねえ、もう止めようよ……」 「止めはせん!『アグザビス』に奴の血液を一滴残らず吸わせてくれる!」 そしてジュリはゼロに向かって突進する。必殺の剣『アグザビス』を思い切り振りかぶった。 「はああああっ!」 ゼロも最強剣ゼロサーベルで迎え撃つ。 互いの強力な斬撃音と衝突音が鳴り響く。 「かッ!」 それから、ジュリがアクセルを撃った「レットスパーク」がゼロに発射される。 「っとっ!」 ゼロはバスターでそれを迎撃し、スライディングキックでジュリの足元まで移動、 そして顎に強烈なアッパーを食らわせた。 「くっふ……!!!!!」 「終わりだ!」 「化アッ!」 ゼロサーベルでジュリの腹を貫こうとしたその時、トランプの手から放たれた電撃波がゼロに命中し、動きを封じた。 「チッ!」 「トランプ、よせ!」 「ジュリには手出しさせない!」 トランプはゼロサーベルを奪い取り、どうにか動けるようになったゼロに切りかかる。 ゼロの肩にサーベルが触れた。肩アーマーは吹っ飛んだが、ゼロの左ハイキックが一瞬早くトランプの顔面を捉えた。 ゼロはサーベルを奪い返し、さらにジュリに向けてサーベルショット(サーベルから放たれるビーム)を放ち、吹き飛ばす。 「おのれッ!」 「魏アッ!」 すぐに体勢を立て直したジュリとトランプはゼロに同時攻撃を仕掛ける。ゼロは意外な表情で、手が出ない。 その時。 「ざけんなああああああああっ!」 ドカンと大きな爆発が起き、ゼロ、ジュリ、トランプを爆炎が包み込んだ。 「なッ!?」 「ちくしょお!なんだってんだよぉ!」 爆弾を投げたのはアクセルだった。イレギュラーの持っていた爆弾を拾って投げたのである。 さらに、銃を乱射する。 「あのバカ!」 ゼロはアクセルの腹にタックルを食らわせ、気絶させて持ち上げた。 「今回はこれで終わりだ、またそのうちにな」 「いいだろう、いずれその時が来るのならばな」 ジュリとトランプは素直に帰っていった。ゼロは微妙な違和感を覚えながらも、 アクセルを連れて(右手を拾ってから)ベースに戻った。 「アクセル!何てことに……!」 医務室にて、Xはアクセルの切り落とされた右腕を見て驚嘆した。 「ボクってなんでS級なんだろ、笑っちゃうね」 横になり、生気を失った顔で呟くアクセル。 「アクセルお兄さん、大丈夫?」 リルとライクも心配するが、アクセルは何も応えようとしない。数分の沈黙の後、一言だけ言う。 「ハンター、やめようかな」 その場にいた全員が一瞬、凍りついた。あれほどハンターの仕事が好きだったアクセルが辞めようとまで言ったのだから。 「アクセル君、それはちょっと短気すぎるよ」 アイリスが最初に口を開いた。 「そうよ、あなたはまだ充分やれるわ」 続いてエイリアも励ます。 「……無理ですよ」 しかし、パレットが次に何か言おうとしたレイヤーの口を押さえて言った。 「……なんだって?」 目を見開いてパレットを見るアクセル。 「こんな人にこれ以上戦わせるのは無理です。実力も無い、やる気も無い、こんな人に!」 「なんだと!さっきの仕返しかよ!」 立ち上がって怒るアクセル。しかしふらついて転んでしまう。 「この短期間に3連敗して、大怪我してみんなに心配させて、挙句の果てにやる気なし宣言。 あなたみたいな人にあんなこと言われてショゲた自分が情けないですよ!」 立ち上がれないアクセルに、パレットは震えた声で散々に罵声を浴びせる。 「言わせておけば!この……」 どうにか立ち上がったアクセルは右手でパレットを叩こうとしたのだろうか。肘から下が無くなった右腕が空を切った。 「あ……!」 アクセルの顔がどうしようもなく歪んだ。崩れるように座り伏した少年の顔に、かつての面影は無い。 その時、ドアが乱暴に開いて、壁から外れた。 「右手なくしたんだってぇ!? サイボーグにでもするかぁ?」 「ブラック!」 現れたのはブラックゼロ。この戦いの起こる数日前に山に遊びに行っていたのでこの戦いのことはついさっき知ったらしい。 「ブラック……ゼロ?」 エイリアが名前を呼ぶ。 「え〜と、エイリアだっけか?」 「え……!?」 ブラックに名を呼ばれ、驚くエイリア。名前を覚えてもらえたのか? いや、そうは思えない。 なぜならブラックはレイヤーを見てそう言っているからだ。 「い、いえ、私はレイヤーです……」 少し赤くなりながら訂正するレイヤー。 「そうか? え〜と……ところでお前誰だ?」 そしてお決まり、エイリアに向かってそういうブラック。 「だから私がエイリアだって〜の!」 ブラックはアクセルをベッドに横たえて言う。 「3連敗だって?」 「そうだよ、あんたの指導もあんまり意味無かったね」 「アクセル君!何てことを言うんですか!」 怒るヴァジュリーラ。 「そう怒るなってヴァジュリーラ」 笑うブラック。アクセルは段々、イライラしてきた。 「さ〜て、そろそろ行くか」 ドアを手早く修理して、帰ろうとするブラック。 そのブラックに、アクセルの怒りが爆発した。 「ふっざけんなバカ野郎!あんた何のために来たんだよ!?」 「あ?」 左手に銃を持ち、ふらつく足でブラックの元へ歩くアクセル。 「ムカつくんだよ!わけわかんないことばっかりしやがって!」 「っるっせーな。今日は寝かせろよ。もっと大事な約束があるんだ」 「もっと大事? 弟子がやられたって言うのに……もっと大事ってなんだよ!」 「もっと大事はもっと大事だ!寝てろバカ!」 弱りきったアクセルに向かって、ブラックは何の躊躇も容赦も無くただ思い切り蹴飛ばした。 壁まで吹き飛んだアクセルは、全く動くことが出来なくなっていた。 そこに、リルが割って入る。 「おじちゃん!アクセルおにいちゃんがかわいそうだよ!」 「っと、リルちゃんいたのかよ。踏んづけるとこだった」 そう言ってブラックは、リルをなでてから再びドアを出て行った。 そして、アクセルを寝かせてからゼロたちも全員それぞれの持ち場に戻っていった。 ベースから外へ出ようとするブラック。 「〜♪」 「待ってください」 「あ? お前誰だ? レイヤー?」 「パレットです!」 パレットが怒ってブラックに抗議しにきていたのだ。 「せ、せめて師匠らしいことを言ったらどうですか!」 「ふぁ〜……師匠らしいことだぁ?」 あくびするブラック。 「励ますとか、冷たく言い放つ振りして奮い立たせるとか!いろいろあるんじゃないですか!?」 真剣な目をして言うパレットに、ブラックは軽く口を開く。 「しるか、そんなん。俺は今もっと大事なことをしなきゃならないんでな、あいつに関わってる暇ねーんだ」 「な……!」 思わず絶句するパレットに、ブラックは一言聞く。 「ってかなんでお前そんなにマジなんだよ? アクセルともほぼ初対面だろ?」 「え!?」 パレットは少し赤くなっていた。そして、うつむいてからおもむろに語りだす。 「……以前、イレギュラーから助けてもらったことがあるんです。 だから……ちょっと憧れたっていうか、私もあいつの役に立ってみたいな〜、って思ったような……」 徐々に視線を上げるパレット。 「それに、その時あいつ言ってたんです。『師匠直伝の』……何か技の名前を。 その時、その師匠って人がどれだけあいつにとって強い存在かわかったんです。 だからさっきのあなたが許せなくて……」 「ふ〜ん、初対面でもなかったわけか。ま〜い〜や、俺は俺の約束を果たさなきゃいけないから」 それでも後ろを向いて帰ろうとするブラック。パレットは怒鳴った。 「そんなにそれが大事なことなんですか!?」 立ち止まらず、ブラックは少し振り向いた。 「ああ、大事だ。死ぬほどな」 その目には、何かパレットが生れてはじめてみるような何かがあった。 だが、恐怖や畏怖といった物ではないことだけは確実にわかっていた。 「俺は知ったこっちゃねーや、なんかしたいならお前がやれ!」 その時パレットは感じた。 ブラックは、アクセルを励ますために自分を向かわせようとしていること、 自分以外に今アクセルを励ませる者がいないと気付いていることに。 パレットはブラックにお辞儀して、すぐさま医務室へ走っていった。 ちなみにブラックは、先ほどの台詞を言った時大口を開けて下を蛇のようにチロチロさせて遊んでいた……。 「アクセル!」 「……何?」 目がうつろになって寝ているアクセルの顔を、パレットは元気な顔で覗き込む。 「いつまでボーっとしてるんですか!さっさと右腕治しちゃいましょうよ!」 そういって治療用機械で右腕をつなげようとするパレットに、アクセルは力なく呟く。 「ほっといてくれよ、もう駄目なんだ。武器全部負けたし、変身も通じなかったしさ……」 「……え?」 パレットはアクセルの右腕を持ったまま固まった。 「ちょっと、ちょっと待って、師匠直伝……のあの技は使わなかったんですか?」 「え?」 「あの、ブラックゼロさんから教わった技って言うのは……」 「あ!!」 アクセルは目を見開いて、叫んだ。 最初のガンマ戦の途中から、自分自身を見失っていた 。武器、変身に頼りきりで自身の肉体を信じていなかった。 その結果、武器攻撃や変身さえ力を失っていたことに気がついた。 「そうか……そうだったんだ!」 「ど、どうしたの急に?」 「パレット!ボクもう大丈夫だ!これからは本当の力を見せ付けてやるぜッ!!!!!」 元気良く医務室から飛び出したアクセル。これからの戦いの大きな力になると、自分で気付いていた。 「あ、あの〜……それはいいから、腕治そうよ〜」

第二百三十六話「約束」

彼は、全身に酷い傷を負っていた。 息を切らしながらゆらり、ゆらりと歩くその姿・その表情はどこまでも真剣、 どこまでも苦しく、どこまでも狂っていた。 「つっ」 指先が痛い。背中が痛い。顎が痛い。腹が痛い。胸が痛い。頭が痛い。 彼は自分の手を見た。掌は彼を向き、指をぴくりと動かす。 ぴゅっと血が出た。血だらけの指から、さらに血が。それでも彼は、歩く。 「負けたくねえ……」 彼の名は、ガンマ。 「あいつ、死んでないかもしれないんだ」 「え? どういうこと?」 マリノからの通信を受け、アクセルは目を丸くした。 「あの時さ……」 あの時、マリノがガンマにとどめを刺したはずのあの時である。 「一丁上がり!」 「……!」 ガンマは、右手の親指と人差し指を鳴らした。 すると、ビームクローのエネルギーがスパークし、爆発を生んだのである。 「っ!」 マリノは声も出せぬまま驚異的な大爆発の中意識を失い、 スパイダーと共に地中に埋まってしまったのである。 「ってわけ。だからあいつの死体も見つかってないし、生きてるかもって事さ」 天使の宝珠を見ながら、ドラクトが言う。 「う〜む、宝珠のエネルギーは1人分溜まったはずなんですが?」 「そうだよね、あいつが生きてるなんて……ありえそうだから怖いよ、ハハ」 ガンマは生きていたかもしれない。少なくとも、マリノに負けてはいなかった。 その事実を確かめる間も無く、ハンターベース支部の一つにホイトが現れたと情報が入った。 「またホイトか、ベース荒らしめ」 ホーネックとアクセルが討伐に向かうことになる。 そしてベース支部。 「ホイト!久しぶりだな!」 ホーネックが剣を構えると、ホイトは笑って体内砲を出す。 「ねーねーホーネック、ボクにやらせてよ」 アクセルがホーネックの肩を叩き、前に出る。 「ちょっとは強くなったんだから」 「……」 ホーネックは武器をしまった。アクセルの眼に、それまでに無かった力強さを感じたからである。 (こいつも成長してんだなぁ……) アクセルは拳を固め、足を地に擦らせる。 ホイトは変わらず、体内砲を構えたまま笑っている。 それから、少しの間時が流れる。 「〜♪」 「!」 少しの静寂を破り、ホイトがまたも歌いだした。 「ぞ〜さん、ぞ〜さん、お〜鼻が長いのね」 「だっ!」 そして、アクセルも動く。びゅん、と脚が空を切る音がして、ホイトはそれをすばやくかわす。 「後ろ……」 ホーネックはホイトの背後の壁に気がついた。切れている。斜めに、完全に切れていた。 「アクセルのスピードとブラックゼロの格闘技術があって初めてできるってか、なるほどな」 ホーネックが感心するのもつかの間、アクセルの拳がホイトの顔面を捉えた。 すると、ホイトの右頬が切れていた。 「そ〜よ、かあさんも、な〜がいのよ〜♪」 ホイトも体内砲で反撃する。 アクセルはそれをかわそうとするが、こちらも速いので何発かは喰らってしまった。 「くっそ……ていっ!」 アクセルの右アッパーが高速で放たれる。 「おっとっ」 ホイトはそれを後ろに下がることでかわす。 「へっ!」 アクセルは笑みを浮かべる。左手に銃を構え、ホイトの腹に撃ち込んだ。 「おうっ!」 苦悶の表情を上げるホイト。口から血が吹き出、一気に後ろへ下がる。 「へへん、どうだい?」 ホイトは驚いていたが、ホーネックも驚いていた。 (これがこいつの真価かよ……追い抜かれないようにしないとな) 「ね〜んね〜ん〜ころ〜り〜よ〜おこ〜ろ〜り〜よ〜♪」 歌。またホイトが不気味に歌を歌い上げる。今度は、子守唄だ。 「歌ったからって強くなるわけじゃないんでしょ? 変身!」 アクセルはジャンゴーに変身し、ローリングアサルトで飛び掛った。 「行くニャーーーーッ!」 「ぼ〜やのお守りは、どこへ〜行た〜〜♪」 ホイトの両手が、もう少しで届くはずのアクセルの顔面を捕らえた。 「やべっっ!」 思わずバスターを構えるホーネック。 「あのや〜ま、越えて里へ行た〜」 そして、ホイトはアクセルの顔面を床へ叩きつけ、さらにハンジャックブラストを放つ。 「ぎゅあああああああああああっ!」 「里の〜、土産に〜、なにもろた〜」 「く、このっ!」 歌い続けるホイトに、強烈な回し蹴りを食らわせるアクセル。 ホイトは壁まで吹き飛び、砂煙の中立ち上がりながらまだ歌う。 「でん〜でん〜、太鼓に〜、しょうの笛〜♪」 「しゃ〜ぼんだ〜ま〜飛んだ〜、屋根まで飛んだ〜、 生まれてす・ぐ・に・壊れ〜て〜消〜え〜た〜♪ってのはどうだ?」 アクセルも、ホーネックも、ホイトもその歌に驚いた。 歌っているのは、ブラックゼロ。 「僕が歌ってたんだよ? 邪魔しないでよね」 ホイトが口を尖らせる。 「遊びに来た」 ブラックは一言だけ言い放った。すると、ホイトはにかっと笑う。 「いいよ、それじゃいつにする? 今ここじゃちょっとね」 「ちょ、ちょっと!師匠!こいつは今ボクと闘ってるんだよ!? 最後までやらせてよ!」 アクセルが割って入る。だが、ブラックはアクセルの顔を掴んでギロリと睨みながら笑う。 「俺の遊び相手だ」 「っ!なんだよそれ!弟子だからって言う事聞くと思うなよ!?」 アクセルはブラックの手首を掴み、締め上げようとした。 しかし、ブラックは思い切り腕を振るってアクセルを跳ね飛ばす。 「何が弟子だよ、バ〜カ。そんならもうやめだやめ、師弟終了、破門破門」 指をコキコキと鳴らし、ホイトのほうを向くブラック。 アクセルは意味がわからず、ただ茫然自失としてしまった。 「そんじゃさ、あさっての朝6時でいいかな?」 突拍子も無く、ホイトがブラックに聞く。 「ああ、それでいい」 「決まり!さ、また明後日ね!約束だよ!」 そう言ってホイトは去っていった。アクセルは呆然としたまま。 ホーネックはブラックに言う。 「まさかお前があの歌、歌うなんてな。リルちゃんに頼まれても歌わなかったくせに」 「明後日、死ぬほど遊んでやるぜ……」

第二百三十七話「X対バッファリオ」

ブラックとホイトが遊ぶ約束をしていた頃、Xの元へ一通の手紙が届いていた。 『今、闘いたい。立会いを1人頼む。 フローズン・バッファリオ』 「あれからずいぶん経って…・・・決着をつける気になったんだな」 Xは悲しみと怒りが同居したような顔つきで手紙を握り潰し、顔を上げる。 「誰か一緒に来てくれないか、立会いがいる」 「よし、俺が行こう」 立会い人として名乗りを上げたのは、ゼロ。 二人は手紙に同封された地図を見ながら、指定された廃スキー場へ来た。 「スキー場か、あいつらしい」 ゼロが半ば呆れ顔で、木にぶら下がった縄(首吊りに使ったのか?)をいじる。 すると縄はぶちっと切れ、雪の上に落ちざむっと音を立てた。 「バッファリオ…・・・」 Xは、雪を手にすくってそれを見つめた。昔のことを考えているのか、ゼロも辛そうにXを見た。 その時、雪が降り始めた。同時に、ざくっ、ざくっ、と大きな足音が聞こえる。 「X」 「バッファリオ!」 バッファリオが来た。体中に傷をつけ、Xを激しく睨みつけている。 「綺麗な雪だ……今日はいい日だな」 「いや……最悪だ」 すると、バッファリオの後ろからひょっこりと1人の男が現れる。 「そーだな、最悪かも。綺麗な雪が血で染まるもんな♪」 「なんだお前は?」 「気にすんな、こっち側の立会人さ。あ、そうだ。 ヘヴンズロイドなんてカッコいい名前をつけてくれてありがとう、 って名前つけたやつに伝えといてくれ♪」 「チッ!」 指をチョコチョコ動かしながら、調子をつけて言う男にゼロは嫌悪感を覚えたが、 とりあえずここは放っておくことにした。 そして雪の降りが強くなったその時、戦いは始まる。 「ハイパーモード……Xファイア!」 Xコレダーがバッファリオの顔面に直撃。 しかし、バッファリオはたじろぐことなくXの右腕を握りに掛かった。それだけ巨大な手なのである、 「うぅっ!?」 驚くXに、バッファリオはあくまで冷静。 そして腕を持ったままぶんぶんと振り回し、Xを降り注ぐ雪に付着させていく。 それを見たゼロと男は、同じ結論に達する。 「Xを雪まみれにさせて……?」 「氷付けッ?」 雪にまみれたXに、バッファリオはボディプレスをかける。 その圧力に、Xについた雪は一気に固まり右腕を残して氷となった。 「……!」 「フンっ!」 バッファリオの角から放たれた光線が残りの右腕を襲う。 しかし、Xはその瞬間腕を地面の雪の中に突っ込んだ。 「?」 男は不思議がったが、ゼロは余裕の表情になった。 Xは無理矢理に体重を右腕に預け、倒れこむ。 それによって、冷凍波は氷にのみ当たったのだった。 「チャージコレダー!」 Xは氷を全て弾き飛ばし、そのまま雪の中でチャージしたコレダーをバッファリオの胸に叩きつける。 バッファリオは上空へ吹き飛び、雪を突き破り下の地面まで突き刺さった。 「……やるな」 バッファリオが起き上がったとき、Xは元の姿に戻っていた。 「バッファリオ……決着をつけよう」 Xの表情は激しく、心は熱く燃えている。 ゼロはそんなXの表情に、今までに無い力強さを感じた。 「X……」 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」 Xはバッファリオの眼前までダッシュし、懐に飛び込んだ。 「くっ!」 攻撃の死角に入られたバッファリオは、後ろへ下がって距離をとろうとする。 しかし、Xは上手く食いつきながら脇腹や腕のアーマーに連打をかける。 「何度も攻撃してアーマーを破壊する気か? いや、貴様がそんなつまらん手に出る訳が無い!」 バッファリオが言った途端、Xの蹴り上げが顎を襲う。 「ならばこうだ!」 「!?」 蹴りが来る寸前、バッファリオは顎に氷柱を発生させてXの脚を刺し貫いた。 「っ!」 「はああっ!」 氷柱を折り、バッファリオはXを投げ飛ばす。 そして、以前Xを氷付けにした冷凍光線を放つ。 「凍れ!」 「おおっ、冷凍波〜〜!」 「X!」 「ぃやあああああああああああああっ!」 Xのバスターから、巨大な光球が飛び出した。 「はっ!? あんだありゃ!?」 驚く謎の男に、ゼロはクスっと笑った。 巨大光球は冷凍波を弾き飛ばし、バッファリオに直撃した。 「ぐふぅ!……なんだこの技は!」 「イーティング・ファング!」 さらにバスターから巨大な、牙でできた入れ歯のようなものが飛び出しバッファリオに噛み付く。 「ぐっ!な、なんだ、この技……まさか特殊武器!?」 そう、巨大光球と牙はそれぞれザイネスとギドロの戦闘データから作った特殊武器だったのである。 Xは人知れずパワーアップし、子の戦いに備えていたのだ。 また、光球の名前は「ブリッツプラネット」である。 「なるほどな、流石だX。しかし、お前は俺には勝てん」 そういってバッファリオは拳を固め、前に突き出した。 すると突然、降っていた雪がすべて氷弾となってXに襲い掛かる。 「!?」 「バーストブリザード、俺の新しい特殊武器だ!」 この技は、広範囲にわたる外気の水分を結晶化させ雪にし、さらに氷弾にして打ち出す技。 この雪はバッファリオが降らせたものだった。 「どらーーーーーーーーーっ!」 氷の拳『ブリザードナックル』がXの体にさらに威力をぶつける。 Xはまたしても吹っ飛び、スキー場の滑車面にまで行ってしまった。 「逃がさん!」 バッファリオはXを追い滑車面まで跳んだ。ゼロと謎の男もそれを追う。 「たあっ!」 バッファリオはスキーのように滑ってXに突進した。Xは声を上げてぐるぐる回転しながら横に吹っ飛ぶ。 「次はこれだ!」 今度はフロストシールドを放つ。 Xもバスターでそれを破壊していくが、隙をつかれて冷凍波をかけられそうになる。 「まずい……!こうなったら!」 Xは、思い切り息を吸い込んだ。 「Xのやつ、何を?」 「何考えてんだ?」 ゼロと男が不思議がると、Xは一気に息を吐き出した。 「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ オオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 その瞬間、雪崩が起きた。 「んのバカ!」 ゼロと男は同時に叫び飛び上がった。 ゼロはXを助けたかったが、1対1の勝負にそれはできない。Xはバッファリオと共に雪に飲まれていった……。 それから数分。ゼロと謎の男は辺りを見回してそれぞれXとバッファリオを探していた。 「クソ、これじゃあみつからねえよ」 男は雪をかき分けながら文句を言う。 「フン、お前が仲間を探すなんて思わなかったぜ」 ゼロは男をジロリと見て言う。 「ベーだ」 男は、アカンベーで返事した。 「イーだ」 ゼロは、イーっと白い歯を剥き出しにした。 その時、地面が揺れた。 「なんだっ!? Xか!?」 「あだーーッ、舌噛んだ!」 男は舌を出していたため、噛んでしまった。 その頃、地中(雪の中だが)ではXとバッファリオが激突していた。 「バッファリオ!どうしてお前はまた生き返った!」 「俺に命をくれたあの方のためだ!」 「違う!お前は自分の生きたいと思う気持ちに正直になっただけだ! 命をくれたからなんて理由でこんな悪事に手を貸すはずがない!」 雪を掘りながらの攻撃は、どちらも全くと言っていいほど効果の無いものであった。 それでも互いに攻撃を続ける二人。もはや闘うことでしか通じ合えない、 そんな二人が取れる唯一の行動だった。 「俺は……俺は!」 バッファリオの拳がXを捕らえる。しかし、Xはバスターですぐ脱出し後方へ潜った。 その時、バッファリオが一瞬だけ安堵の表情を浮かべる。 「俺が話せるのは……死ぬときだけか……」 「わかったよ、バッファリオ……戦いが終わらなければ話が出来ないというのなら…… 話すために倒されたいのなら……これで終わらせる!」 Xはイーティングファングで自分のバスターに傷をつけた。そして、そこから電流を流す。 「うおおおおおおおおおーーーーーーーーーー!」 「ぐあああっ!で、電流か!」 雪も、氷も、水と同様電気を通しやすい。バッファリオと共に生き埋めになった理由はこれだった。 「グヌぬぬぬヌゥ……」 しかし、これはXにとっても危険な攻撃。互いに電流を浴び、所々アーマーが壊れ始めていた。 「な、なんだ!?」 足元から電流が来るのを感じ、ゼロと男は飛び上がった。 「だっ!」 それからXも、雪から飛び出てきた。最強の鎧、アルティメットアーマを装備して。 「ノヴァ・ストラーーーーイク!」 体中から滑車面に向けてエネルギー波とミサイルを乱射する。 雪は解け、火柱が立ち、地面も穴だらけになっていく。 「あの野郎、マジヤバイぜ」 「X……」 ゼロは歯を食いしばってXを見た。 Xの眼から、涙が流れていた。 その直後、Xはクールダウンして元の姿に戻り地面に落ちそうになった所を エアダッシュでさらに速め、上手く着地した。 「バッファリオ……」 「ブオオっ!」 突然、巻き上がる煙や水蒸気の中からバッファリオが現れて 氷段入りの突風を巻き起こしXを真上に吹き飛ばした。 「死……」 「エクスプレッド・インパクト!」 バッファリオが次の攻撃に移ろうと言うとき、 Xはイルアの特殊武器、エクスプレッド・インパクトを放った。 バッファリオの顔面に火がつき、燃え盛る。 「ぶぅもオオオオオオオッ!」 「お、おわ……る、か?」 Xの体は限界だった。血が出すぎ、雪も男が言ったように真っ赤に染まっている。 「頼む、終わってくれ……」 「クッ!」 「!?」 バッファリオは自分の顔に氷を張り巡らせることによって炎を鎮圧した。 「ふ、ぶう、はああっ!」 そして再び氷の拳を作り出し、構える。 「バッファリオ、お前まだ……」 「まだまだ終わら……な」 バッファリオの顔が、突然力を失った。口が開き、目は虚ろ、肌は真っ青。そして、突然脳天から血ガ吹き出た。 「ど、どうしたんだ!?」 ゼロも驚く。 「な、み、だ……!?」 男も驚いていた。しかも、何かわかっているようである。 「ば、バッファリオ!? どうしたんだ!?」 「負けた、X」 バッファリオはゆっくりと倒れ、血を吐いた。その表情は安らいでいる。 男はゼロがいることも忘れたように、独り言を言う。 「あいつの流した涙が空中で凝固し、フローズンの突風で巻き上げられたうえにより鋭い氷になり、 かなりの高度から落ちてきて奴の体をブッ貫いたってわけか、ったく、こんなので終わりかよ」 そう言って、そのまま飛び上がり逃げていった。 そして、Xは夥しい血と涙を流しながらバッファリオの最期を看取る。 ゼロも、一歩引いた場所から辛そうにかつての友を見守る。 「どうして生き返りたかったのか、わからないんだ」 「え?」 「ただ、あのお方に再びこの世でチャンスができると言われて、無性に生き返りたくなったんだ」 「バッファリオ……」 「もしかしたら……お前らに、会いたかったのかも……な」 「バッファリオ!」 Xはバッファリオを抱きかかえた。かつての友、今の友、未来の友を。 「最後に言っておく。俺たちヘヴンズロイドのリーダー、それは……」 ーメフィストフェレス・リゼルグー 「X……最後にい、わせ、、て、、く……れ。は、あ・り・が・と・う…… お前の涙が……す、く、って、ク・レ・た……」 バッファリオの体から天使の宝珠のエネルギーが沸きあがり、空へ飛んでいった。 「バッファリオ……ありがとう……」

二百三十八話「大事な約束(おあそび)」

約束の日が来た。ブラックゼロと、ホイトの。 午前六時、二人は公園で対峙する。 その場所には、草むらに隠れるアクセルとパレットの姿もあった。 「師匠……じゃなかった!あいつ、こんな所で戦う気なのかな?」 「それよりどうして私がついてくることになったんですか?」 「いいじゃん別に、ヒマだろ?」 「ヒマじゃないです!」 「あ、来た!静かに!」 二人はできるだけ体が隠れるようにしゃがんだ。 そして、恐る恐るゆっくりとやってきた人物を見ると、黒いTシャツ黒いズボン、 黒い靴に黒いベルト、そして流れる長い黒髪の、鋭い笑顔の美青年。ブラックゼロが現れた。 「〜♪」 「し、私服?」 「アーマーもつけずに一体どうして……!?」 二人が不思議がっていると、もう一人もやってきた。 白いYシャツ、白いズボン、白いベルトに白い靴、そして白いピアスに真白い髪、 さわやか笑顔の美少年。ホイトがやってきた。 「やっ♪」 「おう、来たな。つっても、俺も今来た所だけどな」 そういって、二人は何も言わずに歩いて公園を出た。 アクセルとパレットは顔を見合わせ、数回瞬きをしてから思い出したようにハッとして二人を尾行する。 「あいつら、何考えてんだ?」 「まるで今からお散歩に行くみたいです!」 パレットの言った事は当たっていた。 少しは春らしくなってきた陽射しの下、ブラックゼロもホイトも辺りを見回し笑いながら歩いている。 そして、町まで出た二人はコンビニでチョコレートやキャンディーなどのお菓子を買い、食べながら歩く。 「見て、ホラ」 町外れに差し掛かって、ホイトはコンビニ袋からシャボン玉セットを取り出してそれを吹いた。 すると、色鮮やかな無数のシャボン玉が魔法のようにすぅ〜〜っと飛び出す。 ブラックゼロはそれを見て笑った。 「ハハッ、俺にもやらせろよ」 「し、師匠が笑った……」 呆然とするアクセルに、パレットは笑う。 「あれぇ? 『師匠』はやめたんじゃなかったですかぁ?」 「ぃ!? う、うるさいよ! ただちょっと前の癖で言っちゃっただけさ!……それにしてもあんな笑顔をするなんて……」 アクセルの表情は、驚きながらもどこか哀しそうに見えた。 「師匠、じゃなくてあいつがあんなふうに笑うの初めて見たよ……」 「ほら、でかいの出たぞ♪」 「わっ、すご〜い!」 ブラックが大きなシャボン玉をだし、ホイトは子供のように大はしゃぎ。 それを見た町の人々(朝なのでそれ程はいないが)は微笑ましく見えたのかクスクス笑っている。 「ってと……そろそろだな」 数歩前を歩いていたブラックゼロは180度回転するかのようにすばやく、後ろのホイトの方を向く。 「うんっ♪」 ホイトが応えるや否や、ブラックゼロの姿が消えた。 「!?」 突風。周辺の空気が弾き飛ばされ物体を吹き飛ばし、または破壊する。 「始まった!?」 アクセルは戦いが始まったと思い身構えた。ホイトも慌てた表情を見せる。 「ちょっ、ずるいよ!」 その瞬間、ホイトも姿を消す。先ほどと同じような突風が巻き起こり、 それらの突風は進行方向を同じくして飛んでいく。 「ば、場所を変えたんだ!一体何処へ!?」 アクセルは二人を見失わないよう、ダッシュで追う。 しかし、超スピードで動く二人をなかなか見つけることが出来ない。 「どうでもいいんですけど……私は置いてけぼりですかぁ!?」 突風がやんだ。その場所は、繁華街の映画館。 「え、映画!?」 「ホラ、この時間でもやってるんだぜ」 「ホントだ!昔はせいぜい9時からだったのに」 ブラックゼロとホイトは、映画館へ入っていった。 「い、一体何やってるんだ!? これじゃまるでデートじゃん!」 納得の行かない顔をしながらも、アクセルは二人をつけて中へ入っていった。 9:40分 映画が終わり、二人は出てきた。 「面白かったね、『火苦賭の剣』!」 「ああ、かなり人気もあるらしいぜ」 「さ〜てと、次は何処へ行こうか?」 「おい、見ろよ。ゲーセンあるぜ」 ブラックゼロがゲーセンを指差すと、ホイトは眼を輝かせて飛び跳ねる。 「わあっ!僕行ってみたかったんだよゲーセン!早速行こう!」 「こ、今度はゲーセン!? 何考えてんだよ……サラーさんの敵で、 しかもボクの戦いの邪魔をしてまで約束してたってのに……」 それから二人はシューティングゲームやUFOキャッチャーなど、様々なゲームを楽しんだ。 中には100年前のレトロゲームもあり、ホイトはそれにはまってしまった。 「あ〜〜〜また負けた〜〜〜!」 「あ、もう100円ねーぞ」 「両替しよう、両替!」 「駄目だ!まだやることはあるんだからな!」 「ちぇ〜、ケチィ」 「ウッセーバカ」 13:00 二人はレストランに入り、それぞれ「ブラックカレー」と「ホワイトシチュー」を注文しそれを食べる。 アクセルは金がなかったので水を飲みながら(店員に睨まれながら)二人を監視する。 その表情にはとにかく苛立ちが溢れる。 「あの二人、いつまでああしてんだよ!」 「アクセルさん、こんな所で何を?」 「イッ!? あ、わ、レイヤー!」 アクセルの後ろに、いつの間にかレイヤーが立っていた。 「レストランで注文もせずにお水だけ飲むなんてマナー違反ですよ? アクセルさん」 「い、いいから!ちょっと黙ってて!」 「いいもなにもないでしょう、アクセルさん」 やたらと『アクセルさん』を連発するレイヤーに、アクセルはあせりまくる。 「ん? アクセル?」 ブラックゼロはその言葉に気付き、アクセル達のいる方向を見た。 しかし間一髪、アクセルはレッドに変身し(レッドとブラックゼロは面識が無いので)、難を逃れたのだった。 「……気のせいか?」 「人違いじゃない? あの子がこんな上品なレストランに来るとも思えないしさ」 (あ、あのヤロっ!今度覚えてろ!) アクセルは逃げるように店を出た。 14:30 二人は遊園地にやってきた。 「わあっ!ここ来てみたかったんだ!」 飛び上がって喜ぶホイト。 「こんどリルちゃん誘って来てみるか……」 ブラックゼロも見回しながら楽しそうに言う。 「これたら、だけどね♪」 それから二人は3時間、遊びまくった。 メリーゴーランド、ジェットコースター、オバケ屋敷、コーヒーカップなどなど…… 12時間も引っ張られたアクセルは、とうとう限界だった。 「ハァ……帰ろ」 トボトボと帰っていくアクセル。どうせ、遊園地に入る金もないのだ。 3時間も入り口付近で待つんじゃなかった、と落ち込んでしまっていた……。 17:50 「ヘヴンズロイドがいるぞっ!!!」 大きな叫びの直後に、一目散に逃げていく人々。 ヘヴンズロイド・ホイトの存在を知り係員など関係者も全員、逃げていった。 遊園地に残ったのは、ホイトとブラックゼロのみ。 「効くな〜、ヘヴンズロイドって」 「なにしろ今、一番危険だもんね♪ ちょっと前に話題も減っちゃったけどさ、昨日のフローズンのことでまた問題視されたみたい」 叫んだのは、ブラックゼロとホイト本人であった。 無人となった遊園地で、正面を向き合い対峙する。 「さ〜て、はじめるか。メインディッシュ」 「そーだね、最高の遊び、始めようよ」 次の瞬間、サイボーグデーモンと体内砲を展開した超戦士二人が、互いの肉体を破壊にかかっていた。

二百三十九話「さよならしゃぼんだま」

  ーしゃぼんだまとんだやねまでとんだー 「うおがあああああああああああああああっ!」 ブラックゼロの口から真っ黒な闇のエネルギー弾が放たれる。 ホイトはそれを上手くかわし、ハンジャックブラストの一撃を見舞う。 ブラックゼロは仰向けに吹き飛び、次のニードロップも直撃された。 「ぐっ!」 「いやぁああっ!」 間髪いれずにホイトの一撃、トゲの飛び出した肘による一発がはいる。 ブラックゼロの腹に突き刺さったヒジトゲは、一瞬にして赤く染まった。 「ほっぺたっ!」 ブラックゼロの右頬から電撃弾『ほっぺたプラズマ』が放たれ、ホイトの右胸と顔面に直撃。 「アジっ!」 さらに強烈なハイキックが左即頭部に直撃し、ホイトは上空へ吹き飛んだ。そこへブラックゼロの『ファイナル・テンフィンガー』が放たれる。 「あっぶっ!」 ホイトは体内砲から全身を包むバリヤーを張り攻撃をしのぐ。 だが、その直後に来たブラックゼロのカカト落としは防ぐことは出来なかった (直接攻撃には対応できないバリヤーだった)。 「だあああああっ!」 がつん、がつんとホイトの頭を地面に叩きつけるブラックゼロ。 頭蓋骨とコンクリートが何度も衝突し、コンクリートは砂のようになってしまった。 「ふっ!」 そうして出来た『砂』をホイトは思い切り吹いた。するとその砂は舞い上がり砂嵐となる。 「キッ!」 ブラックゼロは右目のスコープでホイトをサーチし、探し出す。 そして右目から赤い光線『スコープアイライザー』を放ち攻撃した。 「うわっ!」 ホイトの叫び声がした。しかし、ホイトはその瞬間、既に攻撃に移っていた。 それは、まずハンジャックブラストのエネルギーをコンクリート砂それぞれにかぶせ、 それにふたたび息を吹きかけ吹き飛ばすことによって無数のエネルギー粒子をブラックゼロに飛ばすこと。 「グああああああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああ!」 超強力な、分散されたエネルギーが一斉に、全身に『衝突』し、ブラックゼロの体に甚大なダメージを与えた。 「やああっ!!!」 そしてホイトの強烈なキック。 ブラックゼロは20メートル上にある観覧車のゴンドラまで吹き飛ばされた。 さらに、ホイトはブラックゼロのいるゴンドラまでジャンプで飛び上がった。 そしてジャンプキックを食らわせ、観覧車の鉄骨にめり込むほど深く殴りつけた。 めこ……という音が鈍く響き、それからホイトの高速ラッシュがブラックゼロを襲う。 「だああっ!」 ブラックゼロも反撃に出るが、ホイトの攻撃はとまらない。 「うららららっ!」 「ふんっ!」 19:20 ホイトのラッシュに頭突きが加わったその時、全高300メートルもある観覧車が一気に崩れ落ちた。 ブラックゼロに集中して攻撃していたため観覧車へのダメージは少なかったのだが、 ブラックゼロの反撃とこの頭突きが観覧車に衝撃を与えたようである。 「うるぁあああっ!」 ブラックゼロの怒りの一撃がホイトの腹に直撃し、今度はコーヒーカップへ落ちた。 「だああああああっ!」 ぐるぐる回るコーヒーカップ上の戦い。 遠心力で強化された回し蹴りが当たったり、思わずバランスを崩して転んだり、 床の動きのせいで技をかわされたりとハプニングが続く。 「だっ!」 ブラックゼロのアースクラッシュがコーヒーカップの半数以上を破壊した。 しかしホイトはそれをかわし、空中からハンジャックブラストを撃ち込む。 「ぐああああああああああああああっ!」 「もう一発っ!」 「かっ!」 ホイトは着地と同時にもう一度ハンジャックブラストを撃った。 が、ブラックゼロは一瞬早くブラックディスティニアを放っていた。 「ぎゃあああっ!」 ハンジャックブラストを外し、思い切り後ろまで吹っ飛んだホイト。 倒れている所で、まるでサッカーボールのように顎を蹴り飛ばされてオバケ屋敷の中へ飛び込む。 「づっ!」 21:01 不気味なオバケ屋敷の中、戦いが続く。 ゼロサーベルで攻撃するブラックゼロに対し、 ホイトも掌の体内砲から『ラストセイバー』と言う光剣を出して反撃する。 「てぃっ!」 さらにホイトの眼からの怪光線『スラストショット』が。 「だっ!」 ブラックゼロもスコープアイライザーで対抗する。 威力的にはスコープアイライザーが上だが、右目からしか撃てないため互いに左目を撃たれてしまった。 「いっ!」 「うっ!……このっ!」 ブラックゼロは肩から煙幕を放出。 サーチ機能も使い物にならなくなる特殊煙幕のため、互いに位置が把握できなくなる。 21:11 「どこだ!?」 ホイトは左目を抑えながら、右手の体内砲を乱れ撃ちする。そこに、誰かの影が。 「そこかっ!?」 しかし、そこにあったのは作り物のゾンビ人形だった。 「くっ!違う!」 「違くねえ!」 そのゾンビ人形の後ろからブラックゼロの声がしたと思うと、 ゾンビの後頭部から顔面を突き破るようにしてブラックゼロのパンチがホイトの顔面を捕らえた。 「うわああっ!」 たじろぐホイトに、ブラックゼロのサーベルが唸る。 かわされるため決定打にはならないが連続で体を切り裂き、さらに蹴りで吹き飛ばした。 「い、く、ぜっ!」 さらに追い討ちをかけようと走るブラックゼロ。 「だあああっ!」 そこに、体勢を立て直したホイトの両掌から必殺技『マホライカノン』が放たれる。 「うおおおおおおおおおおおおっ!?」 ブラックゼロはオバケ屋敷から再び観覧車(跡地)まで吹き飛ばされてしまった。 23:45 すっかり真夜中である。 「もうかよ……」 「もうだねっ!」 ホイトのトゲエルボードロップ。 だが、ブラックゼロはジャンプでホイトよりも高くジャンプし、顔面を蹴りつけた。 「ぐっ!」 「うるぁっ!」 さらに右脚をとって、思い切り締め上げる。 「ぎあああああああああああああっ!」 その締め上げは、ホイトが膝の体内砲の存在を思い出す1時間後まで続いた。 0:47 ホイトは左脚だけで充分に立っていたが、ブラックゼロの攻撃を裁くのは難しい。 強烈な一撃、一撃を喰らうたびに血や体液、時には肉片も飛び散る。 「やられっぱなしじゃ……」 「なぃっ!」 ホイトの全身が突然発光した。体内からエネルギーを爆発させる『エナージョン・ボム』である。 ブラックゼロは吹き飛ばされ、ジェットコースター乗り場に落ちる。 「だっ!」 「くっ!」 ホイトは両足でブラックゼロを踏みつけにかかったのだが、 ブラックゼロは足を揚げ、ホイトの脚にあわせることでそれを止める。 最後に、ジェットコースターまで投げ飛ばした。 「……!?」 すると、ジェットコースターがその衝撃で動き出した。 乗ってしまっていたホイトは慌てて降りようとしたが、ブラックゼロはそれを許さなかった。 「はあああああああああっ!」 ブラックゼロはジェットコースターの最後尾車両を抱え、思い切り投げ飛ばす。 ホイトはコースターごと休息施設に突っ込んだ。 そこに、ブラックゼロが飛んで来る。 「うららららっ!」 指からバスター弾を連射するブラックゼロ。 ホイトはそれを数発喰らいながらも、体内砲を連射してそれを全てブラックゼロに当てた。 「っ!?」 「今だっ!」 必殺のマホライカノンが再び、たじろいだブラックゼロに直撃した。 AM1:20 「んのっ!」 さらに戦いは続き、ブラックゼロのブラックホールバーストがホイトの顔面に直撃。 「でいやぁっ!」 ホイトのスラストショットがブラックゼロの右膝に命中した。 「っ!」 バランスを崩したブラックゼロに、ホイトの容赦ないミドルキックが炸裂する。 「がっ!」 「どりゃああっ!」 さらに、右目スコープに親指を無理矢理ねじ込む。 スコープの外壁部分は破壊された。 「っだあああっ!」 苦しむブラックゼロに、強烈なアッパーが入る。さらにハイキック、ハンジャックブラスト。 「るああああああああああああああっ!」 最後にマホライカノンが直撃。 「があっ……」 黒コゲになったブラックゼロは、鏡の迷路の入り口前に倒れた。 「く……」 そこに、ホイトのダブルニードロップが入る。 「がっ!」 思い切り血を吐くブラックゼロの開いた口に、ホイトは思い切り右蹴りを叩き込んだ。 「グボっ!」 「はああああああああああああっ!」 その状態で、体内砲と左脚での連打顔面踏みをするホイト。 ブラックゼロの首から上は、滅茶苦茶な傷や血で埋め尽くされた。 「で……やっ!」 AM3:13 しかし、それでもブラックゼロは終わらない。 ダークジェネシスで前面を一気に吹き飛ばし、ホイトを捕らえて鏡迷路へ叩き込んだ。 「ぐっ!」 さらにブラックゼロも迷路へ入る。 鏡を殴り、叩き割る。 ぱりん、ぱりんと鏡が割れ、その中の破片はいくつか傷口に突き刺さった。 「いねえ!」 ブラックゼロはホイトを見失い、辺りを見回す。右目スコープは既に破壊されている。 「こっちだっ!」 突然ホイトの声がした。ブラックゼロが後ろを振り向くと、 天井を支える棒を利用して鉄棒の逆上がりの要領で(足を使っているが)、 鏡を割りながらホイトが現れ、ブラックゼロを上に向かって吹き飛ばした。 ブラックゼロは体から血を一気に流しながら天井と屋根を突き破って上空へ舞った。 そしてそれを追い、ホイトも飛ぶ。ブラックゼロは動けず、ただただホイトを睨んでいた。 「せいやっ!」 そしてホイトはブラックゼロを抱え、スープレックスの体制に入る。 動けないブラックゼロを頭から落とそうと言うのだ。 ひゅん……という空気を切る音がブラックゼロとホイトの耳に入る。 その刹那、ブラックゼロの脳天は割れた鏡の上に落ち、地面に突き刺さった。 「と・ど・め・いくよっ!」 そして、最後のマホライカノン。ホイトは光線を撃ち続ける。 二時間以上も巨大なエナジーが遊園地を包み込んだ。 周りの町は光に照らされ、輝いた。 AM5:40 「おわった……かな?」 「おわりゃしねえよ」 ブラックゼロはまだ立ち上がる。全身に膨大なダメージを負っているにもかかわらず。 「俺を倒せる奴は1人しかいねえ」 「1人……君に良く似たあの人のこと?」 「ああ、あいつだけさ。ま、勿論勝つ自信あるけどな」 言葉と同時に動く二人。ブラックゼロのゼロサーベルがホイトの右肩を貫いた。 「ぐ……っ」 「うらっ!」 エネルギーを貯めた拳によるアッパー、そして、顔面への膝蹴り、首へのチョップ。 「くっ!」 ラストセイバーで反撃しようとするホイトだが、ゼロサーベルによって右腕を斬られ、 (切り落とされたわけではない)セイバーが消滅してしまう。 「嘘……」 「だあああああああああっ!」 そして、最後の一撃。ブラック・ディスティニアがホイトを吹き飛ばした。 ホイトは何度も地面に落ち、そのたびにバウンドして舞い上がった。 そしてそれが終わる頃、ブラックゼロの最後のサーベルによる一撃が左胸を貫いた。 「あ……っ」 「終わりの時間だ」 「そっか……終わりかぁ」 AM 5:50、朝日とホイトの眼から出た一滴の涙によって半日の長く短い戦いは終わった。 二人は、戦いを始めた遊園地の中央部で向き合う。 「楽しかったね、24時間」 「ああ、あと10分あるけどな」 「うん、あと10分、話そうよ。……あ、そうだ。まだ僕たち、名前も言ってなかったよね」 「そうだったな……俺の名前はブラックゼロだ」 「えっ?」 驚いた顔をするホイトに、ブラックゼロも驚く。 「どうした?」 「いや……僕の名前、ホイトって呼ばれてたけどホントは『ホワイトラスト』っていうんだ…… なんか、対極的な名前だな、って」 ブラックゼロとホワイトラスト。 黒と白、始まりと終わり。 この偶然に、二人はそのまま素直に驚いた。 「思いっきり、逆だな」 「ホント、ビックリだね。運命とか言うのかな」 互いに息をつき、見詰め合う。 「……会えてよかったよ」 ホイトは笑ってそう言った。 「あれから……5,6年か?」 「そうだね、多分。実は僕、友達いなくてさ。君と一日中遊びたいなって思ってたんだ、あの時」 「ああ……しゃぼん玉、楽しかったな……しゃぼんだまとんだ、やねまでとんだ、 うーまーれーてーすーぐーに……こ・わ・れ・て・き・え・たー♪ってな」 第三十四話を思い出して欲しい。 ブラックゼロが作られた「X2」の時代、彼が出会い、しゃぼん玉で遊んだ少年を。 その時、少年はシグマに殺されていた。その少年がホイトことホワイトラストだったのだ。 彼は、初めて出来た友達・ブラックゼロと1日中遊びたいという願いでこの世にやってきていたのであった。 ブラックゼロは、ハンターベースのデータですぐにホワイトラストの正体に気付いていた。 そして、その願いにも。 1日中、最初の半日は普通の若者が好む遊び、そして後半は自分たちにとって最大の楽しみ・闘い。 それによってホワイトラストの願いをかなえたのだった。 そして、ホワイトラストの宝珠エネルギーを解放する役を自ら背負ったのである。 「あ、最後に言っとかなきゃ」 「ん? なんだ?」 「実は歌詞を間違えてたんだ、シャボン玉」 「え」 「『しゃぼんだまとんだ やねまでとんだ うまれてすぐに こわれてきえた』じゃなくてさ、 『やねまでとんで こわれてきえた』だったんだ、間違えて教えちゃってゴメンね、ハハ」 「ああ、一生忘れねーよ。じゃーな!」 「うん、さよなら!」 廃墟と貸した遊園地を、ブラックゼロは後にした。 1人残ったホワイトラスト。 宝珠のエネルギーが完全に無くなり、主を失った肉体は両手を挙げて笑っていた。 市民を逃がすことに夢中になっていたハンターたちがそれを見つけたとき、その死に顔に安らかさはなく、 今、最高の幸せの中にいるような表情だったという。 AM 7:50 ブラックゼロがハンターベースに戻ってきた。 「うわっ!? ど、どうしたのさそのカッコ!」 アクセルが飛びつくようにブラックゼロを見る。 「休ませろ、寝てねーんだ」 「ゼロ……」 「おじちゃん……大丈夫?」 「ああ、大丈夫だよ……」 心配するリルとサラーに目もくれず、仮眠室に入ろうとするブラックゼロ。 「師匠!」 そこにアクセルが叫んだ。 「心配してくれてるんだからさ、もうちょっと言う事あるんじゃないの!?」 「いいの、アクセルお兄ちゃん……」 「仕方が無いんだ……今はそっとしておこう」 「何でっ!」 「だって……」「ゼロが……」 「「泣いてる……」」 「しゃぼんだまとんだ、やねまでとんだ」 ブラックゼロが歌った。一歩一歩、仮眠室に歩きながら。 「やねまで……と、いや……『うまれてすぐに、こわれてきえた』……」   ーかぜかぜふくな しゃぼんだまとばそー

二百四十話「妨害」

「何でお前が出て来るんだよ」 「……」 データ上、最初に現れたヘヴンズロイドは残り二人。トランプとジュリである。 そのジュリから、ゼロに対し挑戦状が叩きつけられるという事態に相成った。 そして、ゼロはその場所へ向かう途中の廃墟でトランプの奇襲を受けていた。 「ゼロさん……お願いがあります」 「なんだ?」 「ジュリと会わないで」 「あ?」 トランプは涙目でゼロに頼み込む。しかし、ゼロはサーベルを構えて叫ぶ。 「ふざけんな!挑戦してきたのはそっちだぜ!」 「でもっ!」 トランプが言い終わらないうちに、ゼロはサーベルを振りかざして突進する。 「奇ィっ!」 トランプの奇声と同時に、以前と同じく光の壁がゼロの攻撃を防ぐ。 「それがあったんだったな!」 ゼロは壁蹴りでそれを乗り越え、再びトランプの眼前に立つ。 「えっ」 トランプが動揺した。その一瞬の隙を突き、 ゼロのアースクラッシュのエネルギーを込めたパンチが腹部に直撃する。 「げぼぉぉぉ!」 「早期決着で悪いけどな……」 血を吐いて倒れこむトランプを尻目に、飛び立とうとするゼロ。 「ゲオ、ご、ごほっ!」 「じゃーな……」 「業ッ!」 ズドンという轟音と同時に、ゼロは背後から巨大な力で吹き飛ばされた。 「ば、爆発……!?」 「魏アアアアッ!」 ゼロが立ち上がるや否や、手から光の弾を拡散し発射するトランプ。 「チッ!」 光の弾をゼロバスターで弾き飛ばし、バスターをチャージしながらトランプに近づいていく。 「業ッッ!業ゥ!業ぅう!」 ゼロの目の前で巨大な爆発が起きる。 ゼロは爆風から逃れるようにすばやくかわし、なおもトランプに接近しつづける。 「どうした!? その程度の爆発じゃ俺は倒せねーゼ!」 ゼロは、大きな爆煙にまぎれてバスターを撃とうと考えていた。 のだが、トランプは突然黙った。 「!?」 「……」 黙ったまま動かなくなるトランプ。しかし、かすかに声が聞こえる。 「……わかってるよ……」 「なんだ?」 「わかってるよッ!」 トランプがゼロに向かって突然殴りかかってきた。 「なッ!?」 これまで奇声とともに発される技で攻撃してきたトランプに、ゼロは驚いて攻撃できなかった。 「ぅくっ!」 顔面を思い切り殴られ、後ずさるゼロ。 (痛ぇ、)(徒手!)(怒りッ?) いくつかの思いが交錯し、気がつくとフルチャージバスターを放っていた。 「しまっ……!」 「奇ィィィィィィィッ!」 トランプは壁を作り出した。普通の壁ではなく、とてつもなく長い壁。 これを壁といえるのかさえわからないが、ゼロのバスターをかき消した上、体の前面に直撃する。 「っうっ!」 そこにトランプが飛び蹴りを放ちながら、叫ぶ。 「お願い!ジュリと闘わないでッ!」 「ジュリと!? なんでだよ!」 「なんでって……うるさいよっ!」 トランプは顔を赤らめ、ゼロの顔に向け連打する。 ゼロはそれを全て捌きながら、あることに気付いた。 「ジュリって……女か?」 「あ……!」 その途端、トランプは真っ赤になって立ち止まった。 「確かにな、名前からしてもそんな感じだしよ。声もわりに高かったし…・・・」 「魏あっ!」 突然、トランプが攻撃を再開。ゼロは声も出ずそれを避ける。 「そんなに問題か!? っと!」 チャージショットを打ち込む。 「ぐっ!う、うるさいよぉっ!」 バスターが命中し、後ろに吹っ飛ぶトランプ。 「おらっ、余計なこと言ってると技が出せねーゼ!」 確かに、トランプは奇声を発しなければそれまで使ったような技は出せない。 そこでトランプは「業」を叫ぼうとしたのだが、その瞬間口を思い切り蹴り飛ばされた。 「甘い奴だぜ……どっかに似たような奴がいたかな!?」 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」 歯が折れた。何本?1,2,3,4、5……7本くらい? 口の中で不気味にカリカリと音がなり、トランプはそれを吐き捨てる。 「べっ!」 折れた歯と血が地面に落ち、トランプはそれを見て悲しそうな表情となった。 そして、ゼロを睨む。 「僕の攻撃方法はこれだけじゃない……」 「!」 「見て」 そういってトランプは上着を脱ぎ捨てた。 すると、半袖のTシャツ姿になったトランプの右腕は手首からヒジにかけて ザラザラとした粗い目のヤスリようになっている。 「ヤスリ?」 「ギガザイバ」 武器の名をそう呼んでトランプは腕を振るう。 すると、元々家の壁だったかのように見える厚い鉄板が真っ二つに切れた。と、言うより中心線を削り取られてしまっているようだ。 「そっか、良い武器だな」 ゼロは素直にそれを誉めた。 恐らくは自分のアーマーも筋肉も削り取られてしまうであろうことを察知していた。 「ダブルアースクラッシュ!」 「奇ィッ!」 ゼロの攻撃を弾き飛ばし、トランプはゼロの懐へ一気に飛び込んだ。 「はああっ!」 「っ!」 びゅん、と空を切る音の直後、じゃごっ、という聞きなれない音。 ゼロの胸部アーマーが、右下から左上にかけて削り落とされていたのである。 そのあいだから、黒いアンダーウェアが見える。 トランプはそれを見て、次にゼロの顔を見る。何かを求めるかのように眼を見る。 「……」 「おい」 「?」 「何黙ってやがる!」 ゼロの強烈な顎蹴りが入った。上に吹き飛ぶトランプ。 「ファイナルナックル!」 さらに上に吹き飛ばされたトランプの方に、ゼロはアーマーのメットを外してすててから飛び上がる。 「なんでチャンスにすぐ攻撃視ねーんだよ、アホ!」 Zセイバーから落鋼刃を発動し、空中でトランプの腹を貫く。 「!」 トランプは一瞬、目を見開き口を目一杯開いた。そう、断末魔のような。 しかし、それでもトランプは両肘を落鋼刃に合わせ、思い切り擦った。 すると、左ヒジにもギガサイバが現れ両側から刃が削り落とされた。 「断地炎!」 しかし、Zセイバーからさらに断地炎が現れ、傷口を焼くように突き刺さる。 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」 声にならない声を吐き出しながら、トランプは地に叩きつけられる。 地面の上でなんども弾み、最後に背中から落ちた。 「終わって……ないよな?」 「げ、げほっ、はあ、はあ……」 苦しみながら立ち上がったトランプは、ゆっくりとゼロの方を向く。 「……どうして」 「ん?」 「どうして攻撃しなかったの?」 ゼロは先ほど、攻撃の手を緩めた自分に対し叱責の声を上げた。 しかし、今度はゼロが攻撃の手を緩めている。 トランプの表情には怒りが見えている。 「ねえ、どうして?」 ゼロは、暗い表情で答える。 「……さあな」 「業っっ!!!」 どがん、とゼロの立ち位置が爆発。ゼロは空に舞う。 「どうしたんだ……致命傷なんか一発も喰らってないはずなのに」 次にトランプがゼロの姿を見たときも、ゼロは立ち続けているだけで攻撃しない。 「業っ!業!魏ア!奇ィッ!業!」 トランプはゼロに攻撃をし続ける。それでもゼロは闘わない。 攻撃すればするほど、トランプの頭の中には疑問符と哀しさが舞った。 「う、うぅ、ああああああ!な、なんで……なんで!?」 とうとう泣き叫ぶトランプに、ゼロは重い口を開く。 「……殺したくねえ」 「え?」 「殺したく……ねえんだよ」

二百四十一話「トランプとジュリ」

「殺したくない? 僕を?」 「……ああ、お前を」 ゼロは両手を下げ、じっとトランプを見つめる。トランプは驚いたまま、何も出来ない。 「お前に良く似た奴がいてよ……大事な奴のためだったら自分なんか簡単に放り出す奴」 ゼロは拳を握り、それを見つめながらそう言った。 「僕に似てる……?」 「ああ、大事な人のためにしたくもない戦いをする奴さ。 そんな奴、これ以上叩けねえよ」 微笑むゼロ。トランプは体に電流が走るような感覚を覚え、黙り込んだ。 …… 数分、いや、数十分……? 短いか長いかわからない沈黙の後、トランプが口を開いた。 「ボクは・・ただ・・一緒に・・!!」 「?」 「一緒にいたかったかっただけなんだ!」 ゼロは拳を解き、トランプに視点を移す。 「ジュリのこと、か……?」 「うん……」 トランプはジュリとの過去を語り始めた。 ーー5年前、二人は高校に通う学生だった。 ジュリは緑色の髪の美少女で、クラスでも人気者。 トランプは茶髪にショートヘアの美少年。 テニス部の副部長だったが、おとなしい性格のためかあまり交友関係はなかった。 そんなある冬の日、冷たい風の吹く屋上で一人寂しく弁当を食べていたトランプの隣に ジュリがやさしく座り込む。 「え、あ・・・・・・」 しどろもどろなトランプに、ジュリは元気よく喋りだす。 「ここ、いい場所だね!景色も良く見えるし!」 その時、冷たい風が二人に吹く。 震えるジュリに、トランプはクスっと笑う。 「……ちょっと寒いけど、ね」 「「……プッ」」 「「あはははははははっ!」」 二人で大笑いするトランプとジュリ。 それから二人は友達になり、一緒に遊ぶようになった。 「よ、よろしく、ジュリさん」 「ジュリでいいよ、友達だもん♪」 それから1ヵ月後、トランプはジュリと仲良くしていることで妬まれ、 数人の不良に屋上に呼び出された。 「おい、お前ジュリさんにちょっかいだすなよ」 「え、で、でも、僕たち友達だから……」 「うるせーよ!」 不良に突き飛ばされ、落下防止の金網に叩きつけられたトランプ。口から少し血が出ている。 「このっ、気にイラねーンだよ、死ねッ!」 「くぅ……」 「ちょっと、やめなさいよ!」 そこに現れたのは、ジュリ。不良たちに向けてモップを持って殴りかかる。 「おっと、ジュリさん、その辺で勘弁してくださいよ♪」 不良の中の一人が、ジュリをトランプの方へ受け流す。 「おい、ジュリさんに何してんだよ!」 「おー、悪ぃ悪ぃ」 ジュリは倒れそうになったが、トランプはそれをかばって下敷きになった。 「いて……」 「あ、ご、ごめんね、トランプ」 「んの野郎ーーーーーーーッ!」 それを見た不良が嫉妬し、トランプの頭を掴んで持ち上げた。 「ぎゃあああああああああ!」 「トランプっ!」 「この……クソザコ野郎がっ!」 「やめてよ、離してよ、お願いッ!」 ジュリはどうにかトランプを助けようと懇願するが、不良は止めようとしない。 そればかりか、トランプの顔を金網に押し付ける。 「お、よく見るといい場所じゃねーか。景色も良く見えるしよ」 「!」 その時、トランプは初めてジュリに話しかけられたときのことを思い出した。 そこに、北風が吹く。不良は少し震え、歯を鳴らした。 「ちぃと寒いけどな……」 ……プツン 「うわあああああああああああああああっ!」 トランプがキレた。自分とジュリの大切な思い出を汚した、 この名も知らない不良の顔を蹴りつけた。 「て、てめえ!……うっ!」 さらに、ジュリが思い切り不良の金的を蹴りとばす。 「お、おごおお……」 うずくまる不良。他の不良たちはそれを見て笑いながらもトランプに向かって走ってくる。 「うわあああああああっ!」 トランプは飛び上がった。不良の一人の顔面を蹴り飛ばした。 しかし、その直後、他の不良が突き飛ばしてきた。 空中でなすすべもなく、トランプは金網とともに屋上から落ちてしまう。 校舎の壁が天に昇るような光景の中、さらにトランプにとって最もあってはならない光景があった。 ……ジュリも巻き込まれ、一緒に落ちている。 「じゅ、ジュリっ!」 ジュリを助けたい。 その必死の思いでトランプはジュリを抱き込み、自分だけが地面に叩きつけられるように計らった。 (ジュリ……好き……) 翌日の新聞の内容は、こうだった。 〔高校生の男女、抱き合って転落死〕 ゼロは話を聞き終わり、ポツリとこぼした。 「成程な……」 辛そうな顔をするゼロに、トランプは少し嬉しさを覚えた。 「ありがとう、そういう風に思ってくれるだけで嬉しいよ。うっ……」 ゼロに貫かれた腹から血が吹き出、仰向けに倒れるトランプ。 「トランプッ!……やっぱり駄目だったか!」 トランプに駆け寄るゼロ。トランプの体から、宝珠のエネルギーが流れ出す。 「さ、最後に、これだけは言って、おかなくちゃ」 「まだ死ぬな!!」 ゼロの目から涙が出る。トランプはそれを見て嬉し涙を流した。 「ありがとう……ジュリは、ある人のために戦ってるんだ。 天国で知り合ったあの人のために……」 「あの人……メフィストフェレス・リゼルグって奴か!」 「リゼルグさんを知ってるんだ、そっか……。 僕は、リゼルグさんへの愛に狂った、ぐっ、彼女、を、ぐぅ、止められなかった。 でもきっと、君たちなら……きっと・・・」 トランプのエネルギーが完全に無くなった。 ゼロはトランプの手を握り締め、涙を拭いて立ち上がった。 「リゼルグ……ん?」 ゼロはあることに気付いた。いや、思い出した。 「立会いにって……ジュリの所に……ホーネックが!」

第二百四十二話「ホーネック対ジュリ」

ゼロがトランプと戦っている頃、ジュリとホーネックも同様に対峙していた。 「……隊長、遅いな」 「臆病風に吹かれたか」 「なんだとコラ!」 するとジュリはホーネックに一瞥をくれ、アーマーの中で口を開く。 「暇もあることだ、貴様が来るか?」 大剣アグザビスをホーネックに向ける。ホーネックはビームソードを構えて答える。 「やってもいいぜ、隊長が来るまで」 ジュリはクスリと笑う。 「劣勢になっていても隊長が来ればそれに頼ればいい、か」 ホーネックの表情が変わる。そして、ジュリに向かい突進する。 「隊長を〔それ〕とかいうんじゃねえ!」 「愚か者めッ!」 アグザビスがまるで生き物のように曲がりくねり、先端がホーネックの右腕に刺さる。 「ぐっ!」 「死ねッ!」 メットからレットスパーク(光弾)が放たれ、よろめいたホーネックの右脚を捕らえる。 「うおっ!」 ホーネックはそのまま地面に顔をぶつけ、撃ち伏せる。 「つぅっ……!」 そして、ジュリは止めを刺すべくアグザビスを宙に投げる。アグザビスは宙で連続回転し、大気を帯びていく。 そして、ジュリが飛び上がってアグザビスを掴み、真下に居るホーネックに打ち下ろす。 「秘奥・大気壮烈剣(ひおう・だいきそうれつけん!」 「うおおおおおおおおおおおっ!」 しかし、ホーネックも負けてはいなかった。拳を天空に突き上げる。 「愚かな!その拳とアグザビスの間合いの差に気付かんのか!」 「はあああああああああっ!」 次の瞬間、アグザビスを粉々に打ち砕かれ、メットにもヒビの入ったジュリと 右拳から夥しい血を流すホーネックが立ち上がっていた。 「馬鹿な、刀剣を打ち砕くとは!貴様、その拳にどのような加工を施している!」 ホーネックは地面を指差して言った。 「手には何もしてねーよ。俺は地球を利用したんだ」 「地球!?」 ホーネックは得意そうな顔で説明する。 「そう。地球。ただ思い切り踏ん張って地球全体で体を支える。 その状態で上向きに殴ればこれだけの威力が出せるってことさ。 ガキの頃漫画で読んだんだ」 「ま、漫画だと……ふざけるな!」 「はぁっ!」 ジュリがいきり立ったその瞬間、ホーネックの蹴りが顔面を捉える。 後ろ向きに吹っ飛んでから立ち上がるジュリ。 「ゆ、ゆるさんぞ貴様!必ず地獄へ……ん?」 ジュリのメットが、音を立てて割れた。 「お前女だったのかよ、ちょっとやりにくいな」 緑色の髪、鋭い目の美女がそれに似合う丸型の鎧を着込んだままホーネックに向き構える。 「さ、さあいくぞ!今度こそ貴様の首を……!」 ジュリのアーマーから柄の長い斧が飛び出る。 「秘奥・爆戦斧(ひおう・ばくせんふ)!」 手を使い器用に斧を回し、そのままホーネックに向けて突撃してきた。 「でやぁっ!」 必殺のエナジー・トライアングルでそれに立ち向かうホーネック。しかし、爆戦斧に弾き飛ばされた。 「死ねええぃ!」 斧の刃がホーネックの右首筋を捕らえようとする。 「甘いぜッ!」 だが、ホーネックは首をかしげるようにして頭と右肩で斧を挟み込み、そのまま折ってしまった。 「相手が女でも生身で近づかなきゃOK、ってか」 ホーネックの長い脚がジュリの腹部を捉えた。 「ぐふっ!?」 「っるぁあ!」 さらに左拳が、斧の柄と左肩アーマーを破損させる。 「な、ならば次の武器だ!」 「まだなんかあんのかよ!」 次にジュリが用意したのは、ニンジャの使うクナイ2本。 「せいあああああっ!」 クナイによる斬りつけ攻撃。ホーネックはそれをかわしまくるが、 右肩から右手にかけてのダメージが大きいため上手く動かせず、右腕にクナイが刺さった。 「うぅぐっ!」 「はっ!」 さらにジュリはバックステップしてホーネックの腹めがけもう一本のクナイを投げつける。 「ぎゃっ!」 ホーネックの喉奥から血潮が浮き上がり口内へ噴出する。 「まだまだ!」 ジュリはまたも武器を取り出す。 今度は二つの、タンバリン大の金属製の輪である。そこから刃が飛び出た。 「見せてやる、秘奥回転流の武器地獄!」 「秘奥・永弄剣(ひおうえいろうけん)!」 輪を両手に水平に構え、そのまま回転し始める。 まるでコマのようにホーネックに突っ込んできた。 「秘奥……どっかで聞いたような」 ホーネックはクナイを抜き取ってジュリに投げる。 しかし、クナイはジュリに触れるや否や粉々に砕け散った。 と、いうよりあまりの高速回転にそう見えただけで、実際は粉になるまで斬り続けたのである。 「脚をやった所で駄目っぽいな……だったら!」 ホーネックは何を思ったか、突っ込んでくるジュリに向かって走る。 「そこだぁあああああああああっ!」 「愚か者ッ!」 ……ホーネックの体が消えた。 「ば、馬鹿な!感触すら残らないはずが……」 「わからないか?」 「なっ、ど、どこだ!?」 何処からともなくホーネックの声がする。 ジュリは回転を続けながらホーネックの居場所を探す。しかし、どこにもいない。 「ど、どこだ!どこだ!?」 「正解は……ここだっ!」 ジュリの後頭部に、ホーネックの頭突きが入った。 「う、うしろっ!?」 「武器地獄も大したことなさそーだな、ハハっ!」 回転するジュリの後ろで同方向同速度に回り続けることによって、 ホーネックはジュリに見つからず攻撃することが出来たのだ。 ホーネックはすぐに輪を破壊した。 「次はこれだ!」 ジュリは立ち上がって、今度はハンマーを構える。 「でぃやあああっ!」 地面に向けて思い切りハンマーを叩きつけると、 そこからエネルギー弾が飛び出しホーネックに向かってとんでいく。 「隊長のアースクラッシュに似てるな。でも!」 ホーネックはサッカーボールのようにそれを蹴りつける。 「威力は全然違いすぎッ!」 そのままエネルギー弾は上空へ吹っ飛んで消滅する。 「……はっ!?」 茫然自失としたジュリの表情は、一変して焦りが出始める。 「喰らいやがれ……プルート・ブレット!!」

二百四十三話「メフィストフェレス・リゼルグ」

「あの人の為だけにっ!!」 プルート・ブレッドを腹部に直撃されたジュリは、なりふり構わずホーネックに特攻する。 「っとっ!」 ホーネックはジャンプでかわし、そのまま後ろの、ジュリの後頭部に蹴りを入れる。 「くふっ!」 そのままよたよたと前のめりに倒れこむジュリ。そこに、ゼロが飛んできた。 「ホーネック!」 「あ、隊長!すいません、勝手に闘っちゃいまして……」 「いや、いい。ちょっとそいつと話を……ん?」 ゼロがジュリのほうを向くと、ジュリは体から宝珠のエネルギーを放ちながら、 腹を片手で抑えながら立ち上がる。 「おい、無理すんな!トランプとのことで話したいんだ」 「うるさいっ!アグザビス!」 ジュリが叫ぶと同時に、これまで破壊された全ての武器が集合し、巨大なアグザビスとなった。 「アグザビスの中心核には私の武器に使われる特殊金属を集合・合体させる力がある。 どうだ、この巨大な刀剣」 「でかいだけ、じゃないみたいだな」 ホーネックはゼロの前に一歩出て、ビームソードを構える。 「おい、トランプはな、お前を助けるためにこの世に戻ってきたんだぞ! あいつはお前にこれ以上戦ってほしくないんだ!」 ゼロが説得しようとするが、ジュリは止まる気配を見せず詰め寄ってくる。ホーネックはそれを見て、同様に歩を進める。 「隊長……ざんねんですけどこいつはもう無理です」 「くっ!」 「きぃえええええええっっ!」 刃渡り20メートルはあろうかというアグザビスが振り下ろされる。 ホーネックはそれを右にかわすと、その瞬間ホーネックの首を狙ってアグザビスがなぎ払われる。 「チッ!」 ホーネックはそれをビームソードで受け止める。 しかし、この体制を崩したら首は落とされる。さらに、これまでの出血のダメージも大きい。 「ホーネック!」 ゼロはどうにかジュリを説得できないかと考えた。 しかし、彼女の持つ執念を理解できるゼロには、方法は思いつかなかった。 おそらく、何を言っても聞かないだろう。 もはやゼロには、ホーネックにジュリを倒させトランプの元へ送らせるしか思いつかなかった。 「ホーネック……頼んだぞ」 その瞬間、アグザビスが真っ二つに落ちた。 「なっ!金属が集中すればするほど威力を増すこのアグザビスが!」 「隊長に頼まれたんだぜ……やれねーわけがねえ!」 ジュリの体から、一気にエネルギーがあふれ出た。 ジュリは倒れそして、その体は光に包み込まれて消滅する。 「きえた!」 「ジュリ……トランプと仲良くな」 ゼロはそう呟いた。ホーネックは事情を察し、目を閉じて黙った。 その時である。 「いゃあ、さすがに地球最強の戦士達は楽しいな〜〜〜〜〜〜ッ!」 突風が吹き荒れ、空から一人の男が振ってきた。 銀髪で長髪、前髪が数本垂れ下がり、鋭い目の前で振り子のように触れている。 「お前、Xとバッファリオが戦ったときにいた奴だな!」 「え、隊長、もうこいつと会ってたんですか!?」 そう、Xとバッファリオが闘ったときに居た立会人である。彼はにっこりと笑ってゼロの前に立つ。 「俺はリゼルグ。メフィストフェレス・リゼルグだ。よろしくな」 「リゼルグ!お前が!?」 ゼロは目を見開いて驚く。ホーネックも驚いた。 「いや〜、強い奴と戦いたいって思ってここまで戻ってきたはいいけどさ、 ジュリのやつ何を勘違いしたのか勝手に強い奴と戦いやがって、ったくずるいよな〜」 ふざけた口調で文句を言うリゼルグに、ゼロはバスターを向ける。 「てめえ、何かその態度気にいらねえぞ」 「おっとっ!そりゃねーぜ……この場じゃ面白くないだろ」 リゼルグは両手を開いて静止を図る。そして、また笑って言う。 「体力100%、最高の状態で」 その直後、彼の姿はジュリと同じ光に包まれて消えて行った。 「リゼルグ、か……」 「ジュリと同じ光できえた……ってことはジュリも死んでないってことか……?」 その日、ハンターベースに一つのメッセージが届く。

二百四十四話「バカンス」

ゼロ達は、メフィストフェレス・リゼルグのメッセージに書いてあったドームへ来ていたのだが。 「なんだこれ……」 「今、冬でしょ・・・」 中は、人工の海と砂浜の、まるでリゾート地であった。 二日前…… 「明後日の朝10時、水着とかもってO-KIX7ポイントに来い」 メフィストフェレス・リゼルグのメッセージの内容に、ハンターベースは騒然とした。 何かの罠? っというか、そうとしか考えられない。 と、色々考えていたらもう一つメッセージが。 「従わなければそこらの国を破壊する」 これはいくらなんでもまずいので、仕方なく各自で水着用意。 そして、最後のメッセージには招待客のリストが書かれていた。 ゼロ、アイリス、リル、ライク、X、マーティ、ホーネック、ゼーラ、ヴァジュリーラ、 ベルカナ、ブラック、サラー、アクセル、スパイダー、マリノ、ダイナモ、エイリア、 レイヤー、パレット。そしてリャンにドラクト。 水着に着替え(一応武器も持っている)、驚きながら辺りを見回すゼロやアイリスだが、 いつの間にか何人かが遊んでいる。 「緊張感ないね、みんな」 「ああ、まー、ああいうやつらだしな」 派手水着のゼーラがいつものようにホーネックに抱きつく。 「ホーネックぅ〜〜!遊ぼ〜〜!」 「わ〜〜〜〜〜〜〜っ!」 そして、いつものように鼻血。 「ヴァジュ様、お怪我は大丈夫?」 ベルカナがヴァジュリーラに寄り添う。 イルアとの戦いで全身に火傷したヴァジュリーラは、水着にほぼ全身包帯の格好で答える。 「そうですねえ、彼もかなりの強敵でしたから」 包帯の崩れた右手を見ながら、さらにその奥も見据えるヴァジュリーラ。 視線の先の人工海の波が、一瞬緩まった。 「しばらくは戦えませんねぇ……」 「ケッ、いつからそんなに打たれ弱くなったんだよ!」 そこに、ブラックが登場。 ヴァジュリーラよりはるかに酷い大怪我を負いながらも、平然とそこに立っている。 ベルカナは驚いたが、ヴァジュリーラは別段驚いた顔も見せず、ブラックに笑いかけた。 「でもさ、メフィストフェレス・リゼルグはどこにいるんだろうね?」 アクセルがリル&ライクと砂遊びしながら独り言を言う。 「今更気づいたんですか? 私達はずっと探してましたよ?」 パレットがすかさずツッコむ。 ちなみに、「私たち」とは、エイリア、レイヤー、パレット、ドラクト、リャン、ゼロ、アイリス。 「うるっさいな、いいじゃん、こんな青々とした海なんだからさ!で、見つかったの? リゼルグは!」 アクセルが立ち上がりながらパレットに聞くと、その瞬間と同時に大声が響き渡る。 「よーこそ、みなさ〜ん!!!!!!!!」 大声を上げてゼロ達の前に現れた男が一人。 真っ赤なツンツンヘアーに、真っ赤な海パンの青年である。 「俺主催・へヴンズロイズバカンス、楽しんでるか〜〜イ!?」 「なんだ、お前?」 ダイナモが軽軽しく声をかける。すると、赤髪の男も軽軽しく口を開く。 「俺はダイちゃん!ダイマ・ジーク!よろしくねん♪」 ダイマはゼロ達を見回し、全員いる事を確認してからマイクを取り出す。 「では登場していただきましょー!みなさん、ごちゅーもーく!」 すると、ダイマの背後がぱぁあっと光り、ぼやーーッと消えていく。 そして、その光の消えた場所に、水着姿の2人が立っている。 一人はメフィストフェレス・リゼルグで、もう一人はスタイルのいい女性。帽子とサングラスで顔はよく見えないが、かなりの美人である。 「よぉ、みんな来てくれたな!ダイマが勝手にメッセージ送るもんだから来てくれるか心配したぜ! ま、折角だから俺も楽しませてもらうけどな!」 「……」 (ブラック以外)ゼロ達は目をパチクリさせてリゼルグたちを見ていた。こいつらが本当に最強の敵……? 「へー、あんたがリゼルグちゃんかい」 その時、ダイナモがリゼルグに歩み寄る。見ると、右手がバスターに変わっている。 「仕事なんだよね、悪いけど」 「え?」 ダイナモがここに来たのは、ハンター総司令部から受けた仕事、リゼルグを倒す事のためだった。 ダイナモの表情とバスターを見て、リゼルグの顔がこわばる。 「ホント悪いね〜、でも仕事だからさ!」 「ダイナモ!よせぇ!!!!!!!」 Xが叫んだ時、ダイナモは既にバスターをリゼルグに向けていた。 「喰らいなっ!」 そして、バスター弾が放たれようというその時。 「「ふざけんなっ!!!!!!!!!!!!!!」」      (((((()))))) ドームの中に、痛烈な叫び声が響いた。 バスターは空気の衝撃でかき消され、驚いた顔のダイナモだけが残った。 「え…」 「てめえ……!」 ダイナモの首を掴むリゼルグ。 「っ!」 ダイナモは驚いたまま、動けない。 首が絞まって声も出ない。 「遊ぼうって時に仕事しようなんて…」 は? 何人かがそう思った。 リゼルグは本心から遊びたがっている……? 「遊ぼうって時に仕事するなんて最低だ!このバカヤローーーーーーっ!!!!!!!!」 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」 ダイナモは片手で海に投げ飛ばされた。 そして、海面で数回バウンドし、じゃぼんと海に沈んでしまった。 「あのダイナモが……」 「あんなに吹っ飛んだ……」 驚くホーネックとアクセル。他の仲間たちも驚きを隠せない表情だった。 「っはっ!」 海面にダイナモが顔を出す。リゼルグはそれを見て、にっこり笑う。 「そんじゃ、みんなで遊ぶぞ〜〜〜〜〜っ!」 「……ワケわかんねえ、あの野郎……!」 今度はドラクトが口を開く。 「まて!お前らは一体何が目的なんだ!? 我々に宣戦布告したと思えば今度はバカンスなどと!ふざけているのはそっちだろう!」 激しく睨みつけるドラクト。 すると、リゼルグはニッと笑い、一瞬でドラクトの側によって肩を叩く。 「俺達の目的? それはそれぞれ別にある。俺は戦いたい。 強い奴らと戦いたい。でもよ、ただ戦うよりも楽しく戦ったほうがいいだろ?  互いの事をよく知ってさ。決着をつけるのが楽しみになるじゃねーか。 だから何かしようと思ってたら遊び好きのダイマがこの企画を立ててくれたってワケだ。 あんたら天使まで来てくれるとは思わなかったけどな」 「う、ウゥゥ……ほ、宝珠のエネルギーを返せ!」 あまりに軽く物事を言うので、言い返し方が思い浮かばず関係のない事を口走るドラクト。 そんなドラクトに、リゼルグは笑いながら答える。 「い〜や〜だ!返してほしけりゃブチ殺さなきゃ。戦って戦って戦って、さ」 リゼルグにとって、楽しい戦いこそ全て。 ゼロはそう理解した。 そして、そんなリゼルグにどこか親近感を覚えた。 「いいじゃねえか、ドラクト。どうせいずれ戦うんだし、今は遊んどこうぜ」 「あなた!?」 驚くアイリス。 しかし、ゼロとリゼルグを見比べてすぐに納得したような表情を見せる。 (何か……似てるかも、この二人。 というか……このリゼルグって人が昔のゼロ君にどこかそっくり……!) それから、敵味方入り乱れてのバカンスが始まった。 ホイトやザイネス、トランプなどのことがあったためかヘヴンズロイドは必ずしも悪ではない、 という感覚や人工とは言えリゾート地のような砂浜という場所が、 ゼロ達の意識を変え羽を伸ばさせていた。 「スイカ割りしよ〜〜♪」 ダイマに言われて、ホーネック、ヴァジュリーラ、ブラック、リル&ライク、サラーがスイカ割をはじめる。 「もう前みたいに斬らないでね〜?」 「ぬう、黙れ!」 「や、止めなよぉ……」 喧嘩をはじめるリル&サラー。ライクはそれを止めようとするが、上手くいかない。 その間にホーネックが、スイカをぺちゃんこに潰してしまっていた。 「どーやったらこうなるんですかホーネック君!」 「いや、わかんねぇ……」 「ゼロっつったな!!ビーチバレーで勝負だ!」 「おおう、やろうじゃねーか!」 ゼロ対リゼルグの一対一ビーチバレー対決。 迫力のあるラリー戦が続き、アイリスは横で応援している。 「あなた〜頑張って〜〜!」 すると、リゼルグ側からも応援の声が。 「リゼルグ様〜、ステキ〜〜〜〜〜〜っ!!!!」 最初にリゼルグと一緒にあらわれた女が、リゼルグに黄色い声援を送っていた。 「……?」 アイリスはその女にどことなく不思議な感覚を覚え、首をかしげるのだった。 その頃アクセルとパレット、レイヤーは、スパイダーとマリノがリャンと話しているのを見に行っていた。 「じゃあ、ガンマちゃんが生きているかもしれないんですか!?」 「ああ、まだ未確認だけどな。宝珠エネルギーの事を言うと可能性があるらしい」 「恐ろしい奴だね、ったく。あんだけボロボロになっておいて私たち全員に勝ってまだ生き残っててさ」 「ガンマちゃん……」 リャンは嬉しそうな、悲しそうな表情で祈るような格好で空(天井)を見上げた。 それを見たアクセルは、拳を握って歯を食い縛る。 「どうしたんですか? アクセル」 「そんな怖い顔をして……」 パレットとレイヤーが心配そうにアクセルを見る。 するとアクセルはハッとして、笑う。 「だ、大丈夫大丈夫!なんでもないよ!」 「そーですか?」 「そーですよっ!」 そして、大きな岩に飛び乗り、腰掛けて呟く。 「ガンマ……」 すると、岩の影から声がする。 「……呼んだか?」 「ガンマ!?」 「ウソぉ!」 岩陰でガンマが寝ているのを見つけたアクセル達は、 目を見開いて驚く。 「い、居たのかよお前まで!」 中でも驚いたのは、リャン。 「が、ガンマちゃん、生きててくれたんだ!」 眼から涙が零れ落ち、ガンマに駆け寄るリャン。 ガンマは何も言わずに、ただリャンに胸を貸した。 そして、泣き続けるリャンをよそに、マリノを見て一言。 「……あれからずっと、だ」 「ずっと?」 マリノは不思議に思い、口をぽかんと開ける。 ガンマは目を閉じて、また一言。 「アンフェアな勝負をし続けた」 「アンフェア……?」 マリノと対戦して以来、ガンマは不公平(アンフェア)な勝負をし続けていた。 多数対一、武器を持った敵との戦い、そして軍隊。 「ぐ、軍隊って……」 「なんでそんな事を?」 アクセルが聞くと、ガンマは目を閉じて悔しそうに答える。 「俺自身……最低だから」 「え?」 「どーゆーことだよ、そりゃ」 スパイダーが指をはじく。 「あの時……俺は自分の体を使わなかった」 あの時とは、スパイダー&マリノとガンマが戦った時。 マリノのミラージュタイプが発動した時、ガンマは石を投げて攻撃しようとした。 それが、自分を許せなかった事だと言う。 「なんで石がダメなんですか?」 パレットがひょいと顔を出して訊ねる。 すると、ガンマは急に立ち上がって怒鳴りだす。 「自分の実力以外のものに頼るなんて最低だって言ってんだよ!!」 「ひゃっ!」 慌ててレイヤーに飛びつくパレット。 「!」リャンも思わず尻餅をつく。 「実力以外……はダメ?」 アクセルは、自分の銃を見て言う。 「当たり前だろ!勝負は全て実力だ!実力が決めなきゃ意味ねーんだ! それをあんな……石なんか!」 悲痛に叫び、悔やむガンマ。アクセルはしばらく黙ってから、再び質問する。 「・・・それが不公平な戦いをすることとどういう関係があるわけ?」 するとガンマは再び座りこみ、落ち着いて話し始める。 「贖罪のつもりだったんだ、少しでも不利に戦って汚点を晴らそうと思った。だが、駄目だ。方法は一つしかない」 「何さ、一つだけって」 ガンマは、立ち上がりマリノの目を見る。 「な、なんだい!?」 そして、一言言い放った。 「あんたともう一回、実力で勝負をすることだ!そして、勝つ!」

二百四十五話「楽しんでいる間に」

「私と勝負・・・かい」 「ああ」 あとずさるマリノ。 前回の戦いの恐怖が顔を青くしている。 目の前でスパイダーが何度も頭突きを喰らって顔面が血だらけになり、 自分自身も目の前で、爆発に足が吸い込まれていったあの瞬間が脳裏に焼きついていた。 「か、勘弁しとくれよ、私は・・・・」 「不便だな」 「え?」 「戦う奴ってのは・・・・」 「どういうことだい!?」 「襲われたら嫌でも身を守るために自分の技を使わなきゃならない」 ガンマの指がぴく、ぴくっと動き今にも戦闘態勢に入りそうなそぶりを見せる。 「ダメッ・・・!」 リャンが悲しそうに叫ぶ。しかし、その直前、ガンマの背後にリゼルグがいた。 「リッ!」 驚いてアクセルが叫ぶ。 「ゼッ!」 パレットも叫ぶ。 「ルッ!グッ!ってかぁ? ったく、アホみてーな呼び方すんなよ」 口を尖らせるリゼルグ。そして、ガンマの肩に手をまわす。 「んでぇ、ガンマちゃんはどーしたいのかなっ!?」 動いていた指を止め、リゼルグの手を払いのけるガンマ。 「わかってるよ、今日はやらねぇ。ついでに言えば、このカッコじゃ戦いたくないからな」 「ハハッ、解ってんじゃねーの!って、怖い目すんなよ」 リゼルグはガンマから一歩はなれる。 するとアクセルが二人を見比べて言う。 「へ、へぇ〜、リーダーなのに部下に睨まれちゃってんだ、 リゼルグサンってリーダーにしちゃおかしな性格だね♪」 するとリゼルグは、不思議そうな顔をする。 「俺はリーダーじゃないぜ」 「えっ?」 一瞬、場が凍った。 リゼルグは続ける。 「というか、ヘヴンズロイドにリーダーはいねーよ、俺が皆をそそのかしたってだけの事さ」 「そうなのか?」 後ろから騒ぎを聞いたゼロ達もやってくる。 そして、リゼルグの連れていた女も、サングラスのズレを直しながら言う。 「そーなのよ、リゼルグ様ったら出世欲が無いのよ。すっご〜く強いのに!」 それに対し、リゼルグの反論。 「ってーか、全員自分の勝手でついてきたくせに俺がまとめなきゃいけないっておかしいだろーが」 「酷い管理ね、ヘヴンズロイド。」 エイリアがあきれる。 「アハハ、酷い言われようですねリゼルグさん」 ダイマが笑う。 「なんで俺が馬鹿にされなきゃいけねーんだよ」 リゼルグがまた口を尖らせる。 「だってリーダーでしょ」 「だからリーダーじゃねえ!」 レイヤーが珍しく口を開く。 「しかし、それだけの実力はあるのでしょう?  先ほどのビーチバレーで見せた身体能力をみれば これまでのデータと比較して群を抜いている事はわかります。 なろうと思えばリーダーになれるのでは?」 すると、リゼルグの顔が強張る。突然の鋭い目に、レイヤーは腰を抜かした。 「実力があったらどうした? 俺はリーダーなんてやりたくない。 実力があるからってリーダーをやらなきゃいけないなんておかしいとは思わないか?」 「ん?」 ホーネックが反応し、ゼーラがそれに気づく。 「どしたの?」 「いや・・・今の言い方、どっかで・・・」 「なんだろうね・・?」 「つまりさ、ゼロやXがイレギュラーハンターのトップに就かないのと同じことさ、 実力と役職は必ずしも一致しないってこと」 「なるほど・・・」 ゼロがホーネックを見て言う。 ホーネックも、とうの昔に副隊長レベルをはるかに超えている。 最近は空挺部隊からのお呼びもかかっていると言う。 しかし、彼自身のゼロの下で戦い続けたい、という希望により現状が維持されている。 すると、突然リゼルグの背後に光が生まれ、そこから一人の不気味な男が現れる。 その外見は、西洋風の黒い甲冑に、メットだけ無く紺色の布が巻かれていて、その隙間から目が光る。 「ローマ、お前も来たのか」 ローマと呼ばれた男は、なにもせずに一言だけ言って、出たときと同じ方法で光と消えた。 「リゼルグ様の言った意味、すぐにわかる」 「リゼルグの言った意味・・・」 ゼロが呟くと、リゼルグがはっとする。 「お、おい、お前ら、今すぐハンターベースに戻れ!」 「!?」 「あいつ、勝手しやがったな!?」 リゼルグの慌てた顔に後押しされ、ゼロ達はすぐにハンターベースに戻る事にした。 「明日、2時にそっちへ行くからな!」 ガンマが最後に、マリノにむけて叫んだ声が聞こえた。 そして、全員でハンターベースに戻ってきた。 すると、そこにあったのは普段のハンターベース。 ゼロやXの部下たちがデスクワークし、何人かがイレギュラーを倒し戻ってきた。 「・・・別段、何も変わっていないようですね」 ドラクトが見回して言う。 「なにも変わってないよね、どういうこと?」 「おい、なにか変わった事は無かったか?」 ゼロが部下のハンターに聞く。 すると、ハンターはキョトンとして答える。 「いえ、とくに何も」 「一体・・・・」 ヴァジュリーラが口元に手をやり、言葉を発しかけたその時、イグリードが大慌てで駆け込んできた。 「た、大変だ、ぜ、ゼロ、X!はぁ、はぁ、はぁ!」 息を切らせるほどの驚きがあったのか、ゼロはイグリードの背中をおさえて落ち着かせながら聞く。 「何がそんなに大変なんだ?」 「じょ、上層部が・・・上層部がっ!」 「上層部・・・・・って」 そして、上層部専用の会議室。 普段なら、最高司令官、総司令官、各司令官とそれらの警護にあたるハンターしか入れない。 ゼロ達がそこに飛び込むと(リル&ライクは0部隊の部屋においてきた)、 そこは血と武器とボロボロになったハンター上層部全員の体―――― 「きゃああああああああああっ!」 アイリス、レイヤー、パレットが悲鳴を上げる。 ゼロはアイリスを抱きしめ、この惨状に目を向け続ける。 「さっきのローマって奴がやったのか?」 Xが全員の生存を確認した後、顔を上げて呟く。 「たった一人で…一介のハンターから成り上がった強豪で鳴らす上層部を全員片付けた、か」 すると、それまでずっと黙っていたブラックが言う。 「これがリゼルグの言った意味、か。俺達みたいに強い奴が上に上がれない、ってことだ♪ ま、俺はどっちかっつーとリゼルグと一緒でやりたくないからやらないだけだけど♪」 ブラックの明るい話し方と裏腹に、全員が黙って動かなかった。

二百四十六話「ガンマ対マリノ」

バカンスの楽しさも完全にふっとび、ブラックとリル&ライク以外は目覚めの悪い朝となった。 「ったくよぉ」 「どうしたの? あなた? やっぱり昨日のこと?」 「ああ、やられちまうなんてなぁ、最高司令の・・・名前なんだったっけな?  いつも司令司令って呼んでるから名前忘れた」 「あ、あなた……」 ガクッと肩を落とすアイリス。 そして、午後2時。 約束どおり、ガンマとマリノがハンターベースの訓練場で対峙する。 隅では、スパイダー、アクセル、ドラクトそしてリャンが見守っている。 「受けてくれてありがとう、場所まで用意してくれるなんてな」 ガンマの落ち着いた表情をみたマリノは、思わずほころぶ。 「ま、あんたの言うとおりさ。挑まれたら戦うしかなくなるってこと。 どうせなら邪魔なしで思いっきりやったほうがいいさ・・・・・・素手で」 両手を構えるマリノ。 しかし、ガンマは「お前は素手じゃなくて良い、普段どおりで来い」と言う。 「へえ? 素手同士が良いんじゃないのかい?」 マリノが疑問に思うと、ガンマは蹴り脚を構える。 「問題は素手かどうかじゃなくて、自分の戦法そのものをちゃんと使えるか、 自分のルールを守れるかってことだ。お前はお前のルールを守って戦えばいい」 「ルール・・か」 アクセルが銃を握り締める。 「な〜るほど・・・スパイダー!」 「おう!」 スパイダーに武器を渡され、そのうちの一つビームソードを構えるマリノ。 「さ、始めようか!」 「かあああああああっ!」 マリノのビームソードが空を切り、ガンマの顔面に向かって突きかかる。 「突きかよ、しかも顔」 それをかわされても、マリノは動じず次のファイヤステラを投げつける。 「うっ」 ガンマの胸に炎の手裏剣が刺さる。 「このっ!」 強烈な蹴り上げがマリノの腹に直撃する。 「ぐっ・・ふ!」 「だっ!」 さらに、脚を捉えて膝裏の関節に腕を入れて挟む、関節技をかける。 「うああっ!」 「次だっ!」 その状態から技をとき、素早く後ろから首を締めにかかる。 「ハイパーモード・クイックシルバー!」 だが、マリノは一瞬でクイックシルバーに変身し素早くガンマから遠ざかる。 そして、目にも見えないスピードで散華を撃ち込む。 「うぐっ!」 「くらいな、マリノスタンプ!」 「ぐああっっ!」 さらに強烈な一撃をくらい、後ろに吹き飛ぶガンマ。 その時アクセルは、ガンマの戦いに何か違和感を覚えた。 (動きが・・遅い?) 「はぁっ!」 「えっ」 その瞬間、マリノの体が宙に浮き、背中側の壁に叩きつけられた。 「い・・今のは!?」 「ここからが俺の真骨頂だぜ・・」 マリノのハイパーモードが解け、ガンマに手を掴まれた。 「あ、あのやろぅ!手なんか握りやがって!」とスパイダー。 「が、ガンマちゃんのバカッ!!」とリャン。 「あんたら、真面目にしてる?」とアクセル。 「じょーだんだよ」とスパイダー。 (私は本気・・)とリャンは思った。 「アンタら、全員ふざけすぎだろ!」と突っ込むドラクト。 「うぎゃあああああああっ!!!!!!!!!!!」 マリノの悲鳴が急に、室内に響く。 「なっ!?」 スパイダーが驚いてマリノをみると、明らかに右肩がはずされている。 「うおぁっ!マリノッ!」 先ほどのふざけた表情とは打って変わって本気で叫ぶスパイダー。 「な、なにしやがったんだ!?」 「こ、このっ!」 マリノの蹴り脚がガンマに直撃。した瞬間、蹴った逆の方向に吹っ飛ぶ。 「うっ!」 「セイっ!」 さらにガンマの正拳突きが左肩に直撃。 「うぐっ!」 「はああっ!」 そして、飛び上がっての回し蹴り、ローリングソバット、そして踵落としが脳天に直撃する。 「ぅあ・・・・!」 マリノの頭から血が吹き出る。 「ま、マリノっ!くそっ!」 スパイダーが神の力を放出しながら、ガンマにカードを向ける。 しかし、マリノはそれを止める。 「ま、まちな!こ、こ、これは、私の、戦いだよっ!」 もはや言語もおぼつかない状態で、ガンマを睨みつける。 その直後、マリノの腹にガンマの掌が触れている。 「覇っ!」 「ぐふぅっ・・・・・・・・!!!」 またも背側の壁に吹き飛ばされるマリノ。 「な、なんだよあの技は!さっきから変だぞ!」 「アレは・・・おそらく中国拳法で言う『気』の技です。 それにマリノさんの肩をはずしたのは合気道」 リャンがしずかに解説する。 それを聞き、アクセルとスパイダーはリャンの顔を見る。 「合気の技まで使えるのか、あの野郎!」 「ガンマちゃんは中国拳法、空手、レスリング、ボクシングの全ての技を使えるんです。 もちろん、それらを利用した自分だけの技も」 スパイダーが次に見た時、マリノはもはや立っているのでやっとだった。 「次・・・・行こうか?」 サンダーコメットを構えるマリノ。 ガンマは拳に、中指を折り曲げた状態で立てる「一本拳」で対抗しようとする。 「はああああああっ!!!」 マリノのサンダーコメットが竜巻状に連射される。 さらに、ファイヤコメット、アイスコメットも同様に撃ち込む。 「そらそらそらっ!」 赤、青、黄色の光が美しく乱舞し、ガンマの眼前に襲い掛かる。 「だったらっ!」 ガンマは、竜巻の中心に入り込み輪をくぐるようにして攻撃をかわす。 そして、竜巻の始点部分にある数個のコメットを一本拳で破壊。それにより技を回避した。 「な、なかなかやるね、さあい、いくよっ!」 その瞬間、再びハイパーモードになっていたマリノがミラージュタイプを放つべく3人に分身していた。 「だああああ〜〜〜〜〜〜〜ッ!」 血飛沫をとばし、マリノ最後の決死行。 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」 ガンマは動かない。と、言うより動けないのか、微動だにしない。 「入る!」 「決まった!」 「いけるっ!?」 「ガンマちゃん!」 誰もがマリノの勝利を確信した。 そして、マリノの脚がガンマの腹に直撃しようとした、その時。 「ずあああっ!!!!!!」 「ぐ・・・・・・・・・・・・ふ」 ガンマのカウンターパンチ。 ミラージュタイプが決まると同時に、クロスカウンターがマリノの腹に直撃した。 マリノの目が白く変わる。 スパイダーが走りだす。 マリノの口から血があふれる。 ガンマの口にも、血が走る。 「マリノぉおおおおお!・・・・ん!?」 「せぃあああああああああっ!!!!!!!!!」 リベンジハリセン! 全快の爆発を含め、これまでのダメージの全てが、二倍になってガンマの体の中に衝撃として駆け巡る。 「オアアアああアアアアああアアああアアああアアあああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああ あ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 治りかけていた傷口が一気に開く。 ゼロ戦、ダイナモ戦、スパイダー戦、ヴァジュリーラ戦、アクセル戦、軍隊戦、 全てのダメージが一気に体を襲った。 ガンマの体から、致死量といって良いほどの血が流れる。 「ぐ、は、はあああああああああっ!」 血がとまった。一瞬、リャンは全ての血が出きってしまったのかと思ったが、ガンマは自力で血を止めていた。そして立っていた。 「がああああああっ!」 息を切らせ、立ち続けるガンマ。 食い縛った歯の隙間から、口にたまっていた血が垂れ落ちる。 「ま、マリノ・・・・っ!」 マリノの介抱をするスパイダー。 「ま、負けちゃった・・・・っ」 そう一言言って力尽きた。 「か、勝った・・・」 そして、ガンマはその一言とともに、再び生気を取り戻す。 「ガンマちゃん・・・・」 ドラクトは、宝珠を見ながら恐れるように震える。 「どう見てももうすぐ死んでしまうはずなのにこれほどの力を出すなど、信じられない・・・ 現に奴の体の中から宝珠のエネルギーが微量ずつ戻ってきているはずなのに!」 スパイダーはガンマを指差し、叫ぶ。 「てめえ!次は俺が相手だ!今度こそぶっ殺してやるっ!」 「・・・・・・次はボク」 「ん?」 「何?」 アクセルが出た。 一歩先に進み、ガンマを睨むその目は真剣そのもの。 ガンマはそれに、自分の今の状態も省みず応える。 「ああ、いいぜ。・・・・・勝負だ」

二百四十七話「ガンマ最終章」

アクセルが最後の戦いに挑む。 「ガンマちゃん、やめて!もう静かに眠って!」 「俺の命はもうすぐ終わる。宝珠のエネルギーが止まらない。 俺はその間だけ、限界まで勝ちたい」 「そんな・・・・・!」 アクセルは銃を両手に持ち、指でまわす。 「リャンさん・・・いい加減認めてやんなよ。この人の全てなんだよ、戦って勝つことが」 「う・・・・」 リャンは、前にスパイダーやマリノにガンマを倒してくれと頼んだ時の事を思い出した。 その時の覚悟を思い出し、ガンマの本当の最後を見届ける事に決めた。 「・・・・ガンマちゃん」 「リャン?」 「・・・・頑張ってね」 生前。試合前、いつもこうやってリャンはガンマの頬にキスをして応援してくれた。 ガンマはその事を思い出して、瞼にたまった血が涙のようにして、 いや、涙と混ざり合って床に零れ落ちる。 「・・・・さあ、勝負だ」 「・・・・手加減しないよ♪」 スパイダーとライフセーバーがマリノを医務室に連れて行く。命に別状は無いようだ。 そして、アクセルが銃を構えてガンマに向ける。 「目の色が違うな・・・・これが本当のお前か」 ガンマの足が地を蹴る。 アクセルはすぐに反応し、予測する位置に銃弾を放とうと指に力を入れる。 そして、その場所を狙い撃ちするはずだと言う時に、 突然ガンマが滑るように崩れ、顔面を床に叩きつけた。 「うぐ・・・・っ」 「ガンマちゃん!?」 「ガンマ!」 「やはりエネルギーが減りすぎているのか!」 足に力が入らず、立ち上がれないガンマ。 アクセルは一瞬躊躇するも、すぐに厳しい顔をしてガンマに歩み寄る。 戦うのが好き 叩くのが好き 蹴るのが好き 締めるのが好き 勝つのが好き そんなあんたは 戦いの外での死なんて許さない だから…… 「だから本気でやっつけるっ!」 アクセルの両腕が、ガンマの首に絡みつき締めあげる。 「・・・ぐ・・・・ぐ・・・くっ」 ガンマの顔が青白くなる。泡を吹き、目も白く死に近づいていく。 「ボクだってこんな終わりかたしたくないよ・・・ 最初から最後まで本当に全力で勝負して勝ちたかった!」 アクセルの目から涙が零れる。 (それでも・・あんたのために戦ってやりたいんだ!) 「らああああああああああっ!」 「きゃっ!」 ガンマはアクセルを弾き飛ばし、リャンの方まで飛ばした。 「うぅぐ!」 アクセルが立ち上がろうとすると、ガンマの蹴りが顎に直撃する。 さらに顎をつかまれ、脳天を床に叩きつけられる。 「うああああああああっ!!!!!!」 だが、アクセルはすぐに立ち上がり、飛び上がってガンマを蹴り飛ばす。 「斬脚波っ!!!!!」 アクセルの高速の蹴りが、ガンマの足元の床に深く切り込みを入れる。 「っ!?」 「指拳刃っ!!!!!」 地獄突きの要領で、敵を突くこの技。斬脚波同様真空波で周囲の物体を切り裂く。 「うぉっ!」 脇腹に傷を負うガンマ。 そこに、アクセルの顔面パンチ炸裂。 「がっ!」 「どーだ、この威力っ!追い討ちしてやるゼッ!変身、ナインテイルズ!」 ナインテイルズに変身し、滅殺波動拳を撃ち込む。 「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」 壁まで吹き飛ぶガンマ。 「変身!エンシェンタス!」 さらに、阿修羅ナックルの連弾。 壁とガンマが連続で爆発する。 「とどめ・・・いや、まだまだっ!」 さらに銃弾を連射。 だだだだだだ、とガンマの体を打ち抜く音がする。 「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!」 体中から血を噴出し、目を血走らせ、数箇所から骨が突き出ている姿のまま、叫び続けるガンマ。 「倒れろっ!倒れろっ!いや・・・・あんたが倒れるまで永遠に撃ち続けるっ! だから・・・だから好きなだけ立っていてくれっ!」 「がああああっ!」 ガンマが銃弾を殴り飛ばした。 もう、死んでもおかしくない。 立っていられるのも不自然。 それでも立ち続け、走り続け、顔面を床に打ちつけても走り続ける。 「ステルスモード!」 そしてガンマの体当たりは、ステルスモードにかわされる。 「ぎっ!」 そして後ろ蹴りも当然当たらない。 「斬脚波連射っ!」 威力を分散された超高速の斬脚波を撃ちまくる。 ガンマはそれをかわし続ける。 いくらなんでもこのダメージをうけてこのスピードで動き続けるなど、ゼロでも不可能。 血を噴き続けながら、宝珠のエネルギーを流しながら攻撃を避け続ける。 「う、ぐう・・・ぐあっ!」 当たった。右目に真空が命中し、そのままそれるように右耳を切り裂いて空に消えた。 「目まで潰れた・・・!なのに!」 アクセルも焦燥していた。 自分の最高の攻撃を何度も喰らって、それでも倒れないガンマ。 解っている。もうそんな事は解っているはずなのに驚いてしまう。 それがこのガンマと言う男。 そう、これがこのガンマと言う男。 「指拳刃っ!」 ガンマの胸をアクセルの手が貫く。 「う、ぐ、う、あ」 その手を引き抜き、さらにミドルキックを叩き込む。 「うわっ!」 合気。 マリノ戦で見せた合気がアクセルにも使用された。 空中で一回転して、頭から落ちるアクセル。 「つっ!・・・ん?」 アクセルの顎に、ガンマの拳が触れる。 「なんですか、アレは?」 ドラクトがリャンに聞く。 リャンはずっと黙ってガンマを見ていたが、ドラクトに訊ねられてから、はっとして応える。 「え、ああ、あれは・・・・寸頚・・・・?」 寸頚とは、正拳突きの形で手首・肘・肩の3つの関節だけを動かさず、 腰や足など別の関節を使ってはなつ、ボクシングで言う「ワンインチ・パンチ」というものである。 密着状態で敵を吹き飛ばせる。 この技を喰らい、アクセルは後ろに吹き飛んで床と天井に一回ずつ跳ねて壁にぶつかった。 顎を殴られた事によって、脳が揺れる。 何度も頭蓋骨の中で脳が叩きつけられる脳震盪がおきる。 あまりの威力と衝撃に、これまでの疲れと相乗効果で一気にダメージを受けるアクセル。 「う、ぐう・・う」 「だあああっ!」 そこに、死に体にも拘らず猛ダッシュでガンマが突っ込んできた。 そして、前倒れな体制でいたアクセルの背中に全力で頭突きする。 「くがあっ!け、ケホッ、けほぉお!」 肺に衝撃が走り、呼吸がおぼつかない。 アクセルは後ろ蹴りでガンマを弾き飛ばし、2メートルほど逃げ飛んだ。 「は、は、はああ、はあっ、っ!」 「・・・・・・」 動かないガンマ。アクセルは呼吸を整え、再び構える。 「・・・・・・」 二人の呼吸が、止まるように小さくなる。 アクセルの頭からいつのまにか血が流れている。 ポタリポタリと、二人の足元に血が落ちる。 互いの目と目が互いの目と目を見る。 そして・・・・走った。 互いで互いに最後の一撃を加えるべく、走った。 アクセルの指拳刃がガンマの胸の、心臓の部分に向かって飛び込む。 同時にガンマの、力強く握り締めた最後の拳がアクセルの顔面を捉えようと空を切る。 ガンマの宝珠エネルギーが、尽きた。 「アクセル!大丈夫ですか!?」 パレットが血相を変えて訓練場に飛び込んできた。 だが、戦いはもう終わっている。 「終わった・・・・」 「ガンマちゃん・・・・!」 ガンマの心臓に、アクセルの腕が突き刺さっていた。 アクセルの腕が抜けると同時に、倒れこむガンマ。 「ちょうどエネルギーも尽きた・・・最後の戦いにこれは残酷だったかもしれないが・・・言うまい」 ドラクトは宝珠を確認して呟いた。この言葉は誰にも聞かれていないと思ってのことだった。 だが、それはアクセルに聞こえていた。 「・・・わかってたよ」 「・・・アクセル君」 「勝負なし、かぁ。だよね、ボクは実力で勝ったわけじゃ・・・・・・」 横たわるガンマの足が、アクセルの側頭部に直撃―――――――――― 「あっ」 アクセルの目が自分の頭を砕いたガンマの脚を捉え、白くなった。 「うっ・・・・」 アクセルの脚が崩れ、その場に倒れ伏す。 ガンマが立ち上がった。 リャンもドラクトも信じられない顔をしてガンマを見続ける。 「おれの・・・・勝ちだ・・・・・・っ!」 その言葉とともに、負けることなく、引き分けも無く、生涯勝ち続けた男、ガンマの最後の命が、尽きた。 「負けた・・よ、ハハ・・・」 アクセルのか細い声が響く。 力なきその体の中に、一人の最強の男の魂を宿すかのように、ギラギラと輝く瞳があった事を、リャン一人が気づいていた・・・・・。 ガンマ・・・・完

二百四十八話「油断と浮上とエクスプロ―ズ」

ドラクトが皆を呼び集め、自分の復活した力を披露した。 「怪我が治っていく・・・」 「おお、すげえ!」 ハンター達が驚嘆の声を上げる。 「これが私の力の一つです。皆さんのおかげで、宝珠エネルギーの4分の3が帰ってきました。 これで天界の者達も復活している事でしょう」 「ま、お礼を言うのは全部が終わってからってコトでね♪・・イテっ」 調子に乗ったアクセルだが、後ろに居るエイリアに叩かれた。 「調子に乗らないの!」 「こ、子ども扱いはないでしょ―よ〜・・」 パレットはそれを見て、声を殺すようにして笑っていた。 ハンターの一人が拳を振り上げて仲間達に叫ぶ。 「この回復能力があればヘヴンズロイドにだって勝てるぞ!全員で一気に殲滅してやろーゼ!」 すると、他のハンターも騒ぎ出す。 「おお!ゼロ隊長達も完全復活したし、これならば負けるわけが無い!」 「でも全員で、は無いだろ。他のイレギュラーとかはどうすんだ、ハハ」 「ハハハハハハハ・・・!」 ドラクトの回復能力とゼロ達の戦闘力、そして多人数で一気にかかれば 残り数人のヘヴンズロイドも倒せると踏んだハンター達は、浮かれに浮かれて大騒ぎしだす。 しかし、その大騒ぎも一つの大声で終わった。 「回復能力と戦闘能力と組織力があるからって、 勝てるとは限らないッッッ!!!!!!!!!!!!!」 一瞬、しんと静まり返った特大会議室。 ゼロが驚いて発言の主であるホーネックに訊ねる。 「どうしたんだよ、ホーネック。変な言い回ししやがって。 たしかリゼルグも似た感じで言ってたよな」 ホーネックは何も応えず、ただ俯いて歯をギリギリときしませているだけ。 すると、ホーネックの隣に座っていたゼーラもホーネックを心配して横から口を出す。 「この前のバカンスであの人に『実力があるからって絶対に出世出来るわけじゃない』だっけ?  そんな感じのこといわれてからなんだかおかしいよ? 大丈夫?」 「・・・・・」 ホーネックはしばらく黙ったあと、急に立ち上がって一言だけ言い放つ。 「・・数や他人の力に頼りきって、油断してかかって行くような奴は、首を落とされて全員死ぬ!」 そのままホーネックは出て行ってしまった。 この場はこのまま終了し、ハンター達は士気をすっかり落として持ち場へ戻っていった。 それから程なくして、ヘヴンズロイドのアジトが空中要塞化したものが突然、 すっ、とハンターベース近くに浮かび上がった。 そして、周辺にリゼルグの場外アナウンスが響く。 「聞こえるか〜? 俺はメフィストフェレス・リゼルグ。ヘヴンズロイドのリゼルグだ。 俺の目的はただ強い奴と戦うこと。だから誰でも好きに来てくれ、自由に戦いが出来る。 ただ、ほかにも戦いたがってる奴が何人か居るからそこも考えておいてくれよ。 誰も来ないなら俺が勝手にそっちに行って戦う。それじゃ、そのうちすぐ会おうなっ♪」 「あ、あいつめ!ふざけやがって!」 Xはすぐにハンターベースを飛び出そうとしたが、マーティに止められた。 「ちょっ、X!一人であんな要塞に飛び込んで勝てるわけないじゃん!いま司令部に皆が集まってるから作戦立てよ―よ、ね!?」 「あ、ああ。わかった、すまない・・・」 どうにか落ち着いたXは、司令室にマーティとともに行く。 途中でゼロやアイリスと合流し、部屋の扉を開けようとした時、耳を劈くようなエイリアの悲鳴が聞こえた。 「きゃああああああああああっ!!!!!!!!!」 「な、なんだ!?」 Xとゼロが勢いよくドアを開けると、全てのモニター画面に 「Explosion」と書かれており、全機能が停止している。 「う、ウソよ!このハンターベースのセキュリティがこうも簡単に破壊されるなんて!」 「最新鋭のシステムが・・・バカな!」 エイリアとシグナスが驚いた顔のままで修復しようとするが、どうにも出来ない。 「あらゆるワクチンプログラムが通用しないわ!世界中の最高のものなのに!」 ハンター達の混乱の中、ホーネックが真っ青な顔で冷や汗を流している。 「エクスプロージョン・・・エクスプロ―ズ・・・やっぱりか・・・・!やっぱりだ・・・・・!」 「どうしたの? ホーネック!なにか知っているの!?」 エイリアやパレット、レイヤーが詰め寄るが、ホーネックは表情も変えずに一言だけ言って黙りこくった。 「最新鋭のプログラムや最高のワクチンがあるからといってコンピューターが守れるとは限らない・・・」

二百四十九話「ホーネック決意の時」

「ねえ、ホーネック、なんか言ってよ!」 ハンターベースを出たあと、ゼーラはホーネックを行きつけの喫茶店に引っ張り込んで話し出す。 だが、ホーネックは依然として話そうとしない。 「もう・・・あのリゼルグちゃんの言った事がそんなに気になるわけ?」 「……」 「……ばか」 その頃、ハンターベースではケイン博士がウイルス除去作業を行なっているが、上手くいかない。 「うぅむ、こんな強力なウィルスを作れる者は世界に何人いるかどうかじゃな」 「そんなに強力なんですか?」 Xが聞くと、ケイン博士は頷いてワクチンプログラムを使用する。 『ex……あっかんべー♪』 「なっ!?」 「こんどはアカンベー……って!」 なんと、今度は画面の文字がすべて”あっかんベー♪” に変わってしまった。 ケイン博士は驚き、何かを思い出したかのように叫んだ。 「バロン……!!!!」 その頃ホーネックは、ようやく重い口を開きだしていた。 「俺にとって……”最強”だと思っているのが隊長です」 「お兄ちゃんのことよね、それがどうしたの?」 「”最凶”といったら、ブラックゼロ」 「? ? ?」 「そして”最恐”だと思っているのが、あの人です」 「よ、よくわからないんだけど……どういうこと?」 「リゼルグのあの言葉……『なんとかとは限らない』というあの言葉。 あれを口癖のように使っていた人を知ってるんです。 それが俺にとって一番恐い人だった……」 そして、ケイン博士も同時にその男、バロンの事を語っていた。 「この続きを言う前にドラクト殿に確認しておこう。 天使の宝珠で復活できるのは、レプリロイドだけなのか?」 するとドラクトはえっ、驚いたように応える。 「いや、あの……生命体ならば何者でも蘇らせる事が出来ます……まさか」 「そう、バロンは人間。かつて短期間ながらワシの研究施設に出入りしていた事もある」 「に、人間!?」 「人間がヘヴンズロイドの味方をするのですか!?」 レイヤーとパレットが同時に驚く。 その時、ドラクトのもっている天国への通信機が鳴った。 「ヘヴンズロイドの新しい情報です。この男の顔写真のみですが、ひょっとして……」 ケイン博士は、写真を見るなり震えだす。 「やはり、奴じゃ。バロンがいる。『全てに例外がある、例外にも例外がある』という言葉を残した男。 才色兼美、文武両道、全てにおいて天才だった男じゃ。科学界においても数々の名誉を総ざらいにした。 数々の機械やプログラム、レプリロイドを作り上げたあの男のことじゃ。 あのような強力なウィルスも奴にとっては居眠りをしながら作ったようなものじゃろう」 「そんな奴がヘヴンズロイドにいるかもしれないの!?」 驚くアクセル。 「おいおい、冗談じゃねーぜ」 スパイダーも冷や汗を流す。 その頃ホーネックも、ゼーラに同じような事を話している。 「そんなにすごい人なんだ……」 「はい、この体になってからは忘れかけていました。 最新式のなんたらって情報が入るたびに『あの人には及ばない』って思っていたこと」 ゼーラはレモンティーを少し飲んで、視線をホーネックに戻す。 「一体、なにがそこまで恐いの? すごく残酷な奴だったとか?」 ホーネックははき捨てるようにしてテーブルを叩く。 「残酷とか、冷酷とか、悪人とか善人とかそう言うものじゃなんです! アイツノ……あいつが敵に回ったって言う事が恐くてしょうがないんですよ!」 ホーネックの蜂蜜入りコーヒーがひっくり返る。 ゼーラは目を見開いて驚いたが、ホーネックは目をぎゅっと閉じてガタガタと震えだす。 「恐くて恐くて恐くて恐くて……どうしようもなくって!」 「そ、そんなに恐がるほどのすごい人なんだ…… 文武両道って言ったけどお兄ちゃんより強いとでも言うの?」 「そりゃ隊長より強い奴なんてあの世にもこの世にもいる訳無い! いる訳無いけど……隊長も手足の3,4本覚悟しないと……」 「お兄ちゃんが!? そんなにも……って人間で!?」 「そうですよ!あの人こそ史上最強の人間だ!俺はずっとあの人を見てきたんだ! この戦いに参加している以上……とんでもないことになる!」 その時、ゼーラのすぐ後ろから、コートを着た黒いショートヘアの男が一人、近づいてきた。 その頃ハンターベースでは、ケイン博士がある事を思い出していた。 「そうじゃ!思い出した!奴のフルネームを!」 「フルネーム? それがどうしたよ」 ゼロがバロンの顔写真を見ながら聞く。 「奴の名はエクスプロ―ズ! エクスプローズ・バロン!」 ホーネックは、その男を目の当たりにして目と口を大きく開けて固まった。 「あ、ああああっ!」 「どうしたのホーネック!? この人誰!?」 エクスプロ―ズ・バロン。彼の名はエクスプロ―ズ・バロン。エクスプロ―ズ・ホーネックの…… 「おとぉさん、でぇ〜す♪」 「ち、父親!?」 ハンターベースの面々が驚く。 「と、言うより製作者だな」 ゼロが一人冷静に一言添える。 「うむ、そうじゃな。奴がなぜ死んだのか、いつ死んだのか、なんの未練があったのか、 ということからそして本業も、好きな食べ物などさえ一切不明。謎の多い男じゃよ」 ホーネックの前に突然現れた『父親』バロン。 にぱ〜〜っと満面の笑顔を浮かべながらホーネック達の隣の席に座る。 「立派になったもんだなぁ、お前も。アハッ♪あ、そこの店員さん、プリンアラモードくれ」 「あ、は、はい……」 その端麗な容姿に見とれていた女性店員だったが、すぐに注文を承った。 「なんでいきなり出てきやがるんだよ、親父!なんで生き返ってきたりしたんだよ!」 ホーネックがいきり立つと、バロンは相変わらず笑ったままで軽く答える。 「お前に会いたかったんだ。そしてぜひ戦ってみたい。アハッ♪」 「俺と!?」 バロンはプリンアラモードを一口食べて再び喋りだす。 「うん。俺がお前を造ってから12年、25で俺死んじゃってさ、 それからお前は俺の造ってしまっといたマオー・ザ・ジャイアントカスタムバージョンにぶっ潰されて、 今の体になったじゃないか。どれだけ成長したのか、アハッ♪生で確かめてみたかったんだ♪」 「あのマオー・ザ・ジャイアント、あんたが作った奴だったのか! 道理でメチャクチャ強かったわけだ!」 「寝ぼけて造ったんだ、どーして目覚めたかは知らねーけど、多分シグマ関連だろ、アハッ♪」 「そ、それでホーネックと戦うためだけにヘヴンズロイドに力を貸したって訳なのね」 ゼーラが初めて口を開いた。その目は少しだけ怯えて、涙がにじんでいるようだった。 「俺が貸したというよりは、あいつらに宝珠の事を教えてやったら リゼルグを中心に集まったって感じかな? 俺はとくに力は貸してないし。アハッ♪」 「じゃ、じゃあハンターベースに送ったウィルスは?」 「あ、あれ俺。あっちがこっちにハッキングしてきたからちょちょいとね。 ローマって奴に作ってくれって頼まれてたウィルス送ってみたんだ」 そして、プリンアラモードを食べ終わったバロンは少し残念そうな顔をした。 「しかし、ガッカリだ……」 「っ!」 ホーネックはビクっと震えた。冷や汗がタラリと流れる。 「もうなくなっちまいやがった、アラモード」 「っくそ……相変わらずだぜ、あんた。そう言うとこも含めて……」 「そんな事を言ってる時じゃないな」 バロンが立ち上がる。 ホーネックとゼーラは何もせずにそれをみていると、 バロンは店員にこう言った。 「プリンアラモード、お替りねっ♪」 「は、はい!」 すると、こんどはホーネックがバッと立ち上がってバロンの胸倉を掴む。 「ふ、ふざけんな!やるんだったらここでとっととやっちまえばいいだろ!」 バロンはそれを軽く拒否する。 「ヤダよ、今度がいい。要塞に来いよ」 「う、うるせえ!表ぇ出ろっ!」 「うるせーのはそっちだろ!プリンアラモード食いてぇんだよ!」 ホーネックは腰を抜かした。ガクガクとその場に崩れ、何も出来なくなった。 すると、バロンが席に戻って水を飲む。 「俺はお前に期待してたんだ。 強力な潜在能力を植え付けて世界初の成長する完全な機械にしたかったんだ。 親から生まれた半機械のレプリロイドとは違ってさ。でもまぁいいや、十分に強くなってくれたからな。 楽しみにしてるぜ。アハッ♪」 「楽しみ……って」 「ホーネック!大丈夫!?」 ゼーラがホーネックを抱き起こす。どうにか席に座ったホーネックは、唇を噛みながらバロンを睨む。 対してバロンは、美味しそうにプリンアラモードの2杯目を食べる。 「なんで俺なんだ……あんたが造ったレプリロイドはまだ大勢いるだろ」 「お前が一番、強いからさ」 「強い奴だったら、隊長のほうがいいだろ」 「隊長……ああ、ゼロだったっけか。彼とも戦ってみたいな。アハッ♪ でも、俺はお前がいい。さっきも言ったろ」 「俺があんたに勝てるわけ……」 バロンは鋭い目を向ける。 「お前が俺に勝てない道理は無いだろ。アハッ♪ひょっとしたらこの十数年の間に、 小指一発で俺を倒せるほどの差がついたかもしれないじゃないか」 「ん、なわけねーだろ!」 「そーかもしれないし、そーじゃないかもしれない。 俺の分析から言えば絶対にどちらかが勝つと言い切ることは出来ない。どんなに恐くてもな」 「……」 「戦うって、すごく楽しい事なんだぜ。レベルが近ければ近いほど、かつ強ければ強いほど。 それじゃ、そろそろ俺は帰る。アハッ♪ あ、そーだ。こっちの要塞に来るそのすぐ前に、この紙を見ておいてくれ」 そうして突然の来訪者はどこまでも軽軽しく去っていった。 ゼーラは座って俯いたまま動かないホーネックに寄り添って呟く。 「ホーネック……大丈夫だよ、私がいるから……」 ホーネックがはっと顔を上げた。 ゼーラを真っ直ぐ見つめて、急に手を握った。 「ありがとう」 「えっ?ほ、ホーネック?」 「君が居てよかった……ゼーラ」 「ど、どうしたの急に」 「越えるから、越えて見せるから、この恐怖からもあの親父からも。だから……」 ホーネックの中が、突然変異のように変わった。 ゼーラのたった一言の言葉が、ホーネックに勇気をもたらした。 「これが終わったら、結婚しよう」

二百五十話「史上最大の突入」

「あれ、どうしたのホーネック君にゼーラちゃん、いつもと感じが違うわね」 「う、うん……」 「……」 ハンターベースに戻ってきたホーネックとゼーラ。 だが、いつもと違いゼーラが真っ赤になってホーネックの横でもじもじしており、 ホーネックは精悍な表情で静かに闘志を燃やしているようだった。 そして、ハンターベースにて作戦会議が行われる。 「なるほど……そのバロンという男はやっぱりとんでもない男なんだな」 ホーネックの話を聞き、Xは身震いする。 ケイン博士は話中じっと一点を見つめていたが、Xのその言葉で視線を動かし、一言漏らす。 「……水」 「水?」 「奴は水のような男じゃ。その場、その場に合わせ自在に、 かつ巧みに方法を使いあらゆる事象を乗り越えていくのじゃ」 バロンを知るもう一人の男の語るバロン。一人を除いて全員が唾をゴクリと飲み込んだ。 「……で、作戦はどうなったんだ」 ゼロ。ゼロが皆を呼び戻した。その場の全員がはっとし、ゼロを見る。 「まぁ、作戦も何も無いだろうけどな、あいつらは真っ向勝負しかしないだろう?」 「そうとも限らないよ、あのローマって言うやつはバロンにウイルスを作らせたんだから、 多分参謀格なんじゃないかな」 Xがそう言うと、ゼロもなるほどといった感じで現在残ったヘヴンズロイドの名簿を見る。 「しかし、一体あと何人のヘヴンズロイドがいるのでしょうね? これでは作戦も立てにくいですし」 ヴァジュリーラも名簿を見てそう言うと、そこにドラクトが慌てて入ってきた。 「い、いま、ヘヴンズロイドの全員分の名簿が完成しましたっ!」 それを聞き、すぐに名簿が確認される。 ブロ・メガサイクル ザイネス・ワルダ ギドロ・ブライス フローズン・バッファリオ イルア・モルツ ホワイトラスト トランプ・ハ―ツ ジュリ・カノン ガンマ・ブランティック 「こっからが残りの奴か……」 ローマ・タナトス バメド・タリバ ダイマ・ジーク エクスプロ―ズ・バロン アイリーン メフィストフェレス・リゼルグ 「この6人か? いや、この間消えていったジュリのことを考えると7人か」とホーネック。 「ひょっとしたらさ、これまでのΣ関連の戦いみたいに敵が復活してたりして」とアクセル。 そして、シグナスが言う。 「それを考えて……まずは8人で突入し、1時間ごとに援軍を出す事にした」 先発部隊 ゼロ ホーネック X ヴァジュリーラ ブラックゼロ ダイナモ カーネル マッシモ 第二部隊 アクセル スパイダー マリノ 第三部隊 サラー  ドラクト シナモン 「え、マッシモがここに来てるの?」 アクセルが発表されたメンバー表を見てそう言うと、扉を元気に開けてマッシモが現れた。 「ああ、久しぶりだな!この俺がいる限り絶対安全だ!」 すると、シグナスは呆れ顔でマッシモに言い放った。 「張り切るのは扉相手でなく、ヘヴンズロイド相手にしてくれないか……」 マッシモが勢いよくドアを開けたため、無理な力が入って壊れてしまっていた。 「ぬ、ぬぁあ!しまったぁ!」 そして、作戦決行はたったの一時間後と決まり、準備が行なわれる。 「急ね、本当に」 ハンターベース屋上で、ゼロとアイリスは要塞を見ながら話している。 「ああ、一気に終わらせる必要があるらしいな。上層部の奴らが居ないから」 「帰って……これるよね?」 「ああ。大丈夫だよ。それよりライクとリルはどうした?」 「え? あれ? どーしたっけ、わかんない……」 「わかんねーじゃねーだろ! おいおい……探さねえと!」 しかし、結局二人を見つけられないまま1時間が過ぎてしまった。 「お〜いゼロ、なにやってるんだよ!早く早く!」 「あ〜わかった!アイリス、子供らのことは任せたからな!」 そして、ゼロ達8人は最終決戦へと飛んでいった。 だが、その時一つの戦闘機も一緒に飛んでいったことは誰も気がつかなかった……。 ゼーラはバロンから渡された紙を読んでいた。 「これって……」 すると、なんとそこには今回のハンター側の作戦の全てが記されていた。 驚くゼーラは、冷や汗を流しながら皆を心配し空を見上げる。 そして、手紙の隅にはこう書いてあった。 ……「誰が水だ!」

二百五十一話「7つの扉」

「扉が1,2、3……七つか」  敵艦に乗り込んだゼロ達は、円形の廊下から中心部に向かって、7つの扉が囲んでいる事を確認した。 「俺ら8人だからな、一人見張りに残すか? こんな事もあろうかとっ」  ダイナモが空き缶を取り出した。空き缶には、細長い紐が入っている。 「中に一本、先の赤い奴がある。そいつを引いた奴が居残りだ」 「よし、まずは俺が引こう」  そして、ゼロが紐を引くと、先端が赤。 「ゼロさんが居残りですか……まずいですね」 「仕方ねーよ、俺は見張ってる」  そして、Xが一つ目(皆から見て一番近い)の部屋のドアを開ける。 「……来たな」  真っ暗な部屋に、二つの目が怪しく光る。 「お前は……ローマ・タナトスだな!」 「正解。拍手を送ろう」  ローマの着込んでいる西洋風甲冑の金属音が、暗い部屋に鳴り響く。 そして、拍手が止んだ時、同時に電気もついた。 「明かりもつけずに失礼したね」 「な!」  その瞬間、Xは驚愕した。  その部屋は途轍もなく広い20キロ立方メートル、タナトス自身はその部屋の10分の一はあろうという巨大ライドアーマー「ブラッキン」を操縦していた。  ブラッキンは、タナトス同様漆黒の鉄製に見える怪物的な姿をした重ライドアーマー。 「ハイパーモードを使わないと危ないかもな……」 「さあ、始めようか」  次の第二の部屋には、ヴァジュリーラが入った。 「おや、あなたは……」  砂漠のように、灼けた砂の部屋。 そこに待ち受けるのは、船乗りの服を着た赤いツンツンヘアーの青年。 「やっ!あんたが来てくれてうれしいよ!覚えてる? ダイマ・ジークだよっ!」 「おやおや、君ですか。イルアさんの時といい、楽しいお相手で私も嬉しいですよ」 「そおっ!そうそうそう!だから早く楽しもうゼッ!」  ダイマの髪から、高速連射で赤く光る針状の光線『ハッシンシャ』が飛び出してきた。 「おおっ!」  ヴァジュリーラは盾でそれを防御し、得意のニードルトルネードで反撃する。 「いよっと!」  ダイマはそれをジャンプでかわし、二連同時発射式の小銃をヴァジュリーらに向けはなつ。  ヴァジュリーラはそれをサーベルで弾き飛ばした。だが。 「腕が痺れ……」 「もらいっ!」  銃弾を弾き飛ばしている隙に、ハッシンシャが右腕に刺さっていたのである。 ヴァジュリーラは、ダイマの強烈な回し蹴りを腹に喰らってしまった。 「くっ!」 「化かしあいは俺が上、だねっ!……ん?」  ダイマの左膝に、傷跡が。 「いつの間にこんな……」 「今の一撃の時、お一つお花を活けさせていただいたのですよ」  ヴァジュリーラ指には、バラの花が摘まれていた。  そして、第三の部屋にはカーネルが乗り込む。  大きな金属隗がゴロゴロ転がる部屋を見回し、一言漏らすカーネル。 「これを武器として使用できそうだ」  そして、そこに人影が。 「お前が私の相手だな」  そこにいたのは、ジュリだった。ジュリは突然襲い掛かってきた。 「はあああああああっっ!」 「むっ!」  ジュリの大剣アグザビスは、復活していた。 二本のサーベルに姿を変え、カーネルのビームサーベルと渡り合おうとする。 「くらえっ!」  距離をとり、カーネルはサーベルから光弾を4連発で打ち込む。 「ふっ!」  アグザビスが盾に変身し、光弾を防ぎきった。 「甘い男だ!」  ジュリがそう叫んだ時、カーネルはテレポートでジュリの真後ろに現れた。 「甘いのはそちらのほうだ!」  カーネルの強烈な切り上げがジュリのアーマー背部に大きな傷をつける。  第四の部屋で未知の敵・バメドと戦うのはマッシモ。バメドの部屋は、何も無い殺風景なもの。  バメド自身も、地味な浴衣に身を包んだ痩せ型の初老の男性。 「君が乃公(だいこう 一人称である)の相手となる戦士か。 『秘奥回転流』の極意、見せてやろう」 「秘奥回転流? なんでもいい、やってやるぜ!」  そう言ってマッシモはいち早くバメドに切りかかる。 「ふっ、は」  気がつくと、マッシモは壁にめり込んでいた。 「なっ!? なにが起きたんだ!?」 「投げたのだ」 「な、なげっ……!?」 「主に見せる必要は無いのかも知れぬが……この年になって欲が出てしもうてな」 「なんだとぉ……」 「戦わせて、もらおうか」  そう言って、懐から取り出したのは草刈に使うような鎌。それを構えて高速回転をし始めるバメド。   「喰らえ、秘奥無尽剣!!」 「何だそんな技、俺のベルセルクチャージでふっ飛ばしてやる!」  マッシモも必殺のベルセルクチャージを放つ。 「ふぅむ、この威力……つあっ!」  バメドと光線が衝突し、爆発が起きる。 「どうだっ!?」 「うむ、主には資格があるらしい」  バメドは床に倒れていたが、すぐに立ち上がりそう言った。  ブラックゼロは、メカにロイドに埋め尽くされた第五の部屋に訪れていた。 「あんだこのメカニロイド達は……お〜い、とっとと出てきやがれ!」 ブラックゼロは敵を倒しながら、天井に向かって叫ぶ。 そして、別室からカメラで部屋の様子を見ながら、リゼルグの連れていた女・ アイリーンがその長い黒髪をかきあげながら呟いた。 「ごめんなさい……」  そして、ダイナモは全てが鏡で覆われる、第六の部屋で リゼルグに似たメカニロイド『ヤグデ』と戦っていた。 所々に中国風な装飾を取り付けた赤い流線型の鎧という、リゼルグと同じ装備をし、 顔は銀色ののっぺらぼう。 「なんでこんな奴と戦わなきゃいけねーんだよ!」  ダイナモがサーベルで敵の胴を切り離すが、ヤグデはすぐに再生し復活してしまう。 「何だこいつ、リキッドメタル……か!?」  そして最後の部屋、全てが本棚で出来ているような書斎にて、ホーネックがバロンと対峙する。 「よう、ホーネック♪」 「ケイン博士が言ってたぜ、あんた『水』みたいだって」  するとバロンはニッと笑い、はき捨てるように言い放つ。 「だからよ〜、誰が水だって〜の。手紙にも書いたけど」 「手紙……ゼーラに渡したあれだな? どーせソンだけじゃなくて、 今回の俺らの作戦、全部書いてあるんだろ」  するとバロンは、嬉しそうに答える。 「おっ、バレちゃったかぁ? どうしてわかった?」  ホーネックもニッと笑い、再び口を開く。 「あんたのことだ。俺とゼーラとちょっと喋っただけで俺らがどんな人生を歩んだか、 どんな人物とであったか、そしてその人物が集まりこの戦いに挑む時、 どんな作戦を立てるか考えがつく。だろ?」 「おお!お前も俺のことは良くわかってくれているみたいだな。アハッ♪」 「そんで、水がダメってどういうことだ? 合ってると思うぜ。 変幻自在、臨機応変、地形にあわせて形を変えた千変万化に物事を進めるやり方に、 掴み所の無い感じのその性格も……」  ホーネックが言い終わらないうちに、バロンが遮った。 「水はすぐ濁る」 「あっ」  ホーネックは何も言えなくなり、俯いた。  バロンは手に本をとり、それを握りつぶして続きを言う。 「だいたい、どいつもこいつもみんな『水』だしな」 「えっ?」 「透明な『水』にな、いや、水じゃなくてもいいんだけど、それに親、兄弟、友達、恋人、環境… …なんでもいいや、人生で出会ういくつもの出来事に交わっていろんな色に染まっていく。 アハッ♪それがそう言った理由だ。何も考えなくても勝手に水は水でいられるってことさ」 「俺は何を持ってしても色を変えたりはしない。水みたいに透明なのか、牛乳みたいに白いのか、 墨汁みたいに黒いのか知らね―けど『俺』という色の純物質。そういうもんだ。 アハッ♪いや、ひょっとしたら皆もそう言うモンなのかもしれないな」  ホーネックは顔を上げ、燃え滾った瞳で 「なるほど……やっぱあんたが一番恐えや。……純粋に、な」 と言って、ビームソードを構えた。

二百五十二話「沙漠のデスゲーム」

 ヴァジュリーラとダイマが戦う、砂の間。 「そりゃーーーっ、砂塵のの絶食者っ!」  唇を突き出し、ハッシンシャと同時にふざけた感じで無数の白い玉を ヴァジュリーラに向けて投げるダイマ。 「むっ!」  それらの攻撃を盾を使って防御するヴァジュリーラだが、 白い玉は跳ね返されると同時に砂の中に潜っていった。 「なんですか、今の玉……」 「それはさっき叫んだ技名を考えれば、ひょっとしたらわかると思うよ」 「砂塵の絶食者……?」  その時、ヴァジュリーラの足にチクっとした感触が刺さる。 「うっ」  その場に座り込むヴァジュリーラ。砂の中に手を突っ込み、何かを探り出した。 「これは……サソリ!」  ヴァジュリーラの手に掴まれているのは、10センチくらいの小さなサソリ型メカニロイド。 尾の先端から、毒液がピュっと噴出す。 「そう、サソリ。砂漠に住んでるイメージのあるサソリさ。 そんでもってこいつらは長くて1年、絶食に絶えうる。 だから砂塵の絶食者。わかった? そこまで強力な毒はないし、 僕が刺される可能性もあるからそんなに悲観しなくてもいいよ♪」 「く、なるほど……しかし、私は空を飛べるのですがね、構いませんか?」  そう聞くと、ダイマは笑って答える。 「そういうことが無いように訓練してあるよ。 1分以上空中に浮かぶものがあったら即座に毒液を発して撃ち落すように仕込んである」 「よーし、じゃあそろそろこっちも本気出すぜ、馬鹿鴉でなっ!」  背中から黒い羽を出し、鴉形態の本気を見せるヴァジュリーラ。 ダイマは一瞬、冷や汗を流す。 「っ!」  一歩後ずさったダイマは、サソリに脚を刺された。 「いっつ……」 「隙アリッ!」  ヴァジュリーラの手からニードルトルネードが放たれる。 「わああっ!」  間一髪避けたダイマだが、強烈なとび蹴りを喰らう。 「ぐふっ!」 「まだまだいくぜっ!」  さらにヴァジュリーラのサーベルによる猛攻。ダイマも肘から光剣を出すも、防戦一方に。 「うぐ……でもさ、サソリさんのほうにも気を使わないとねっ!」  ダイマが砂を蹴り上げると、散らばる砂の中から3匹のサソリが飛び出てきた。 「ちぃっ」  ヴァジュリーラはそれをサーベル一閃で切り裂いた。だが、それによって隙が生じ、 ダイマの光剣を胸にまともに食らってしまった。 「ぐああっ!」  さらに、ダイマは握り拳を作って喜ぶ。 「僕のサソリ達はね、自分の仲間を殺したものに対し容赦なく襲い掛かるようになってるんだ! いっけ〜〜〜〜〜〜っ!」  砂の中から、ザクザクとヴァジュリーラに向けて進行する音が聞こえる。 「そんなもんで俺を殺せると思うなっ!」 「えっ!?」  ヴァジュリーラの立ち居地の寸前までサソリが来た瞬間、 ヴァジュリーラは飛び上がって、密集したサソリ達に向かって技を放つ。 「ブラックバード・レボリューション!」  強烈な一撃が砂を撃った。大爆発が起き、砂が舞い飛ぶ。 爆風によってダイマも数メートル先に吹っ飛んで仰向けに倒れた。 「これでもうサソリはいねえな……っ!」  地面に、華麗に降り立ったヴァジュリーラ。だが、またしても足にチクっとした感触が刺さった。 「な……なんだっ!?」 「言い忘れてたけどねヴァジュリーラさん……ここの砂、光線がきかないようになってるんだよ」 「なっ!」  ブラックバードレボリューションはサソリ達に届いていなかった。 サソリ達の集中攻撃を喰らい、ヴァジュリーラは大ダメージを受ける。 「ぐぅああああああああっ!」 「くらえっ!」  さらにハッシンシャの猛追。胸の傷に直撃し、ヴァジュリーラは顔面蒼白で砂の上に倒れこんだ。 「ぐぅ……あ」 「まだ声が出るなんて流石だね。……ところで、最後にすごいものを見せてあげるよ」  そう言ってダイマは、赤い玉を一つ取り出してそれを握り割った。 するとそこから、一回り小さなサソリメカニロイドが現れた。 「こいつはすごいよ、刺されるとそいつは精神を狂わされるんだ。 多分使う事は無いと思うけど、折角だからご披露しようと思ってね」 「だったらどうしたっ!」  ヴァジュリーラの蹴りがダイマの、サソリを持った右手に入った。 「舐めやがって……!カアアアアアアアアアッ!  立ち上がったヴァジュリーラは、叫んだかと思うと一気に変身して ゴッドカルマシーン・O・イナリ―になった。 「踏み潰せばそれで終わり……っ!」  そうして、密集していたサソリを一発で踏み潰してしまった。 そして、ダイマに対しても光弾を放ち攻撃する。 「わっ!まさかこんな攻撃法があったなんて…… それにしても赤玉のサソリはどこにいったんだ!?」  その頃、マッシモはバメドに大苦戦していた。 「くそ……このままじゃまずいぜ」 「主は斧の使い手……ならば乃公も斧で戦ってみよう」  そう言ってバメドは床板を一枚はがし、そこから斧を取り出す。 「重そうじゃねえか、その体でまともにもてるのか!?」 「秘奥・爆戦斧(ばくせんふ)!」  重量のある斧を手で器用に斧を回転させながら、マッシモのほうへ突っ込んでくるバメド。  マッシモは、歯を食い縛って斧を構える。 「く、くそ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

二百五十三話「リルとライクIN 敵要塞」

「とうとう来ちゃったね……」 「わ〜、町のビルがちっちゃく見える」 敵艦に、勝手に忍び込んだリルとライク。ハンターベースの戦闘機を盗んできたのである。 「さ、早くいこライク、私たちでリゼルグってのやっつけるんだから!」 「え、う、うん。でも、ホントにやるの?」 「だってさ、ハンターのお兄さん達皆して『子供はダメ』だって言うんだもん、ムカツクじゃん」 頬を膨らませるリル。 「リルってさぁ……」 「なぁに?」 「顔と違って性格はママに似てないよね」 「ライクに言われたくないよ!」 そして、二人でこっそりと敵艦の廊下を歩く。たまにメカニロイドが歩いていたり、 7つの扉の中から爆発音が響いてきたりしてビックリしたりしたが、 物陰に隠れたり声をひそめたりしてやり過ごした。 「あ、この部屋なんだろ?」 「ここにリゼルグいるのかな?」 そう言ってパソコンが一台と書類がたまっている部屋に入ってみると、 メカニロイドが一体座っている。 緑色で、右肩はトゲつきのアーマー、左手は銃となっている。 顔は大きなスコープアイだけで、ジー、ジー、と鳴っている。 他はノーマル版Xと同じような、大して特徴のない姿だった。 「ギ、ガ……」 「わわっ!なんだこいつ!」 「気をつけて!」 すると、メカニロイド[ダウン]はスコープアイを伸び縮みさせながら立ち上がり、 左手の銃から細い赤色光線を撃ってきた。 ライクはそれを避けたが、後ろの、入ってきたドアにぽつんと穴があいた。 「わ、あぶな!」 さらに、ダウンはリルに向けて赤色光線を連射。 「わ、きゃ、なによこのぉ!」 リルは避けながら手をバスターに変身させ、スコープアイを撃った。 「ギガアガ!」 「いまだ!ゼル・ナックル!」 ゼル・ナックルの衝撃弾がダウンに放たれたが、ダウンは右肩のアーマーでそれを防ぐ。 「な、なにやってんのよライク!」 そこで、ダウンに頭を捕まれるライク。 「う、うああ……このっ!」 ライクのバスターによる一撃がダウンの顔面に直撃。スコープアイにヒビが入り、さらにライクを離す。 「さ、リル!」「うん!」 二人でバスターをチャージしながら、ダウンから離れる。 「ダブルチャージバスター!!!」 爆発音とともに、ダウンの頭が完全に吹き飛んだ。 「「やったあ!」」 飛び跳ねて喜ぶリル&ライク。 「ねえ、この部屋を調べてみない?」 リルが言う。 「う、うん。でもさ、ここの本、僕達で読めるかな?」 確かに、難しい漢字や外国語も書いてあるため、リル達に読めるかと言えば到底不可能。 「う、う〜ん、そうねぇ……」 「ま、いいや、とにかくリゼルグってののいる部屋にいければいいからさ、隠し部屋とか探そうよ」 「あ、そ、そっか」 と言って、二人で書類をひっくり返して、部屋中紙だらけにして隠し部屋を探し始める。 ところで、ダウンだが、頭だけが吹っ飛んでいたためか火は紙に燃え移らずに済んでいた。 しかし、ふわりと飛んできた紙がパチパチと鳴っている首に触れる。 結果…… 「わ〜〜〜〜火事だ〜〜〜〜〜〜!」 「たすけて〜〜〜〜〜〜〜!」 部屋中の書類に火が燃え移り、火事となってしまった。 「どーしよー、ライク?」 「え〜、え〜っと、わかんないよぉ!」 「こんな時に役に立たない男ってサイテ―!ってこの前ドラマでやってた」 「今の世の中は男女平等!ってこの前ニュースでやってた!」 しかし、そのとき、突然火が一気に消えていった。 「え!?」 「大丈夫、君達?」 「あ……ママ!?」 二人を消火砲で助けたのは、アイリス―――? 「ママじゃ、ない!似てるけど違うよ!」 「そうよ、私は君達のママじゃないわ。ヘヴンズロイド、アイリーンよ」 アイリスではなく、アイリーン。そっくりな顔をしているが、右目の下に泣きボクロがある。 「へ、ヘヴンズロイド!?」 「じゃあ、メフ・・ラスヘレス?だっけ?のリゼルグのところに案内しなさい!」 リルがアイリーンの顔にバスターを向ける。 しかし、アイリーンはにこっと笑ってリルの頭を撫でる。 「な、なにっ!? 動かないで・・・」 「ウフフ……」 すると、リルはだんだん目がボーっとなり、眠り込んでしまった。 「り、リル!大丈夫!?」 リルに駆け寄るライクだが、リルは気持ちよさそうに眠っている。 「な、何をしたんだよ、リルに!」 「大丈夫、眠らせただけよ……君も、ね」 ライクの頭に、手を乗せようとするアイリーン。 しかし、ライクはぱっと飛び退いてバスターを構える。 「こ、ち、近寄るなっ!」 「あらら、嫌われちゃったカナ? あの女の子供、かぁ……」 その時、7つの部屋の戦いの衝撃で要塞がガクンと揺れた。 「わっ!」 「あらっ!?」 二人そろって転ぶ。さらに、ライクの上にダウンの残骸が倒れてきた。 「わ、わああっ!」 「あぶないっ!」 アイリーンが手をかざすと、衝撃波が飛びダウンの残骸を壁まで吹き飛ばした。ダウンはバラバラになって崩れ去った。 「あ、ありがと……」 「素直ね、君。さ、ここは危険よ。とりあえずお姉さんの部屋に行きましょう」

二百五十四話「カーネルとアイリーン」

「くぐっ」 ジュリと戦っているカーネルだが、アグザビスの変幻自在の攻撃に苦戦していた。 「貴様の最後が近づいてきたようだな」 アグザビスが、槍に変形した。 カーネルは頭から血を流し、足元もおぼつかない。 「死ねっ!」 ジュリは槍を投げつけてきた。 そして、それがカーネルの胸に届きそうになった、その瞬間。 「はっ!」 カーネルはテレポートで、軽々と回避した。 「舐めてもらっては……なにっ!?」 「喰らえ!」 カーネルが攻撃に転じようとしたその時、ジュリの指先から電撃光線が発せられた。 「ぐわああああ!」 仰向けに倒れるカーネル。 一歩近づいてジュリは言った。 「少しはやるようだったが……所詮は問題外の敵、ヤプルを使うまでもなかったか」 「ヤ、プ……ル?」 「これ以上言う必要はない」 ジュリは槍を拾い、カーネルの胸を突き刺すベく地を蹴って跳んだ。 「消えろ!」 「ドッペルブレイカー!!」 カーネルのサーベルが地に刺さり、その瞬間上空のジュリに向かって電撃波が昇っていく。 「う、うぐあああああっ!」 ダメージを受けるジュリ。 「はあああっ!」 さらにカーネルのサーベルショット三連射。 空中にいたジュリは避けようもなく、吹き飛ばされて天井に背中から突き刺さった。 「く、は……油断した」 「どうやら終わったようだな、ジュリ。金属隗を使うまでもなかったか」 そう言いながらも、カーネルにも多大なダメージがあった。 足元がふらつき、そのままうつぶせに倒れてしまう。 「く、うぬっ」 どうにか立ち上がるカーネル。 「おのれっ!」 「!?」 その時、ジュリが復活して飛び降りてきた。 「ならば見るがいい、アグザビス究極闘法!」 アグザビスに向かって、部屋中の金属隗が集中する。 「な、なにっ!?」 「超絶対剣、アグザグレイド!!」 金属隗を集中させさらに巨大な刀剣とするアグザグレイドが、カーネルを襲う。 「喰らえーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」 ジュリがアグザグレイドを振るうと、カーネルは横薙ぎの一閃をジャンプでかわした。 「ちっ!」 そして、その時、剣圧の衝撃でか、壁が崩れた。 「え……ッ?」 「な、アイリス!?」 崩れた壁の先にいるのは、リル、ライク、そしてアイリーンだった。 「あ、アイリーン!貴様、何故そこに!」 ジュリがアイリーンを睨みつける。 「……」 アイリーンは何も言わず、ただカーネルを悲しげに見ているだけだった。 そして、それを見たカーネルははっとなった。 「アイリーン、アイリーンだと……まさか!」 「カーネルのおじさんだ!」 「何か知ってるの!?」 リルとライクが顔を出した時、アイリーンも口を開く。 「思い出したのね……お兄さん」

二百五十五話「アイリーンの恨み」

ライクが訊く。 「こ、この人・・・誰なの?!」  カーネルが答える。 「彼女の名前はアイリーン。アイリスの双子の妹だ」 「ママの妹!?」 驚くリル。アイリーンは手を組み、悲しげに呟く。 「・・・そう。私はアイリスの妹・アイリーン。生まれる事のなかった筈の命・・・」 「ど、どういうことだ?」 ジュリもその事は知らず、首をかしげる。そこで、カーネルが説明した。 「アイリスと共に産まれるはずだったアイリーンは・・・ 出産の日、地震が起きたせいでこの世に生まれる前に死産した子だ。 私の両親・・・ライクやリルにとって祖父母にあたる二人が、アイリスには内緒にさせていたのだがな・・・・」 ライクとリルは青ざめ、アイリーンを見る。だが、アイリーンの表情は打って変わって冷淡なものになっていた。 「・・・・アイリスが憎らしく・・・思えてくるのよねぇ」 そう言うや否や、アイリーンの細い腕と小さな拳から、青白い炎が湧き上がる。 そして、それは巨大な炎の壁になりカーネル、ライク、リル、そしてジュリに襲い掛かった。 「う・・・!」驚き、サーベルを構えるカーネル。 ライクとリルは、カーネルの後ろに隠れる。 「な、ナニを・・・・!」 ジュリはアグザグレイドを盾に変えて防御体制に入る。 しかし、その炎の壁は全員を包み込んだ。炎の中で苦しむ4人。 「うぐあああああ・・・・!」 「きゃ、く、あああああっ!」 「あ、熱いいいい一!!!」 「やめろーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」 ライクが叫んだ。それと同時か直後か、炎が壁に向けて弾け跳ぶ。 「やめろ・・・やめろぉおおおおっ!!!!」 ライクが覚醒を見せる。両腕にエネルギーがヴォンヴォンと音を発しながらたまっていくのが解る。 「アイリスの子供・・・・!?」 アイリーンが驚く。カーネル、リルも驚く。 「な、何だあの姿は・・・!」 「ライク、どうしたの!?」 「くらえぇえええええええええええええ!!!!!」 強烈なエネルギーパンチを振り下ろすライクに、アイリーンはただ目を見張る。 爆発が起こった。ライクの両腕と、アイリーンの両肩からエネルギーと爆炎が飛び散る。 「ど、どうなった・・・・!?」 リルを庇いながら、状況を確認しようとするカーネルだったが、煙が濃くて見ることが出来ない。 「・・・・ぐあ!?」 その時だった。ジュリの剣がカーネルを背中から貫いていたのだ。 剣は、リルに触れる寸前でカーネルの手によって止められていた・・・・。

二百五十六話「アーマー大破」

Xがローマと対決している部屋。 「くっ!」 Xファイア状態で、ローマのライドアーマー、ブラッキンと戦っている。 ブラッキンは、頭が蛇(操縦席もそこ)、腕がワシの足、後ろ足が馬、胴体が亀、 尻尾がイバラの茎で出来た怪物のような姿で、肩、膝、胸やつなぎ目にそれぞれ西洋の甲冑のような造詣が見られる。 イバラの尾が伸びて1キロほどの途轍もない長さになり、Xを叩きにかかる。 「くっ!」 Xは攻撃を届ける事もできずに遠距離で避けるだけ。 「まずい、活動時間が!」 「死ぬがいい!」 ブラッキンの口から、エネルギー波が吐かれる。Xはそれをまともに喰らってしまった。 「う・・・・ああああああああっ!」 「どうだ?」 「なかなか・・・だな!」 Xは攻撃をわざと喰らっていた。Xファイヤを犠牲にし、敵の頭上をアルティメットアーマで飛んでいる。 「くらえ・・・ノヴァ・ストラーーーーイク!!!!」 「う・・・おおおおっ!」 強烈なエネルギー波やビーム・ミサイルがローマの頭上から雨のように降り注ぐ。 「ぐ、うふ、まずい・・・」 ノヴァ・ストライクが終わり、突風に巻き上げられた煙にまぎれるようにしてXはふわりと地に降り立つ。 「ふう・・・どうだ?」 「甘い、甘いぞ、英雄殿」 「っ!?」 その瞬間、ワシの爪がアルティメットアーマの肩を打ち砕いていた。 「あ・・・・!」 「このブラッキン、これ程のダメージ受けようとそう倒されはせん」 そして、馬の強靭な足で宙を跳び、Xに襲い掛かる。 「う、うわああああっ!」 ビーム弾を連射するXだが、ブラッキンをとめることは出来ない。 そして、ワシの爪と蛇の牙による凶撃を喰らってしまった。 「ぐ、うぁあああああああっ!」 Xのアーマーの上半身がほぼ破壊され、胸の銃砲がつかえなくなった。 何より、巨大な切り傷が出来て血が撒き散らされる。 「あ、ぁあうぐう・・・・!」 「英雄殿も落ちたものだ。いや、所詮こんなものだったのだな。ゴミめ・・・」 欠伸をするローマ。そして、甲冑から覗く目がXを捉えたと思うと、 ブラッキンの蛇の口から毒針弾が連射され、寸分狂わずXの傷口に入る。 「う・・・・ぎあああああああああああっ!!!!」

二百五十七話「最恐者・バロン」

敵に全ての作戦を読まれていたハンターベース側は、アクセルを偵察に向かわせていた。 「よ〜し、なんだかんだで敵やっつけちゃえ!」 笑いながら敵要塞に突入したアクセルは、最初にゼロと出会う。 「あれ、ゼロ?なんでこんなとこで?」 「アクセル? お前こそ・・」 互いに事情を説明し、アクセルはどこかに重要施設を隠した隠し部屋などがないか調べる事にしてその場を終えた。 「どこかにないかなぁ〜? 部屋。敵がいると面白いのにな〜〜〜」 などとふざけて、探査装置を壁に向けながら歩いているアクセル。すると、探査装置が鳴り響く。 「この反応って・・戦闘中かぁ。誰かが戦ってんだな・・・ふぅう、隠し部屋じゃないみたい・・」 「うああああああああっ!!!!!!!!」 その時、アクセルの目の前の壁が吹き飛び、血塗れのホーネックが飛び出してきた。 「わ、わわっ!? ほ、ホーネックッ!」 「あ、あく、、、せ、・・・・うっ!」 頭からバッと血が噴出したが、ホーネックの関心はそこにはなかった。 ホーネックが気にしたのは、部屋から廊下へ飛び出してきた、バロン。 「えぃやああああっ〜〜〜〜〜〜♪」 にこやかに、楽しそうに、バロンの強烈な蹴りがホーネックを襲う。 「う、ぎゃあああああああっ!」 ばかん、とかぱん、とか、その系統の音がホーネックの頭から血と共に吹き出る。 「わ・・・・っ!」 それを見たアクセル、口をばっと開いて目を見張る。 「つ・・・つよ・・・!」 「りゃっ!」 痛烈な空気の音と共に、バロンの2本指がホーネックの胸板を打ち抜く。 「ぐ・・・ふっ」 「ほ、ホーネック!こうげき、攻撃しなよっ!」 アクセルの声が出た直後、ホーネックのパラスティックボムがバロンを襲う。 「おっ!」 半ば嬉しそうに、口笛を吹きつつバロンはボムを喰らう。 「いって〜〜〜!やるなこりゃぁ!」 楽しそうに痛がるバロン。だが、それと同時にカカト落としも入る。 「この・・・野郎!」 そしてエナジー・トライアングルを顔面に打ち込んだ。 「こいつは・・・効くゼッ!お前サイコー!」 効いているのか、効いていないのか、他者の目からはまるでわからない。 バロンの掌がホーネックの顔面を捉える。 「うぐっ!」 フラフラと足元もおぼつかないホーネック。その足は既に、アーマーや筋肉が弾けとび骨さえ見えている。 「あ・・うぁ・・・・」 アクセルはその光景に、立ちすくみぞっとする。 「オ〜ケーッ!」 ずばん、と強烈な蹴り上げがホーネックの腹部を直撃。 内臓を吐き出し、吹き飛びそうなダメージがホーネックを襲う。 「・・・・・・っ」 白目を向くホーネックに、壮絶な掌底が右頬に直撃。 顎が外れ、顔が変形し、頭蓋骨の割れる音が聞こえた。 空中を側転しながら、吹き飛んで壁に頭から直撃する。 「お、え・・・・」 口からドロリと血が垂れる。べちゃ、と床に零れ落ちる。それでも立つホーネック。 「ホーネック、流石にやるじゃないか。こんなに嬉しい事はないぞ!?おとーさんは・・・」 ホーネックの状態など意に介さないかのように、バロンは手を広げてホーネックの腹部にそれを打ち込んだ。 「ぐあばっ!!!!!」 「うっ!」 アクセルは一瞬、目を閉じた。ホーネックの腹に、バロンの手が文字通り突き刺さったのだ。 内臓に・・・腸に、胃に、肝臓に・・・? バロンの手が、指が触れる。 あまりのダメージに感覚さえ失ったホーネックの頭に、その想像が浮かび上がる。 ぶつり ホーネックの中の何かが切れた。物理的に。 「そ〜らぁっ!」 バロンの左手から、紫色のエネルギーが放出されてホーネックの全身を吹き飛ばす。 「・・・・・・・っ!」 壁を突き破り、ホーネックの体が元居た部屋へ飛ぶ。 何が起こっているのかも分からず、ホーネックは倒れ伏した。 「とうとう終わりか? ん〜〜・・・・」 いかにも残念そうな顔を見せるバロン。ホーネックのところへ歩いていき、そしてボールのように蹴り飛ばした。 瓦礫の上をメチャクチャに転がり叩きつけられたが、ホーネックはまたしても立ち上がった。 「ば・・く・・るぅ」 何を言っているのかも解らない。しかしホーネックは、バロンを見ていた。

二百五十八話「X敗北?」

  ダイナモがヤグデに冷凍弾「クライオジェニック」を使い、凍らせて勝利していたころ、Xはタナトスと戦い重傷を負っていた。 「く、は、はあああ・・・・」 首に毒針を喰らっているため、呼吸がイカレだしたX。喉にあいた穴から空気が漏れ出しているような感覚さえある。アーマーは胸部が砕かれ、残る武器は両腕の銃砲のみ。 「さようなら、と言うべきか英雄殿」 「ふ・・・」 Xの喉から呼気が漏れる。 その瞬間をみるようにブラッキンの口からエネルギー波が放射された。 「うおおおおおおおっ!!!!!!」 Xの両腕の銃砲が床に向かって放たれた。それによってXは宙を跳び、エネルギー波をかわしつつ再びタナトスの頭上に現れた。 「なっ!!」 「くらえー―――――っ!!!」 再び両腕の銃砲を乱射する。タナトスの体、頭、操縦用の機械にとにかくダメージが来るように連射した。 「く、ぬぬっ・・・!」 腕で体を庇うしかないタナトス。 ハイパーモード、タイムアップ。 「うっ!」 Xの体が支えを失い、落ちた。 「い、いまだっ!」 タナトスがブラッキンを再び操作した。ブラッキンは反応が鈍っていたもののすぐにXが落ちていく場所に向かって爪を振り下ろし、床を壊した。 「う、ぅがあ!」 砕けた床に衝突したX。通常より大きなダメージを受けたはずだ。そこに、ブラッキンのエネルギー波が連続で直撃する。 「・ぅっぉ」 「まだ死なないと? ならばまだ撃ち続けるだけ・・だがね」 タナトスはそう言いながらエネルギー波を撃ち続ける。 「く、ぐ!」 転がりながら攻撃を避け続けるX。だが、何発か喰らってしまう。 (一瞬でもとぎれれば・・・) Xは考えた。何か一つでも方法がないかと。 (そうだ・・・アレだ!あれを使えば・・・しかし、アレを使えば俺の体が耐え切れないかも・・・いや、やらなきゃ!) エネルギー波がXに向けて発射された。しかしXは、もう避けようとしない。 「!? あきらめ・・・いや、何かする気だな!」 「奇ィッ!!!!!」 Xのバスターから、エネルギーの壁が現れた。そう、トランプの技を特殊武器化した「バイスウォール」である。 これを使うにはトランプ同様叫ばなければならない。喉にダメージを受けているXには辛いところだった。 しかし、先ほど一度叫んでいた事からXには確信もあったかもしれない。 「くそ、防いだか!しかもこれから何かする気だな!?」 (くらえー――――――ッ!) 心の中で叫びながら、Xは上空にバスターを撃った。 「っ!?」 だが、なにもなかった。バスターからはなにも出なかった。 「ど、どうした事だ!? やつめ、エネルギーが切れたのか!?」 そう、思わず安堵の表情を浮かべたかのような口ぶりでタナトスが行った瞬間だった。 「・・・・くらえっ」 寒い。どこかが冷たい。 タナトスがそう感じた。戦闘中に何かのショックで冷房が入ったのか? ブラッキンにも冷却装置がある。それのせいか?  そうだ、冷却水だ!冷却水がオーバーフローしてるんだ! そう思った。だが、その寒気は上空からだった。 「な・・・・なんだ!?」 タナトスの頭上に、小さな氷の玉が無数に浮かんでいたのだ。 「バーストブリザード・・・」 バッファリオの特殊武器・バーストブリザード。 バスターから撃たれた、目に見えないほどの小さな冷気の塊。それが天井に着弾することで破裂し、周囲に強烈な冷気を起こし、空気中の水分を氷の塊に変えたのである。 「な、何だとぉおおおおオオ!!!!」 そして、それはやがて重力によって地面に落下する。そう、タナトスとブラッキンの頭上から落ちてくるのだ。 「うわああああああああああああああああ!!!!」 硬い超低温の、氷の塊が無数に降ってきた。それによってブラッキンの間接部や、操縦席の機器類は次々に破壊されていく。 そしてやがて、タナトスの甲冑やブラッキンの装甲にも亀裂が入っていき・・ 「ぶ、ブラッキンッ!!!!!!」 ブラッキンの機能が完全に停止した。そして、亀裂の入ったところから壊れていきバラバラに崩れ落ちたのだった。 「う、うわああああああ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」 瓦礫と共に落ちていくタナトス。その鎧も次々と破片に変わっていく。そして、タナトスはブラッキンの残骸と氷の塊に埋まってしまったのだった。 「・・・・・・・・・」 Xはそれをみることもなく、目を閉ざしていた。 (ありがとう、バッファリオ・・・)

二百五十九話「私の愛した息子へ」

  ホーネックがいた。アクセルがいた。バロンがいた。 「う・・・う・・・・」 「まだ生きてるんだな・・・流石俺の息子・・・いや、エクスプロ―ズ・ホーネックだ」 相変わらずの笑顔で、ホーネックの腹に刺さった自分の腕を引き抜く。 「あうぐっ!!」 ホーネックの口と目と耳から血が吐き出される。それが腹や他所の血と交じり合いながらビダビダと床に血が降り注ぐ。 口から飛び出た舌も気にかけられず、ただ前かがみに立ちすくむホーネック。 「ホーネック!もう逃げたほうがいいって!こいつはボクがやっとくからさ!」 アクセルの必死の説得も、今のホーネックにはきかない。 「ああ・・・じゃあ俺がやられたあとで頼むわ・・・」 「ば・・・ばかっ」 「おっるぁ〜〜〜〜〜〜っ!」 バロンの蹴り上げが思い切り顔に直撃した。 凄い衝撃だ。耳が何を見ているのかわからない。いや、口が何を聞いているのか? 足がなにをかんがえれいるあにあVPW\\\\・・・ ホーネックの体が、背中から床に落ちた。 「立てるか?」 「あ、あ・」 腕を突いて、足を床につけ、力を入れて立ち上がる。朝起きる時、こんな起き方をするだろうか?  思考回路が完全にいかれたようなその顔で、ホーネックは右手拳をにぎった。 「アハッ♪」 バロンが走った。ホーネックの目の前に向けて。拳を走らせた。その右目にあたるように最高の力をこめて。いつものように。 「ホーネック・・・あぶないってっ!!!」 アクセルが飛び込んだ。その指の形は「指拳刃」の型だ。 「っ!?」 バロンとホーネックが同時に気づいた。アクセルが割って入ってきた事に。 アクセルはバロンとホーネックの間の空間の少し手前に立ち、指拳刃を右斜め前にいるバロンの顔面に指拳刃を滑り込ませようとした。 構わずパンチをそのまま走らせるバロン。 「あぶねえっ!!!!」 ホーネックが、右手でアクセルの左手を掴んだ。 「えっ」 「りゃっ!」 アクセルはそのまま、元いた位置のあたりまで投げ飛ばされた。 「うわあ・・っ!」 そして次の瞬間、バロンの右拳がホーネックの右頬に突き刺さっていた。 「う・・・・」 「良〜〜〜いのが入ったな、ホーネックっ」 バロンの右手は容赦なくホーネックの顔を変形させ、存分に破壊していた。 「ああ・・・入った・・・」 立ち上がったアクセルは、震えるようにして二人を見た。 「あ、あ、あああ・・・・・」 目から涙が出た。その光景はあまりにも・・・ 「あああ・・・・」 あまりにも・・・・ 「死んだなこりゃ」 あまりにも鮮烈だった。 「・・・・普通なら」 何時の間にかホーネックの左手に握られていたビームソードが、バロンの左胸をとらえていたからだった。 「・・・やったああああああああっ!ホーネックが・・・ホーネックがっ!」 アクセルの歓喜の声が響く。涙を流しながら、子供のように飛び跳ねる。 バロンは言った。 「負けたよ、これは・・・ただし、普通なら、な」 ホーネックが崩れ落ちた。目はうつろ、全身から血が吐き出され、ピクピクとわずかに動く。 「これがなきゃ本当に死んでたぜ」 「・・・え?」 バロンの一言に、アクセルが凍りついた。 バロンのコートの左胸に、何かかたいものがあった。 天使の宝珠のエネルギーで超硬化した、ネクタイピンだった。 「うそだぁあああああああああああ!!」 アクセルの絶望のさけびだった。 倒れて動かなくなったホーネックに、殆ど怪我もしていないバロン。 バロンは、満足したような薄笑みを浮かべてコートの内ポケットにあったネクタイピンを取り出して、見た。 「覚えてるかホーネック・・・お前がガキの時の」 「あ・・・」 長い昔・・・ホーネックがまだ蜂型のレプリロイドで、さらに子供だった頃。ホーネックは父親であるバロンに渡した事があった。 「父の日に・・・・ネクタイピン」 「それ・・か・・・」 倒れたまま、うつろな目でバロンの手のネクタイピンに焦点をあわせようとする。 「嬉しかったなぁ・・・」 部屋のある一角まで歩を進め、ホーネックのいる場所へ振り向く。 「そんな君だからこそ、見たかったんだ・・・どれだけ強くなっているかを」 「・・・」 「想像以上だった。これがなかったら死んでたろうし、さ。負けたよ」 「アクセルの・・邪魔が入ったし・・倒れたのは・・俺・・」 「ネクタイピンをくれたのは君だ」 「・・・でも!あんたにビームソードが入ったからって・・死ぬわけねえっ!」 「それは解らないな。実際やってみないとね。ま、俺はここで終わりにしとくよ」 「終わり・・・? あっ!」 バロンの右手が、バロンの左胸を突き破った。

二百六十話「要塞崩壊」

  「アハッ♪」 バロンの胸から一気に血が噴出した。 「あ・・あんたっ!何やってんだよっ!バカ!?」 「宝珠のエネルギーは俺のじゃないからな。目的が果たされたなら返さなきゃ」 ネクタイピンからエネルギーが流れ戻っていく。 「あとは・・・」 胸から血を流しながら、表情一つ変えずに、バロンは部屋の角に向かってパンチを打ち込んだ。 「えっ!?」 壁が壊れた。すると、その壊れた壁から通路が見える。 「つながってるんだよ。ここの機関部と」 そう言ってバロンは、その通路一直線に、掌から出る紫色のエネルギー波を放出した。 紫色の光が、通路に走った。 アクセルは目を見張る。その顔もまた紫色に照らされた。 爆発。 おそらくは中心部の、飛行ユニットが破壊された。 「なんだ!?」 ゼロのいる場所にも振動が走った。 「他のところも・・・・!?」 ゼロはすぐにアースクラッシュで床に穴を開け、空を飛んで要塞の外へ出た。 「壊れていく・・・・!?」 要塞が壊れていく。周囲の外壁が爆発し、亀裂が入り、中心部の上下から煙が出ている。 「やべえ!」 その時、同様の方法でブラックゼロも飛び出した。 「ブラック!」 「ゼロ!」 「どうしたんだこれは・・・」 「知らねえ!だけどよ、中の奴らがやべえかもな!」 「うわあああああっ!」 ものすごい衝撃と振動で動けないアクセル。 「ホーネックつれてとっとと出てけ!」 「え、あ、そか!」 振動に耐えつつ、アクセルはホーネックを抱えてドアを開けた。 「・・あんたは!?」 バロンを振り返るアクセル。 「いいよ俺は。もう死ぬしさ」 「そんな・・・・」 「またそのうちくるかもな。多分・・孫の顔、見にさ」 バロンが笑った。 「親父――――――――――――ッ!!!!!!」 アクセルがホーネックを抱えて要塞を飛び出した。 ホーネックは爆発して消えていく要塞をただ一心に見つめていた・・・・。 「変身ッ!」 アクセルはマッハジェントラーに変身、ホーネックを近くのビルの屋上に置いてから、再び要塞へ飛ぼうとしたが、変身時間が切れたためそれは出来なくなった。 崩れていく要塞。部品が砕けて町に降り注ぐ。 シグナスは早急に、ハンター達に瓦礫を攻撃させたり衝撃吸収をさせたりした。 そして、崩れていく要塞の中から、ゼロがXを抱えてきたり、ヴァジュリーラやダイナモたちが自力で町に着地してきたりして、ほぼ全員がそろっていた。 「マッシモとカーネルが行方不明だ」 ブラックがそう告げた。 「お、お兄さんが・・・?」 アイリスがへたり込んだ。既にリルやライクがいないことを気づいていたため、今にも失神しそうな勢いだ。それをゼロが抱きとめる。 「マッシモも心配だな、やられちまったのか・・?」 スパイダーが心配する。 「エックス――――――ッ!!」 「ホーネック―――――ッ!!」 マーティがXに、ゼーラがホーネックにそれぞれ駆け寄る。瀕死の重傷を負った二人に、涙を流しながら抱きしめた。 その時、突然リゼルグの声が聞こえてきた。 「リゼルグだ―――!アンタら大丈夫かぁ!?こっちは大体大丈夫だ!」 「!」 「リゼルグっ!」 「こっちは今〜〜〜〜・・・そっちで言うところの『S−SSK』のとこの海にいる!後で来なッ!!」

二百六十一話「最終メンバー・・・」

  「S−SSKに要塞確認!」 エイリアがモニターを見て言った。壊れた要塞が、2階建ての家くらいの大きさの基地のようになり、海に浮かぶ。 「どうする? 誰が行く?」 ゼロがサーベルを手にとって言った。 自分は行くつもりでいる。 「まずは俺だろ」 ブラックゼロが歩み出る。舌をベロリとだした。 「ならば私もだっ!」 サラーも一歩進んだ。ブラックゼロの横に立ち、口を結ぶ。 「僕も行くよっ」 アクセルが飛び出してきた。双眸が輝き、これまでとの違いがそこにあった。 「俺も行くぜ!」 「あたしもね!」 スパイダーとマリノが出た。どちらも熱い目をする。 「他に誰かいるか? ヴァジュリーラとダイナモはどうだ?」 シグナスが訊くと、ベルカナがでて答える。 「ヴァジュ様は・・先ほどの戦いで強力なサソリに刺されたそうなので休養したいと・・」 さらに、シナモンも続ける。 「ダイナモさんも両腕にひどい傷を負っているのでムリのようです」 「そうか・・他に誰かいないのか? 多いほうがいいのだが・・」 「・・・・私が行きます」 ドラクトだった。手に宝珠を持ち、緊張した表情でシグナすを睨むように見た。 最終的にメンバーは、 ゼロ ブラックゼロ アクセル サラ― スパイダー マリノ ドラクト に決まった。残りはベースの防御や周辺警備をすることになったのだった。 「じゃ、いくぞっ!!!!」

二百六十二話「叫び」

  敵の最後の要塞に突入したゼロたち。そこには、地下へと通じる5つの道があった。 「誰がどこに行く?」ゼロが訊く。 「じゃ、俺ココ〜〜☆」ブラックゼロが、一番右の通路を選んだ。 「ま、考えたって意味ないしね、ボクはこっちにしよっと」アクセルはいちばん左を選ぶ。 最終的に、ゼロとドラクトは中心の通路、スパイダー&マリノが右から二番目、サラーは左から二番目の通路を選んだ。 「それじゃ、行くか…」とスパイダー。 「みなさんの無事をお祈りします」とドラクト。 「あんたこそ、死んだりしないでよ」とアクセル。 7人の姿が消えていく。闇のなかへ落ちるように。 悪魔が、獲物を食べた後の口の中のように、部屋の中に生暖かい空気と静寂が流れた。 そこに、もう一つの影が又入ってきた。その影は、5つの道を慎重に選ぶように首を振り、ゆっくりと入っていった。 「この通路・・・壁の材質がさっきの要塞の床と一緒だな」ゼロが独り言のように言う。さっきの要塞とは、バロンが破壊する前の空中要塞のことである。 「そうですね、もともと部分的に変形する要塞だったのかもしれません」とドラクトが返す。 「扉…」 ドラクトが言い終わるか終らないかのうちに、ゼロが扉を見つけた。 「気を付けてください。誰がいるのかわかりませんから」 ゼロの後方に立って、ドラクトが右手の掌に真っ白なエネルギーをためる。そして、それを扉に向ける。 「白い衝撃波(サント・インパル)」 右掌のエネルギーが消えた。それと同時に、衝撃波が扉を吹き飛ばしていた。 「お前の力も相当戻ってるらしいな。だがおれと一緒に来たからには失敗だぜ」 ゼロが言った。ゼロならば、相手と一対一で戦う。残る敵の人数が6人ならば、通路の奥に待つ敵の数は1人である可能性が高い。 ドラクトに出番がない、という意味でゼロはそう言ったのだった。 「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」 「ドラクト!?」 ゼロが振り返ると、ドラクトの頭部側面から血が噴き出る姿が見えた。 「ああ、あ、あ、あ、あああああああああああ・・・・・!!!!」 ドラクトは、叫び叫び膝をつき、この世のものとも思えない表情のまま、顔面を地に落とした。 「ドラクト、大丈夫か、ドラクトっ!!!」 ゼロの声が響く。しかし、ドラクトは返事をしない。ただ単に声を洩らすだけだった。 「ああ、ああ、ああああ・・・・」

二百六十三話「なにもない」

  「おれの相手はお前か・・」 ブラックゼロが見た先には、緑色の髪をした端麗な顔立ちの女性がいた。美しい、細い眼。詠っているかのように静かに揺れる薄い唇。 女性の両肩には金色の尖ったアーマー、胴体はカクカクとした銀色の鎧、両脚には胴体と同じように角ばった銀色の装身具がある。 両腕はすらっとした、長く白い腕で、何も身につけていない。右手に持った、一本の鉄のサーベル以外は。 「なんでもいいや、やろーぜ♪」 ブラックゼロがニッと笑うと、ジュリはその美しい貌を皺だらけにした。白い歯をむき出しにし、綺麗な目も残虐な殺人鬼のそれに変わる。 「死ねえええぇっ!!」 顔が変わったと同時に、一本の剣――そう、アグザビスも姿を変えていた。ぐにょぐにょと作り手の姿が見えない粘土細工のように鉄の塊が蠢き、真白い両腕を包み込む。 そして、それはアーマーとなり、両腕の指は刃となった。 「しゃおおおおおおおおおおっ!!!!!!」 素早い動きで一気にブラックゼロのところまで跳んだジュリ。その左胸に向かって腕を滑らせる。 れろん ブラックゼロの舌がするりと口の外で翻った。それと同時に、彼の両肘がジュリの背中を打った。 「がはっ!!?」 「♪」 ブラックゼロは笑ったまま、右足、左足、右、左、左、右と回し蹴りをジュリの体に叩き込む。 「うぐっ」 うめくジュリ。それでも両腕のアグザビスを変化させて頭をガードするべく伸ばす。そして、それをヘルメットのように形作り、頭に装備した。 ちゅんっ その瞬間、ブラックゼロの手の甲から、アンカー付きのワイヤーが飛び出した。そして、それは新体操のリボンのように華麗に舞い、ジュリの首に巻きついた。 「うあ・・・くぅ」 「甘いんだな〜、お前」 ブラックゼロの左足のミドルキックが決まり、ジュリの胸アーマーが砕け散る。雪のように、破片が輝きながら飛び散り床に落ちる。 その下からは、黒いラバーシャツが見えた。そこに向かって、ブラックゼロの左手の指のバスターが何発も撃ち込まれた。 「ぐふ、あ・・・ぁ・・・ぁあぁ」 血を吐くジュリ。苦しみ、苦しむにつれ、むしろその表情は和らいでいた。 「あぁ、うぅ、、ふぅ、う・・・」 最後に、ブラックゼロの前蹴りが顔面に衝突した。兜となっていた部分のアグザビスは砕け散り、顔面を血だらけにしたジュリの体が上へと跳ね上がる。 ブラックゼロがワイヤーを外すと、背中から落ちた。 「あぁ、はぁ・・・」 倒れたままのジュリに、ブラックゼロは訊いた。 「なんでお前、戦ってんだ?」 「・・・?」 「つまんなそうに戦いやがって…」 ジュリを見下すようにあくびをしながら言ってくるブラックゼロ。実際は聞いていた話より明らかに弱いジュリに落胆していただけだったが。 「うる・・・さいっ!!!!!」 ジュリが立ち上がった。再びその表情を皺だらけのそれに変貌させ、何かの怪物のように真っ赤な舌をべろりとだし、 両腕のアグザビスを一本の巨大な刀剣に変えて走り出した。 「アグザ・・グレイドッ!!!」 「ひゅぅ」 口笛とともに、ブラックゼロの右腕からゼロサーベルがはじき出され、アグザグレイドを止めた。 「う・・・・あああああっ!!!!」 力を入れて無理に前に出ようとするジュリだったが、ブラックゼロのアースクラッシュがアグザグレイドをたたいた。 激しいエネルギーの衝突と振動に対し耐え切れなくなったアグザグレイドは、軽い音をたてて灰になった。 「うあ、ああ、あああ・・・・」 ジュリの顔から皺が消えた。同時に、絶望と哀しみの表情が生まれた。 「あ〜あ、疲労が激しかったんだな〜、それ」 アグザグレイドの灰が積もり、山に変わった。ブラックゼロは、それを足で踏むように崩しながらそう言った。 ジュリの目がギラついた。 「まだだ・・・」 「?」 「ヤプル・・・」 「んだ・・・こりゃ」 ブラックゼロの周囲は、真っ黒だった。 「? ?」 横を向いても、後ろを見ても、何もない。それどころか、普通は見えるはずの自分の手や足、アーマーも見えない。気づけば、自分が首を振ったという感覚さえない。 「あぁ?」 と、声を出したのだろうか。それもわからない。自分の中にさえ声は響かなかった。 「あいつの技か・・?」 死んでいるはずはない。死んだら、白い建物や通路のあるあの世への入口がある。これは本当に何もない空間だった。 ブラックゼロは、自分がどうしているかもわからず立っているだけだった。 「なんもねえな…」 ジュリは、尖った肩鎧を手に取り、ただ立ち尽くして時折動き出すブラックゼロに歩み寄っている。 「ヤプル…あらゆる感覚を奪う技・・・・」 その双眸は妖しく、赤く光っている。それがヤプルの発信源である。 「これで死ね…」 肩鎧の棘が、ブラックゼロの左胸に突き刺さった。 「っ!??」 爆発が起きた。

二百六十四話「豹変」

「なんだいこりゃ」 「・・・・・」 スパイダーとマリノが部屋のドアを開けると、大量の蠍の死骸があった。そして、その奥で蠍を貪り食っている男。それは、赤い髪の、ダイマ。 「くぅ・・・・」 すっと顔を見上げる。その赤い眼の先には、侵入者が二人。 「こいつ・・こんなんだったっけか?」 「わかんない・・・」 当惑する二人。そんな二人をしばらくじっと見て、ダイマはゆっくり立ち上がる。口の中からぽろり、ぽとり、とさそりのはさみやとげやあしがこぼれおちる。 「うっ」 それを目の当たりにしたマリノは、吐き気を催してしまい、口を押さえてうずくまる。 「お、おい、大丈夫か!?」 「う、うぅ・・・・・」 「くそっ!」 スパイダーが一人で、部屋中に敷き詰まった蠍の死骸の山に歩を進める。じゃり、ざり、にちゃ、と不気味な感触が足のアーマーを伝って伝わってくる。 「気持ちわりぃ奴だぜ…」 「くるぅぅ・・・」 唸りながら、うなだれたように背を曲げ、腕を垂らすダイマ。ゆっくりゆっくりと歩を進めると、その度に腕が大げさに揺れる。 「んのやろっ!!」 スパイダーがカードを撃ち出す。 「くぶっ」 それに反応したかのように立ち止まるダイマ。腕をゆるりとあげ、カードを素手で受け止めた。 「なっ!?」 「あぅふ・・・・・」

二百六十五話「第二の豹変」

  「ぐああああああああああ・・・・・っ」 ジュリは全身に火傷を負って倒れた。 ブラックゼロは刺されたと同時に、全身の武器を開放して一斉に発射していたのだった。 偶然だが、部屋の中に敵は絶対に居ると考えていたブラックゼロの軽い考えがジュリを上回っていたのだった。 「ん? やっぱ居たのか」 ヤプルの効果が切れ、ブラックゼロはジュリを見下ろした。 「ってと、どーすっかな・・他に敵いんのか?」 「う・・うわあああああっ!!」 ジュリが飛び込んできた。手刀を形作り、ブラックゼロに向かって飛ぶ。そして、コマのように横回転する。 「秘奥瞬転切っ!!!!!」 「秘奥?」 ブラックゼロはそれに向かって、口からエネルギー弾を出して吹き飛ばした。 「うああっ!!」 「っと」 そして、痛絶なカカト落としが顔面に決まる。ジュリは完全に悶絶した。 「・・・・・っ」 「秘奥って・・・サラ―の技だよな? なんでお前も使えるんだ?」 偶然か必然か・・・サラ―と共通の名前の技を持つ女に、いや、その技にブラックゼロは少なからず興味を持ちはじめた。 「あなたか・・・・!!」 サラ―の前に相対したのは、バメド。 「・・・・」 「祖父・・バメド!」 バメドはサラ―の祖父だった。そして、代々続いた秘奥回転流の5代目継承者。 自分の息子はそれを継ぎたがらなかったため、サラーに技を教えたものの、 その直後に病気で他界したのである。 そのため、その技を引き継ぐもの、サラ―を捜すべくヘヴンズロイドの一員となったのだった。 「何故あなたが敵に!?」 「・・・・」 サラ―の呼びかけに、なぜか何も言わないバメド。 「んぁ・・・・」 その表情が無から変貌した。目がだれたように光をなくし、口からべろんと舌が垂れる。一瞬にして全ての面影が無くなった。 「!? これは・・・・!?」 「あばっ!!」 バメドの口から血の塊が跳んだ。サラ―はそれを避けると、血の塊は爆風を撒き散らした。 「血が・・爆発!?」 「ぬぅふ・・・」 サラ―が跳んだ。バメドは、跳んだサラ―を見ることもなくしゃがみこんだ。すると、背中から突然、碇が飛び出したのだ。 「うわっ! な、なんだ!?」 サラ―の鎌がそれを弾き飛ばすと、バメドは泣くように吠えた。 「うぶぉおおおおおおおおおお!!!!」 「どうしてしまったのだ・・・祖父!」

その後のダイジェスト

※以下は零夢さんが小説続行不能となってしまわれたため、 それに合わせて零夢さんが小説掲示板に投下されたダイジェストです。 アクセル対ローマ バメドやダイマが狂ったのは、ローマの放ったウイルスの影響(ダイマのサソリの毒を入れて完成とした)で、 ローマはウイルス発生装置と制御装置を要塞内に隠し持っていた。それを、バロンは光線で破壊したのである。 アクセルは、ローマの得意技である超重力を喰らい、ピンチに陥ったかと思われたが、ゼロやX、ブラックにバロン、ホーネック、ヴァジュリーラ、 そしてガンマといった『強者』の精神を持って重力に耐え切り、顔面に乱射して勝利した。 サラ―対バメド 苦戦するサラ―の戦いに、マッシモが乱入。パワーで押さえ込み、サラ―がとどめをさして終了。 スパイダー&マリノ対ダイマ ダイマの狂った力が二人を窮地に追いやるが、スパイダーの神の力で一気に形勢逆転。最後はスパイダーの神の力でパワーアップしたマリノのミラージュタイプで終了。 そのころ、基地内ではアイリーンがリル、ライク、カーネルが人質に取られていて、そこに、ゼロを追ってやってきたアイリスが現れる。 アイリーンとアイリスは互いに愛する者を守りたいと思い、カーネルたちを解放して、ゼロとリゼルグをとめようと考える。 その道中、多くのメカニロイドが襲ってきたが、ライクの覚醒、カーネルの剣撃、アイリーンのエネルギー波で壊滅させる。 そして、二人の戦いにわって入ろうとするが、二人はアイリス達のことに気づきもしない。 なぜなら、ジュリがヤプルでゼロとリゼルグの意識を互いにしかむかないようにしたからである。 ジュリは愛したリゼルグのため、リゼルグのしたかった「最高の敵との戦い」を完璧にしようとして、アイリス達の声が届かないように計らっていた。 ブラックゼロはその頃、ジュリから話を聞いていたので戦闘していた部屋で寝ている。 アイリスとアイリーンは、二人の戦いを見守る事にした。 最強対最強のぶつかり合い、アブソリュートゼロのアーマーでさえも粉々に砕け散る。それでも、最後はゼロのサーベルの一撃でリゼルグを倒した。 リゼルグは満足して死んでいったのだった。 その後、アイリーンとジュリは自らの宝珠エネルギーを宝珠へと返し、この世から消滅した。 ドラクトは礼を言い、最後に、天国の神から、何か一つ願いをかなえられると伝言を残す。 ゼロ達が願ったのは、ヘヴンズロイドをとがめることなく天国へ戻す事だった。 こうして、ヘヴンズロイドとの戦いは幕を下ろしたのである。
  ELITE HUNTER ZERO